自分なりの生きがいを発見しよう
高芸(国際関係学院)
小学生の頃、読書の宿題を完成するため、『窓際のトットちゃん』という本を初めて読み遂げた。それをきっかけに、見たことのない新たな世界の扉が私の前に開かれた。
「ほかの国の子どもがこんなふうに暮らしていたんだって面白いなぁ」
と思いながら、好奇心も湧いてきて読み続けた。完全に子ども目線でその本を読み終えた当時の私にとって、覚えられたのは同じ子どものトットちゃんの活躍ぶりだけだった。プロットの展開とともにトットちゃんと一緒に笑ったり、泣いたりしたことが幼い頃の楽しい思い出となっていたが、面白い本や好きな本などに過ぎないのはその本に対するイメージだった。
しかし、そういうイメージはもう変わってしまった。大学院生になって今改めて読んでみると、その本がトットちゃんの生活だけではなく、トットちゃんの人生を変えてくれた教育者の小林宗作先生がトモエ学園で行った教育を世間に伝わる物語だと気づいた。その小林先生の教育方針と子どもへの接し方に深く感銘を受けた。
子どもは、元々無価値な存在もなく、一人一人がそれぞれ違う存在だし、自分に合う導きさえ出会えれば、いつか自らの価値を発見することができる。そういう教育理念を貫くことで、ほかの人の目に「問題児」だと映されたトットちゃんが自らの人生へ旅立つことができるようになったので、人間の価値を発見できる目が最も惜しむべきことだと思うようになった。
これは別に子どもに限らなく、何かを新たに始めたい人にも相応しい認識だと思う。初心者をできない人と見るのか。或いはポテンシャルが高い人と見るのか。そういう自分に対する認識は、まだ何も始まっていない最初で、一番大切なものだと言えよう。
大学院に入学した当時、院生協議会に属する部門の新入部員となった。学生時代以来、そのような学生に関連する仕事をやるのは初めてなので、部門の催したイベントの宣伝や組織など、いろいろな今までやったことのない物事に挑戦した。もちろん不案内なこともあったが、部長やほかの部員から信頼され、たくさん具体的なアドバイスをもらい、最後まで仕事を成し遂げられたおかげで、自分のできることを再発見した。今思うと、心に最も強く刻まれたのはその信頼感だ。他人からの信頼は自分への自信となり、一番大きな支えとなった。
「人間は自らの価値を持つものだ」という信頼感があってこそ、できるだけ目の前の仕事に集中し、自分の力で自分なりの能力を発揮し、人生の道を切り開ける。「ゼロからヒーローへ」という成長のプロセスは私がこの本に最も感動されたことだ。
人々はみんな心の中で自分なりの「トットちゃん」があって、その「トットちゃん」が未来の可能性を示している。その「トットちゃん」を守るために、これからの人生も精一杯、人間の価値を発見できる目で、自分なりの生きがいを発見しよう。