「天空の城」を築く――アニメから見る環境問題

2023-01-16 15:16:37

汪月童 澳門大学

 初めて「天空の城ラピュタ」に出会ったときは、その音楽にうっとりして、少年の勇気と誠実さに感動しました。「風の吹くところに希望がある、宮崎駿先生は少年少女の純粋さを描き、ユートピアを形作りました。子供の頃は、悪役の企みが失敗したことだけで大喜びしていた記憶があります。大人になってから改めて鑑賞すると、また違ったことに心を打たれました。 

 1986年の作品で、40年近くを経ていますが、栄枯盛衰のめまぐるしいアニメ業界でその地位が揺らぐこともなく、世代を超えた名作となっています。宮崎駿先生の作品に多い評価は、癒やされる、すばらしい、理想主義といったものです。各作品をよく見ると、「風の谷のナウシカ」では少女が郷里の環境の維持を見守っており、「天空の城ラピュタ」では「ラピュタ」飛行石を創造して、あるいは「千と千尋の神隠し」で不思議な油屋が出てきて……宮崎駿はマジックリアリズムの手法を通じて自然に対する保護を呼びかけ、すばらしい世界、汚れない心に対する希望を生き生きと描きながらも、痕跡を残すことなくアニメを通じて人々に示しているのです。 

 このアニメはほんの三十数年前のものですが、大自然の悪夢はもう百年も存在しています。人がいるところには汚染に発生する、という問題は、生物学上で永遠に避けられないものです。産業革命の後、人類がエネルギーを際限なく開発したため、地球温暖化、氷河の融解、世界八大公害事件といった環境問題が次々と現れました。自然はそのフィードバックにより人類に警鐘を鳴らしています。低炭素と省エネルギーは、未来の人類世界の重要な課題になるでしょう。 

 マジックリアリズムのもとでの「ラピュタ」は、「飛行石」を掌握することで無限の力が手に入り、浮遊する都市をユートピアに作り上げ、自然にも人にも優しい静謐ですばらしい環境を築いていました。こうした世界は作者の心の中の楽園で、完璧なばかりにファンタジーに見え、かえって現実の環境のひどさを引き立てています。スモッグのよどむ空、融解する氷河、連年の高温……マジックリアリズムの筆法を通して、作者は現実を暴露し呼びかけを発しています。 

 宮崎駿作品の中にこのような体現が見られるだけでなく、別のアニメ巨匠、新海誠の作品「天気の子」でも連年の大雨という自然災害、天気を変える能力を持つ少女が出てきます。映画の中の愛情観を除外すると、同作品もマジックリアリズムで満ちています。少女の神通力はファンタジーで、連年の大雨は現実を誇張した反応です。宮崎作品と似ているところは、主人公がいずれも少年であることです。両者とも、少年の勇敢さと純粋な心を通して、日本社会ひいては全人類に環境の保護を呼びかける描写が、微に入り細をうがっています。 

 努力するまでもなく、「風の谷のナウシカ」あるいは「天空の城ラピュタ」を観て、自然保護の呼びかけを味わったとき、古の文明を見守ったナウシカからも、最後にラピュタに残って一面の浄土に変えることを選んだシータからも、人類と自然の関係が中国の哲学、老子の「道は自然に法る」、「無為にして治まる」の思想と偶然に一致しているのが伝わって来ることでしょう。日本のアニメが中国の古代哲学の思想と似ていることは、ちょうど中日の文化の交流を実証しているのです。 

 春秋戦国の百家争鳴するうちから、道家は人と自然の調和がとれている付き合いが人の存在の根本であると悟っています。日本が遣唐使を出し、鑑真が日本へと渡って、さらに中国と日本が世界の大国になっても、古今を通じて、中日両国にはずっと友好的な付き合いが存在しています。数百年の間は両国の間に摩擦や隔たりがあったかもしれませんが、グローバル化の成り行きに従って、中日両国は低炭素、省エネルギー、環境保護といった問題で共鳴しており、同じ心で尽力し続けています。 

 日本と言えば、島国が環境保護を極度に重視しており、人々の環境保護意識もきわめて高いことに思い当たります。日本のごみ分別の厳格さ指数は世界屈指で、新エネルギー自動車が他国より10年ほど早くから全国に普及しており、蛍光塗料を軽減した街灯の発明や使用制度のほか、文学者の使命を自然保護と結びつけた「文学作品のエコバッグ」もあり、東京五輪のオリンピック村ではリサイクル可能な資材が随所に用いられ……一方の中国は経済の急発展と同時に、環境問題も重要な位置に置いています。「金山銀山は緑水青山にしかず」という標語は単なるスローガンではなく、むしろ中国人の郷里に対する態度です。 

 「一枝だけ咲き誇っても春ではなく、万紫千紅が春に園を満たす」のです。中日両国が低炭素、省エネルギーの面で進んでいても、環境は全世界の問題なので、両国は他国との協力という問題のみならず環境の危機にも直面しています。中日国交正常化50年の今年は「バーゼル条約」の履行時期にも当たり、全世界のゼロエミッションを目標に努力して、大国の威厳を打ち立て、全世界と共に進んで、人類の新しい生活を作る時です。貧しい子供がもう劣悪な環境に妥協しないで済むように、水不足の地区が連年の高温で悩まなくなるように、都市の人々もスモッグに空を覆われなくなるように。全世界が手を取ると、コロナ禍での救援物資箱に添えられていた「青山一道なれば雲雨も同にし、名月何ぞ曾て是れ両郷ならん」を思い出さないでしょうか。 

 作中では、2人の乗った飛行船が荒れ狂う風と雷雨を経験して、やっと神聖国家の姿を目にしました。現実の中の人類も、順風に帆をあげることはできないでしょう。1020年あるいは50年あるいはもっと長くかかっても、いつかは、青と白の惑星が緑に覆われ、なじみの曲が響いて、映画の中のラピュタ、小説の中の楽園が想像から現実に。物語の最後に、シータとパズーが滅びの呪文を唱える必要がなければ、ラピュタが消え去ることもなく、シータが女神のように美しく優雅に、地球上に本当に存在できるのです。 

 そのとき私はお茶を入れて、青空の巻雲でも鑑賞しましょう。 

注: 

1、「天空の城ラピュタ」――宮崎駿 

2、「風の谷のナウシカ」――宮崎駿 

3、「天気の子」――新海誠 

 

関連文章