心を守る旅

2025-01-13 11:23:00

袁淋琳 上海市甘泉外国語中学 

東野圭吾は「読者が明日に希望を持てるように祈ることを目的として『クスノキの番人』を書いた」と述べています。確かに、この本は暖かい一条の灯りのように、喧騒の世界の中で私の心の片隅を照らしてくれました。物語は、東京から約 1 時間ほど離れた町で始まります。そこには神秘的な楠の木が古い神社の中にあり、その木に祈れば願いが叶うと言われています。主人公の玲斗は、もともと社会の底辺で暮らしていた青年でしたが、窃盗で投獄された後、面識のなかった叔母・千舟に大金を出してもらい救われ、楠の守護者となりました。最初は、「生きることだけを求めている」彼にとって日中に落ち葉を掃いて、夜に祈念をする者たちを見守る仕事は悪くありませんでした。しかし、クスノキの番人の仕事を通じて、彼が出会った人々との交流や、次第に明らかになっていく彼らの祈念の秘密は、主人公に新たな使命を与え、愛と希望をもたらしました。  

例えば、クスノキを訪れた人の一人である佐治優美は、お父さんがおばあさんの代わりに大伯喜久夫が木の穴に隠していた「祈念」を聞いたことを知り、おばあさんが生きている間におじさんと和解できるように、家族と一緒に音楽を録音することにしました。壮貴は、自分が父親の実の息子ではなくても、父が実の子のように愛し、その愛に偽りのないことを周囲のすべての人に伝えたいと思っていることを知りました。最初はこの仕事を引き受けるのを迷って卑屈になっていた玲斗でしたが、千舟おばさんのおかげで、この祈りを見守る仕事で自らを癒すことができまた。これらの登場人物の運命は絡み合っていて、『クスノキの番人』の物語を温かく紡ぎあげていきます。  

立ち止まって考えてみれば、この速いリズムの時代の中で、私たちはいつも些細なことに忙しくしていて、心の声と周囲の自分を愛し見守ってくれる人を忘れてしまったり、困難に直面した時、現実逃避してしまうことがありますおそらく崩壊した家庭で育った玲斗も、自分の過去や未来を考えた時、自分がこの世界に「ふさわしくない」と思ってしまったかもしれませんしかし、本書に「この世界には生まれてはいけない人は誰もいない、どこにもいないということを覚えておいてほしい。誰にもこの世界に来た理由がある」と述べられています最終的に彼は勇敢に前進することを選び、より成長することができました。それ故、私達は実際にはどんなに生活が苦しくても、自分の心に耳を傾け、周りの人を大切にし、勇敢に挑戦していくなら、自分の夢を追求し続けられるのです。私は誰もが成長し向上していける可能性を信じています。  

クスノキの番人の魅力は、読者に人間の温かさと命の奇跡を感じさせてくれることだと思います。この本は私たちに素晴らしい感動を与えるだけでなく、生活に向き合っていく勇気と力を与えてくれましたこの複雑な現代社会にあっても、心の中の祈りを守り、自分の心を見つめ直し、愛と希望を伝えて行きましょう。 

 

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