遼寧で唐文化に再び出会う

2020-03-19 17:55:29

莫倩=文 段崴=写真

 

唐の美人画と記念撮影

 今も残る唐代の書や絵画は非常に珍しく、普段なかなかお目にかかることはできない。しかし今回、遼寧省博物館が所蔵する貴重な唐代の書画を中心に、時を超えて唐代の華やかな芸術品がお目見えした。

 同省瀋陽市内から車で30分ほどの距離にある遼寧省博物館で、「又見大唐(唐と再び出会う)書画文物展」がこのほど開催された。

 

全盛期の栄華が目の前に

 唐代は中国の歴史上でも、華やかで栄えていた時代だ。

 唐代の文化は開放的で国際色豊かであり、1400年以上もの間、人々を魅了してきた。しかし、千年以上の時を越えて今も残るものは滅多になく、紙や絹などを使った唐代の芸術品は、たとえわずかな紙片や絹の端だけだったとしても非常に貴重で、有名な拓本や原本は言うまでもなくなかなかお目にかかれない。

 同展では、遼寧省博物館が所蔵する唐代の書画を中心に、38点の国家一級の文化財が展示された。その取り扱いの多さは、同館の開館以来最多となる。

 唐代の周昉が描いた『簪花仕女図』は唐代の美人画の代表作であり、中国の人物画の中でも群を抜いた美しさである。北宋時代の趙佶が模写した張萱の『虢国夫人遊春図』も同館に所蔵されている国宝級の貴重な作品だ。この2点の美人画は、女性の美しい容姿、優雅な衣装、古代の宮廷における神秘のベールに包まれた生活を描いている。

 

北宋の趙佶の臨書『虢国夫人遊春図』 51.8×148cm(遼寧省博物館所蔵)

 

書道の分野では、東晋の王羲之の真筆を模した唐代の『万歳通天帖』が非常に繊細で美しく、同じく唐代に王羲之の真跡から写し取られたとされる『喪乱帖』と並び、オリジナルに最も忠実だと称され、東晋の書を研究するための信頼できる名品となっている。また、行書『仲尼夢奠帖』は、唐代の書道の大家である欧陽詢の現存する真筆であり、内容は、唐より以前の史実から引用し、生老病死に対する考え方を述べるものとなっている。

 

唐の欧陽詢の行書『仲尼夢奠帖』 26.5×34cm(遼寧省博物館所蔵)

 書画以外にも、同展は唐代の金器や三彩(陶器)、木器、彫刻などさまざまな文化財も展示しており、唐代における政治、経済、文化、芸術と民族の融合、それにシルクロードがもたらした西洋と中国の文化交流の成果を全面的に示し、唐代最盛期の華やかさを表している。

また、展覧会をさらに楽しんでもらおうと、同館では初めてデジタル技術会社と協力し、ハイテクを使ったデジタル体験コーナーをつくった。同展を企画した劉伝銘さんは、「訪れた人たちにリラックスした楽しい雰囲気の中で文化財を見て、唐代の華やかな悠久の歴史を体感してもらいたいです」と期待を込めた。

 

唐泥塑彩色絵仕官女性乗馬俑 36.2×28.6cm新疆ウイグル自治区のカラホージョ(哈拉和卓)墓地から出土(旅順博物館所蔵)

 

唐代の書画との縁

 劉伝銘さんによると、中国の東北地方にある同館は、中華文化の発祥地である黄河中下流域の中原からは離れているが、所蔵している唐代の書画は「一級品中の一級品」だという。

 中国古代の書画作品の所蔵といえば、同館と北京の故宮博物院、上海博物館がいずれも有名である。今回、同展で展示されている書画や文物など貴重なものの中には、最終的にここで所蔵するに至るまで紆余曲折をたどったものもある。

1911年の辛亥革命により清朝最後の皇帝溥儀は退位したが、退位後も紫禁城で生活を続けていた。溥儀は2211月から、「鑑賞」という名目で城内に所蔵されていた書画を集め、弟の溥傑に城外へ運ばせた。32年、吉林省長春市を中心に偽満洲国が建てられ、溥儀が「かいらい皇帝」になったのに伴い、一部の書画が長春の偽満州国宮殿内に保管されることになった。 45年8月、日本の降伏により、偽満州国は滅亡し、宮殿内にあった貴重な書画は破壊された。その後、故宮から持ち出され散り散りになっていた書画はきちんと回収され、当時安全だとされていた東北銀行に保管された。しかしその後、東北銀行は東北文物管理委員会に保管を任せ、52年4月には、同委員会がそれらの文化財を東北博物館(現遼寧省博物館)に託し、所蔵された。

 

唐の馮承素が臨書した王羲之の『蘭亭序』(神龍本複製品) 24.5×69.9cm(原本は北京の故宮博物院所蔵)

 

唐の柳公権『玄秘塔碑』(一部) 31.8×17.6cm(遼寧省博物館所蔵)

かつて習近平総書記は、「博物館とは、大きな学校である。中華民族の伝統文化が結集された文物を大切に保護し、保管し、同時に研究と活用を進め、歴史や文物の価値を生かさなければならない」と述べた。現在、中国の博物館事業はすさまじい勢いで発展しており、博物館は文化交流、学び合いの新しい場となっている。

 
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