トトロ 、幼き日の温もりと奇跡
楊炎学(江南大学)
『となりのトトロ』を見ている間中、私は映画の中の魔法がスクリーンを突き抜けて、心にそっと触れたような気がした。そして映画を見終わった瞬間、言いようのない感動が押し寄せた。それは無垢の時代への思い出であり、自然界への憧れであり、家族の温もりへの憧れであった。映画のシーンのひとつひとつが、まるで繊細な巻物のように目の前でゆっくりと展開し、私を想像と驚きに満ちた世界へと導いてくれたのである。
夏の午後、森の不思議な生き物との思いがけない出会いを空想したことはないだろうか。これは宮崎駿監督の名作で、田舎で森の精霊と出会った二人の少女、小雪と芽衣の物語である。実はこの映画は何回も見たことがあるが、見るたびに新たな気づきがある。 幼い頃はファンタジー的なものに惹かれることが多いが、今は改めて見直すことでそこに込められた感情や意味をより深く理解することができる。
もし小雪と芽衣のようにあの大きな毛むくじゃらの友達に出会ったら、あなたも秘密を共有したくなるのではないだろうか。トトロは、自然を再現したものというだけでなく、子供たちの心の守護者でもある。トトロは、実現不可能に思える奇跡を現実のもののように表現している。小雪と芽衣が困難にぶつかったり、孤独を感じたりすると、トトロはいつも奇跡のようにパッと現れ、慰めたり支えになってくれたりする。自然と共生する人間というコンセプトと、幼い頃の良き時代への思いが、私の心に深く響いた。
子供の頃、一番安心できた場所は何だったんだろう。映画の中に出てくる田舎の素朴な温かい家族の日常生活は、私の子供の頃を思い出させてくれた。当時の生活には、現代のテクノロジー的な便利さはなかったが、家族と一緒に共有できる幸せな瞬間に満ちていた。
また、小雪と芽衣の母親が病気で入院し、姉妹は父親と田舎に引っ越すことになる。このような日常の変化に直面しても、二人は落胆せず、新しい環境に前向きに適応し、その過程で喜びを見出すのであった。そして、困難にぶつかるたびに、小雪と芽衣は自ら勇気を出したり楽観的になれたりするだけでなく、トトロも、困難なときは楽観的であり続けるのが大事だというメッセージを伝えてくれる。この前向きなメッセージは、私たちの貴重なインスピレーションをかきたててくれる。
『となりのトトロ』からは、華やかな映像が見られるだけでなく、深い感情的なつながりを感じることができる。言い換えれば、単なる映画ではなく、人間と自然の調和した共生、そして愛情の暖かさと力を讃える賛美歌のようなものなのだ。 いつ、どこにいても、美しいものを追い求める心を持ち続けることを教えてくれる。 現実には本物のチンチラに出会うことができないかもしれないが、日々の生活の中で小さな奇跡を見つけ、それを前に進む力にすることは十分できるのではないかと思う。