ダブルバインドの狭間で:現代社会に潜むコミュニケーションの矛盾

2026-01-04 09:02:00

  

 楊剣萍(メディア関係)  

 

日本での就職活動中、求人広告に「当社は国際的な職場環境を目指しており、外国人でも働きやすい環境を整えています」と謳われているのを目にした。しかしその一方で、採用条件として日本のみで実施されているSPI試験の合格が必須となっていた。またコミュニケーションツールに、中国では使用できないGoogleが指定されていた。 

中国の国有企業では、会議中に上司に意見を求められた。そこで率直な意見を述べると、軽くあしらわれてしまった。会議後も、何ら意見を反映した改善は行われなかった。同僚には、上司のこのような“伺い”は形式的なもので、実際には意見など求めていないのだ、と言われた。 

劇作家・平田オリザ氏の著書『わかりあえないことから』の一節を思い出した。「現在、企業が表向き新入社員に要求するコミュニケーション能力は、グローバル・コミュニケーション・スキルだ。つまり、異なる文化背景や価値観をもっている人に対して、自分の主張を伝えることができること。一方、企業では、知らず知らずのうちにもう一つの能力を若い人に求めている。それが『上司の意図を察して機敏に行動する』『会議の空気を読んで、反対意見を言わない』というような従来型のコミュニケーション能力だ」。 

この指摘は、我々が常に直面する「ダブルバインド(二重拘束)」の状態を鮮やかに描き出している。私たちは相反する要求の狭間で板挟みになり、身動きが取れなくなっている。このような矛盾する指示は、人の心を静かに蝕み、思考を麻痺させ、職場全体の労働意欲までも奪い去ってしまう。 

このような状況から抜け出すには、この矛盾したメッセージを発している側が、自らが生み出しているダブルバインドの存在に気づくことが肝心だ。上記の日本企業の例でいえば、異なる社会環境からの応募者と出会うことによって、外国出身者にとってそこに構造的なダブルバインドが存在していることが明らかになった。それはまさに「国際的な環境」の構築を目指す企業にとっては得難い気づきであり、企業の国際的環境構築の手掛かりとなるはずのものである。 

しかしダブルバインドの発生を防ごうとする一方で、それがある程度発生してしまうのは、たくさんの矛盾を抱えた人間組織である以上仕方のないことなのかもしれない。重要なことは、組織や集団のなかにそれが存在していることを認めて、直ちに解消できなくとも、それに真剣に対処しようとしているのだという姿勢を見せることである。それが指示を受ける側に対する「あなたを受け止めている」というシグナルとなり、受け手の意欲低下の歯止めとなるはずだ。 

ダブルバインドは、あらゆる上下関係のコミュニケーションの中にみられる。力を行使する者が自らの発信を顧み、自覚し、誠実であることが求められている。 

 

関連文章