自分ならではの流儀を貫く――ドラマ『半沢直樹』を見て
万里鵬 北京第二外国語学院
「やられたらやり返す、倍返しだ!」
この人の心を震わせる言葉は、この数年間、いや、これからも長い間続けて人気になっていくという人気ドラマ『半沢直樹』からの名セリフの一つだ。それにドラマで何回も聞かされたわけか、与えられたスッキリ感が、抑えきれないほど半端なかった。
初めてこのドラマを知ったのは、大学一年生の頃だった。そのタイトルからは別に何の特別なハイライトもなく、最初ただ普通の気持ちで見ていたが、見れば見るほどまるで何かに引っ張られたかのように、どんどん見続けていきたい気分がどうしても収まらなかったのだ。
一体どこがこのドラマのチャームポイントかというと、やはり人の共感を呼び寄せるところであろう。裁かれるべき者に天罰が下り、弱小な方が逆転勝利するのもあくまで想像の世界にあることで、現実にはそれよりはるかに厳しい事態が溢れ満ちているのではないかと思っている。
上司に絶対的な威厳を持つ日本職場では、上下関係が厳かだということが一般的だと言われている。「誰に対しても会釈をすること」、「上司より早く帰らないこと」、「ホウレンソウを徹底的にすること」など、様々な暗黙のルールで日本人のサラリーマンにプレッシャーをかけ続けていることが明らかだ。しかしその一方、そのプレッシャーから解放できる手口がなかなか見つけられず、皆は放っておくしかできない。その結果、仕事で心のバランスが崩れるパターンが決して少なくないというのは確かだと言えよう。
まだその時の自分は所詮大学生なので、それをあまり感じていなかった。今は大学を卒業し、一人前の社会人になった。今のところ再び『半沢直樹』のドラマを振り返ると、改めて現実の厳しさを痛感した。日本ではもちろん、中国の職場でもルールの共通点がたくさんあることが分かってきた。私は現在、社会人ならではのドキュメンタリーと言っても過言ではないぐらい、自分らしき生き方を貫こうとしている。これは本当に『半沢直樹』のおかげだ。そのポスターにある「クソ上司め、覚えてやがれ」というセリフもいつも自分の心の中で響いている。高がシンプルな一言だが、この世界のどれほどの人間かの裏に潜んでいる本音や怒りを叫び出したものか、その心境はひしひしと伝わってくる。
日本でも、中国でも、職場は決して侮ってはならないものだ。むしろ厳しいルールが設けられているこそ、その国の発展の礎になると言えるだろう。自分はこのドラマを通じて、日本の職場について結構学んだ。もちろんドラマのようにはならないが、せめてこれからも社会人として、几帳面に仕事をしつつ、人間関係を上手く築きながら、自分の価値をできるだけ活かせていきたいと思っている。特にこの数年間コロナ禍の影響で、世界中にカオスになった今、自分ならではの流儀を貫くことが大切だと、今更一層強く実感していた。ところが、絶望の中では希望が生まれる。その希望と半沢からもらった勇気を胸に、今後鮮やかな人生の道を歩んでいきたい。