効率より大事なもの

2025-01-14 15:45:00

  陸欣宇 華東師範大学

語学学習において誰もが辞書を手にしたことがあるだろう。辞書は学生だけでなく、社会人にとっても欠かせない存在だ。しかし、何万語もの言葉が収録され、それぞれに語釈と語例、時には図も載っている辞書は一体どのようにつくられてきたのか、私は小さい頃からずっと疑問に思っていた。その答えはアニメ『舟を編む』にあった。 

「茫漠とした言葉の海。辞書とは、その海を渡る一艘の舟だ」というナレーションで物語が始まった。これはある出版社の辞書作りをめぐる物語だ。どのような環境で辞書が作られているのだろうかと気になりながら見進めると、なんと古びた建物の「辞書編集部」と掲げられた部屋にいるのはたった3人の職員だった。彼らの前には本が山積みになっている。 

まさかこの人数で辞書を作るとはにわかには信じられなかった。しかし、「茫漠とした言葉の海」を3人だけで渡り切らなければならないのだ。ひたすら進むしかない。言葉の使い方を収集し、辞書に載せるべき言葉を選別した上で、一つ一つ語釈を付けていく途方もない旅だ。売れ筋商品を抱える雑誌編集部門はとっくに新社屋に移ったが、辞書編集部だけは時代に置いていかれたように旧社屋に取り残されていた。 

会社に重視されない仕事に深刻な人手不足、諦めたくなるような状況で主人公たちは自分たちの仕事に使命感を持って前に進み続けた。彼らが作っている『大渡海』はIT用語を積極的に収録する新しい時代にふさわしい辞書であり、人々が世界を理解する一助になるものだ。 

ひたすら机に向かう主人公の姿が、ある人物と重なって見えた。それは故宮に40年近く勤め、人生の大半を時計の修復作業に捧げた王津であった。2016年に中国で放送された「我在故宮修文物(故宮で文物を修復する私)」というドキュメンタリー番組で、故宮の時計修復職人である王津の物語が広く知られた。文物修復で歴史の重みを人に感じさせた王津はすぐに若者の間で人気者になった。人知れず、ひとつのことに熱意を持ち続け、膨大な月日をかけて責務を全うする姿に、国を問わず誰しもが敬意を払うのではないだろうか。 

近年、「コスパ」という言葉をよく耳にするようになり、効率がより重視されるようになった。この効率化が進む現代社会で、14年もかけて一冊の辞書を完成させる仕事や故宮で毎日同じ仕事を一人で繰り返す仕事は、労力対効果から見ると、どうしても効果が低く見えてしまう。しかし、コツコツと心を込めて作り上げたものにはきっとその地道な努力にふさわしい価値がある。辞書編集部がなければ、辞書に収録された言葉は二度と更新されなくなる。修復職人がいなければ、文物はいずれ壊れてしまい、永遠に見ることができなくなる。効率重視は確かに時代の主流だが、丁寧に仕事を遂行する精神はいつまでも忘れてはいけない。自分が有意義だと信じることに尽力する人が増えてほしい。また私自身もそんな人でありたい。 

 

 

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