笑顔と平和の学び

2025-01-14 14:15:00

唐宛青 黒龍江外国語学院 

 

子供の目に映る世界というのは、時に大人たちの思う「現実」とはかけ離れた場所にある。黒柳徹子の『窓ぎわのトットちゃん』を読みながら、私はそのことを再確認した。トットちゃんの無邪気さ、自由奔放な言動、それを取り囲む大人たちの温かさ。これらが一つの小さな宇宙を作り上げ、その宇宙は、どこか懐かしさと同時に切なさを感じさせる。 

物語の始まりは、トットちゃんが普通の学校から退学させられる場面だ。彼女の好奇心旺盛で奔放な性格は、規律を重んじる教育制度に合わなかったのだろう。しかし、彼女にとってその出来事は、終わりではなく始まりだった。出会ったのは、トモエ学園とその校長、小林宗作先生。この学校は、従来の学校とは違っていた。教室は電車の車両でできていて、子供たちは時間やルールに縛られることなく、自由に学んでいく。小林先生の教育方針は、子供の個性を最大限に尊重し、それを伸ばすというものだ。 

 そんな小林先生の教育哲学には、深い愛情が感じられる。彼は、子供たちが成長する中で、それぞれの心の風景を大切にしていた。知識を教えるだけでなく、その子供がどのように世界と関わり、自分自身を見つけていくか。そうした時間を、彼は子供たちに与え続けたのだ。 

『窓ぎわのトットちゃん』の物語が紡がれる背景には、第二次世界大戦という重い現実が横たわっている。戦争は、子供たちの笑顔や無邪気さとは対極にある。しかし、トモエ学園ではその戦争の影があまり強く感じられない。それは、きっと小林先生が意図的にそうした「平和の空間」を作り上げたからだろう。外の世界がどれほど荒廃していようとも、子供たちの心の中には、一筋の光が残っていた。その光は、自由と希望の象徴であり、子供たちが持つ無限の可能性を示していた。 

この物語が、私の心を最も打ったのは、その裏にある「平和」への強い願いだ。第二次世界大戦という大きな悲劇の中でも、トモエ学園という場所は、子供たちにとっての小さな平和の象徴だった。それは、ただ学校という場所にとどまらず、世界が目指すべき「平和の形」を示しているのではないかと思う。どんなに厳しい時代でも、どれほど困難な状況でも、子供たちが自由に学び、遊び、成長できる環境を守ること。それこそが、私たちが目指すべき未来の姿だろう。 

この本を読み終えた時、私は一つの希望を持った。それは、私たちがもっと子供たちの声に耳を傾け、彼らが自由に成長できる世界を作ること。そして、その先に、中日両国の友好や、世界全体の平和があると信じている。戦争の時代を超えて、私たちが手を取り合い、共に未来を築くことができるなら、きっとそこには『窓ぎわのトットちゃん』のような、小さくも温かい平和が待っているのだろう。 

 

 

 
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