72時間で生活の真実と優しさを捉える
井文卿 大連理工大学
行き交う街角、すれ違う背後で、カメラは人々の様子を捉えている。
『ドキュメント72時間』というタイトルを初めて見たとき、なぜこんな名前が付けられたのだろうと思った。日本人の真面目さからか、タイトルが映画制作のルールになっていると思った。この72時間という短い時間の中で、慌ただしく通り過ぎる人々に、自分自身に属する物語を語ってもらう。
日本最北端のバス停、京都の静かな図書館、赤羽の小さな関東料理店、東京湾の海釣り公園……素朴な視点で感動の瞬間を記録した。不思議なことに、カメラに映っている人たちは遠く離れているのに、いたるところに自分たちの影が見える。楽しいことも、悲しいことも、結局は人生の迷いに帰結する。ドキュメンタリーの制作に日本「物の哀れ」の影響が大きかったのかもしれないと思った。
「物の哀れ」の美は、日本文化の土に深く植え付けられており、それは単なる文学観念ではなく、繊細な人生哲学でもある。この感情の繊細な描写の下では、喜びと悲しみは、人生の本質についての深く複雑な迷いに収束する。このような迷いは、消極的な没落ではなく、生命の無常や世事の変化に対する深い体得であり、過去と未来に対する優しい応対でもある。今何が起こっているかにかかわらず、すべての人々は未来についての展望に満ちており、たとえ今の自分が不幸のどん底にあって も、それは人生の小さな経験であると信じている。
その中で一番印象的だったのは『活字の森を歩く巨大書店』という番組である。
ドキュメンタリーの最後に、撮影チームはあるおじいさんに「来年に最もふさわしい本は何ですか」と尋ね、85歳のおじいさんは震えながら「紙を破ったカレンダー」を取り出した。「ひとりぼっちで生きるのは、もういやだ。でも、しょうがないし、死ぬわけにもいかない。生きている以上、毎日を楽しく生きなければならない」と答えた。カレンダーのページを破り、毎日を過ごす老人は、楽観的な気持ちで運命の残酷さに立ち向かう。人間はパンだけでは生きていけなく、あなたにとって一番大切な本は何だろう。
日本人は読書が好き、本の市場を根本的に守ってきた。伝統的な書店は衰退しているが、紀伊国屋書店という存在もある。ドキュメンタリーに触発され、私は日本の本を積極的に読むようになった。小説から歴史、文化エッセイから社会調査まで、どの本も日本社会への窓を開けてくれた。これらの書籍を通じ、私は日本の歴史的変遷、社会構造、文化的特色をより深く理解し、日本人の感情世界と価値観をより理解することができた。
2018年にこの日本の名作シリーズが中国に上陸し、中国を映像で記憶するようになった。『ドキュメント72時間』が国境を越えて人の心を動かすのは、人間性に共通しているからかもしれないと思う。
「本当に、世界のどこかで、僕と同じ思いを持って、頑張っている人がいるんだ」
「そんなに頑張っているのを見て、自分が本気になれない理由があるのでしょうか」
「この世界には、いつも感動することがあるんですね」
それらの小さな幸せは、平凡で普通だが、私たちの手の届くところにある。
中日両国は複雑な歴史的葛藤を抱えているが、両国民には多くの共通点があり、我々に交流と協力のきっかけを提供している。両国民の交流を促進するために、私たちは文化交流を強化し、相互理解を深めるべきである。本、映画、音楽などの芸術形式であれ、教育、観光などの方式であれ、私たちは積極的にプラットフォームを構築し、両国文化の相互伝播と融合を促進すべきである。ドキュメンタリーの歌詞にもあるように、「幸せを守るのではなく、分けてあげる」。共同の努力の下で、両国人民の友情は更に深まり、両国文化の交流と協力は更にすばらしい明日を迎えることができると信じている。