サラリーマンの心理洞察し世相描く 高孝午の彫塑展

2020-12-04 10:30:25

龔海瑩=文 馬悦=写真

 

彫像作家 高孝午

1976年、福建省三明市生まれ。1999年、福建省廈門工芸美術学院彫塑学部卒業。2004年、中央美術学院彫塑学部彫塑コース修了。北京在住。

 

著名な彫像作家である高孝午の作品展「和楽――高孝午適園彫塑展」が、今年6月14日から2カ月間にわたり、北京市海淀区の適園で開かれた。適園は水辺にあり、緑豊かで、あずまやや楼閣、回廊がある中国古典庭園のたたずまいを見せる。中をそぞろ歩きし、思いがけずさまざまな現代彫塑作品に出会うと、古典と現代が交錯し、異なる時空にワープしたかのような感覚を覚える。

今回の展示は「和楽」をテーマとし、高氏の20年近い芸術の歩みの中から、各時期の代表作数十点を集めて展示した。これらの作品の中には、社会問題を取り上げ、注目を集めた代表作『標準時代』(2004年)や、2015年以来、「日常現象」に着眼し、再生により最初の自然を呼び覚ます「再生」シリーズ作品などが含まれていた。

 

『ペットの神――獅子』

強化プラスチック/120×120×195㌢/2011年

2011年より『ペットの神』シリーズの創作を始める。これにより、現代社会が物質と金銭を追い求め、精神性が重視されなくなったという現象を省察している

 

人類共通の心の声を作品に

高氏のシリーズ作品は、丸みを帯び、温かみがあって、軽やかでユーモラスであり、社会性・自然性など多くのテーマに対する思考が表現されている。高氏は、新型コロナウイルス感染症を経験した特殊な時代背景の下では、人と社会、人と自然、人と人とが平和的に共存していくことが全人類に共通する心の声となっていると考えている。これはまた、彼が長年作品に込めてきた中核でもある。

高氏は04年、初の個展を開き、後に注目を浴びることになった『標準時代』を発表した。この後、数年ごとに個展で新作を発表して、今に至っている。

高氏によると、今回の展示はもともと新作を披露する予定だったそうだ。ところが、世界的に新型コロナ情勢が曲折・変化を続けたため、彼はこの機会に自分のこれまでの作品を整理、見直すことにした。「長年、私は人と社会、人と自然、人と人との間の関係について考え、表現してきました。この特殊な状況の下で、これはまさしく全人類に共通する心の声となり、さまざまな要素も相まって、今回の特別展が開かれることになったのです」

 

『再生――鹿』

ステンレスにメッキ色 200×180×355㌢/2016年

2015年から『再生』シリーズの作品を創作開始。これらの含蓄があったり奇抜な形状だったりする生物の作品は、科学技術が自然を改造することに対する彼の考えを表現している

 

『再生――カエル』

ステンレス/165×90×200㌢/2016年

 

「内心を表現」が最も重要

高氏は04年、中央美術学院彫塑学部彫塑コースを修了した。その年に発表した作品『紫禁城』は非常に個性の強い作品で、中国の伝統的な塑像芸術である陶俑(さまざまな人物・動物を模した焼き物の像)とのつながりを視覚的に感じさせるものだった。そして同時期の『標準時代』シリーズは、さらに彼の名を高めるものとなった。

「『標準時代』シリーズの誕生は、私が本当に自分の彫塑言語と表現方法を探し当てたことを意味するものでした。中央美術学院で私は西洋の写実的な作品を中心に学んでいましたが、『標準時代』の創作を通して、初めて東方芸術の寛容さと自由、そしてこれがもたらす画境の美しさを体得しました。芸術に国境はなく、いかにしたら自分の心を奥深く表現できるかということが最も大切で、私にとって思い通りに表現できる方法を探し当てたのです」と高氏は語る。

西洋の現代芸術が創作に与えた影響について、高氏はこう語る。「フランスのマルセル・デュシャン(1887~1968年、画家・彫刻家)の西洋現代美術史における重要性は言うまでもありませんが、私個人からすると、芸術はより多くの可能性が探求できることを彼は意識させてくれました。彫塑の造形の基本を知る以外にも、西洋の現代芸術は、いかにして社会的・哲学的な思考を塑像作品の中に注ぎ込むかということを啓蒙してくれました」

西洋の現代芸術の理念において、芸術家にとって最も重要なのは、自分の生きている状態を見つけることだと高氏は考えている。「一人の中国人として、私はこの大地で育ち、私が興味を抱くものは全てここにあります。だから、ここで自信のルーツを見つけ、平等な芸術的方法により自由に表現するのです。実際には、わざわざ東西の芸術的伝統を持ち出すまでもなく、芸術家が生きるという経験の中で得たものにより、社会や生命、そして未来への思考を表現することに、芸術の本当の魅力はあるのです」

 

『標準時代』

強化プラスチック/2004年

腰をかがめてお辞儀する3人のサラリーマンのユーモラスな表情により、現代社会がますます「標準化」によって束縛されていく現象を省察している 
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