瀋陽の魅力再発見
袁舒=文
瀋陽市党委員会宣伝部=写真提供
李虎 王丹丹=イラスト
遼寧省瀋陽市は日本とゆかりが深い町で、読者の皆さんもきっと聞いたことがあるだろう。中国の東北部にある瀋陽は、北京から北東に690㌔離れている遼寧省の省都だ。在瀋陽日本総領事館が立地するこの町では、多くの日本人が暮らしている。瀋陽はまた、札幌市、川崎市、浜松市の友好都市でもあり、毎年8000万人を超える観光客の中にも日本人の姿がよく見られる。
瀋陽は過去と未来が同居する町だ。町並み、歴史の痕跡、そしてここに暮らす人々が幾世代にもわたって語り継ぐ物語が、共にこの町の命と魂を織り成している。
今年4月13日、新型コロナウイルス感染症の拡大が収束しつつある中、瀋陽日報社と瀋陽ラジオテレビ放送局が「最も人気のある瀋陽の観光スポットトップ10」コンテストを共同で主催した。このコンテストは「新時代における東北部の全面・全方位的な振興」のさらなる発展を後押しし、瀋陽の文化観光産業のグレードアップを促進し、瀋陽の歴史と文化の素晴らしさを広く知ってもらうことを目的としている。30日間の期間が設けられ、応募、専門家による一次審査、展示、オンライン投票、専門家による最終審査を経て、「最も人気のある瀋陽の観光スポットトップ10」が最終的に選出された。
4月13日にコンテストがスタートしてからすぐに瀋陽市内で大きな反響があり、5日間で瀋陽市全域の120余りの観光スポットから応募が殺到した。市民は5月1~5日のオンライン投票期間中に瀋陽日報のアプリから投票できたが、参加度がとても高く、みな積極的に投票し、延べ118万人の投票者から全部で206万票が得られた。投票に参加した市民は、今回のコンテストは5月の5連休と重なり、新たな人気スポットトップ10の選出を通して候補に挙がった観光スポットの頼りになる観光案内となったと評価。市民と観光客が瀋陽の魅力を感じることができたのは、ここに暮らす者としてとても誇らしいとも語った。
当コンテストは専門家による審査団を設け、中国近現代史史料学学会、瀋陽市作家協会、遼寧大学などから遼寧・瀋陽の著名な歴史・文化の専門家たちを招き、専門分野と学術的観点から各候補地を評価した。コンテストに応募した観光スポットの管理責任者たちは、今回のコンテストで瀋陽の文化観光資源がさらに発見、展示されることで、観光客に瀋陽の魅力に触れてもらい、各観光スポットの集客とポスト・コロナ時代における地方観光業の活性化にもつながったとコメントしている。
コンテストの結果は一つのスタートにすぎず、町の歴史は古いが、町の未来はこの町に訪れた一人一人によって築かれる。ここでは、読者の皆さんと一緒に「最も人気のある瀋陽の観光スポットトップ10」の魅力を見ていきたい。印象的な場所があれば、ぜひ涼しく爽やかな秋の瀋陽を訪れ、トップ10に選ばれた観光スポットに足を運んでみてはどうだろうか。瀋陽発祥の本場北方の「老辺ギョーザ」もお薦めだ。
一宮両陵
瀋陽故宮、福陵、昭陵を合わせて「一宮両陵」と呼ぶ。満州族の軍隊が東北部から山海関を突破して京師(現在の北京)に入る前に清の太祖ヌルハチと太宗ホンタイジが築いた皇宮で、中国で現存する古代宮殿建造物群はここと北京の故宮だけ。乾隆帝は『盛京賦』を詠んでこの宮殿を称えた。福陵は太祖ヌルハチとその皇后である葉赫那拉氏の陵墓で、昭陵は2代目の開国君主であるホンタイジと孝端文皇后の陵墓だ。雄大な宮殿と陵墓を前に、清王朝のロマンと歴史の脈動に触れられる。
中国共産党満州省委員会旧跡記念館
中国共産党が東北部で初めて設立した最高指導部であり、東北で行った革命の始まりの場所でもある。中華人民共和国成立の元勲である劉少奇ら第1世代の革命家たちは、ここで東北の人々を率いて苦難に満ちた革命の闘いを繰り広げた。
張氏帥府博物館
「一座大帥府、半部民国史(張氏帥府には中華民国の歴史が半分詰まっている)」といわれるように、奉天軍閥首領の張作霖とその息子張学良が東北地方を治めていた時期の官邸と私邸であるここには、張父子の立派な政治生涯と波乱万丈で数奇に満ちた人生の痕跡が残されている。ここに来れば硝煙のにおい漂う民国時代と少しロマンチックな余韻に浸ることができる。
中国工業博物館
中国初の工業博物館として、百年にわたる中国の工業生産の歴史と変遷を展示している。世界最大口径の鋳鉄管、立て旋盤で加工した世界最大の鋳物、世界で最も薄い鋳物など、息をのむ「工業界の一番」の数々や、中国初の鋳造用ロボットや自主開発パイプ金型など、工業におけるいくつもの「中国初」を目撃できる。
「九・一八」歴史博物館
大量の展示物と歴史資料、そして多様な展示方法を通して、東北部の人々と全国人民が共に中国共産党の指揮の下、どんな困難にも屈せず、激しい戦闘を続け、最終的に抗日戦争の勝利を手にした壮絶な歴史の物語を紹介している。
瀋陽市植物園
瀋陽の人々に愛される「裏庭」で、各地から訪れる観光客もよく足を運ぶ場所だ。2006年の瀋陽世界園芸博覧会の会場になり、「森の中の博覧会会場」とも呼ばれている。園内には色とりどりの花が辺り一面に咲き誇り、おとぎ話の世界のようだ。草花の香りが身も心もリラックスさせてくれる。
遼寧省博物館
新中国成立後に初めてできた博物館。中華民族の優れた伝統文化を静かに見守り、受け継いでいる。唐代の色彩豊かで美しい絵画『簪花仕女図』を鑑賞し、王羲之の真跡に最も近い唐代の模写本『王羲之―門書翰』の一字一字に託された思いを感じるだけでなく、溺死した父親を追って身投げした「孝女」の物語『曹娥誄辞』に心を打たれるはず。
「渾河晩渡」古跡
「夕暮れの河に小舟がつながれ、旅人が次々と渡し場を訪れる」と描写される渾河は昔、行き交う人々で渡し場がにぎわい、盛京の繁栄を映し出していた。そして今、渾河はその活気を取り戻し、美しい景色のまま、歴史と共に瀋陽の人々の生活を見守りながら流れている。
臥龍湖エコツーリズムエリア
遼寧省最大の淡水湖で、127平方㌔の面積を誇る。毎年100万羽もの野鳥がやって来ては羽を休めるここは、バードウォッチング愛好家の天国でもある。また、遼寧省中心部が砂漠に侵食されるのを防止する役割も果たしており、エコツーリズムとレジャーの両面で市民の人気を得ている。コンテストでは投票数1位。
棋盤山観光エリア