星霜を越えるもの
劉琮驁 華中科技大学
しかし、「月に叢雲、花に風」は形ある物の宿命で、すべてが人に忘れられ、長い年月に落ちぶれた遺跡になった。その蒼い川のようで、儚い「時」を見抜き、あるアニメの中で星霜を越える空色の花の海が心の中で揺らめきそうなのを私は感じた。 そのアニメは千年の旅で、勇者一行の、世界を救った「その後」を描く『葬送のフリーレン』で、主人公のフリーレンはエルフで長生き、仲間の老いと死に悲しく後悔し、「人を知る」旅に出る。この作品を通し、日本人の時間に対する理解がわかり、中国の伝統的観念に似ている所があることに気付いた。どのように煌めく有形のものでも、桜の花のごとく散っていく日が待たされている。星霜を越えるのは、人々の心の中で形のない物ではないかと、ふと考える。
蒼い山は越えられる。故郷を離れ、大学に来て日本語の勉強の初志を思い出す。一年生の時、点数のため疲れ果て、日本語を選んだ理由をいつの間にか忘れてしまったが、フリーレンが私だけの純粋で僅かな願いを目覚めさせてくれた。小さい時に日本の漫画が好きで、この優しく美しい作品を作った国のことをより知りたかっ
た。その願いが十年の時を越え、私に日本を知る道を歩ませる。フリーレンの旅を再び支えたのは、世界に響き渡った功績でなく、彼女の心に永遠に残り、果てしない空色の「蒼月草」の海――仲間たちの故郷に咲いていた花である。光栄も功績も力も、ただ数十年に仲間の死と共に忘れられたが、この形のない思いは千年の星霜を越え、彼女に付き添い、輝かしい形ある物を創造し続けてきた。 蒼い海は越えられる。中日を繫いでいるのは表の政治・経済関係だけでなく、奥には人々の無形の共通の理想である。一衣帯水の両国人民の「お互いの美しさを知りたい」という小さな望みは、「山川異境、風月同天」の強い声になる。鑑真の六回の渡航も、新型コロナの時期の日本から中国への物資援助も、形ない願いがつながり合い、拡大し、伝承され、やがて時空を越えられる力になる証である。『フリーレン』自体も中日友好の証で、日本の創作者が伝えたい淡々と静かな美しさは、作品の形無い魂となり、作品の形が未来に消えても、その中の真善美も有形の国境を越え、無限の時空に中日の共通の理想を生み出し続けていくと信じたい
蒼い空も越えられる。人類を宇宙へ導いてくれるのは、決してロケットや飛行船ではなく、人々の意志に集まる国際人道主義・未知への好奇心や勇気こそが星霜を越える人類のとわの財産である。
自分の小さな願いでも、頼りない明日へと辿り着くことができよう。それを否定せずに、根を下ろさせ、自分だけの永遠に揺らめく空色の花の海に成長していこう。
「歳月の経過には、いったい何が残るか」と、歴史テキストの蒼い表紙をうっとりと見つめながら考えている。 その静かな蒼を眺め、歴史に関する沈思黙考に陥る。中国と日本はかつて、数え切れない燦爛たる一瞬があり、中日の各朝の間に夥しく盛んに交流した文化もあった。