新疆ウイグル自治区南部 歴史的資源で観光業を振興
董芳=文・写真
新疆ウイグル自治区は、北にアルタイ山脈、中央に天山山脈、南に崑崙山脈が並んでいる。その中で、天山山脈より南、崑崙山脈より北の地域は南疆と呼ばれている。南疆は広大な乾燥地域で、降水量が少なく、一年中砂煙や熱風、ひょうなどに見舞われる。過酷な自然環境のため、南疆では農業が振るわず、貧困脱却が一番難しい地域となっていた。
2014年に開かれた第2回中央新疆活動座談会以降、党中央による支持と全国からの新疆へのペアリング支援(一対一支援)が強化され続けていて、現地の人々の生活は著しく改善している。昨年9月に開かれた第3回中央新疆活動座談会で習近平総書記は、「団結し調和が取れ、繁栄し豊かで、素養が高く進歩的で、安らかに暮らし楽しく働くことができ、生態環境の良い新時代における中国の特色ある社会主義の新疆を築くよう努力しなければならない」と強調した。現在の南疆は、ナン(小麦粉で作られる焼きパン)産業パーク、じゅうたん工場、民芸雑貨店など、伝統技術や風習を売りにして現地の人々の貧困脱却の道を広げている。
文化の産業化で雇用増
新疆ウイグル自治区では、ナンは何物にも代えがたい食べ物だ。新疆では18年にナン産業を大いに発展させることが提案された。今ではナンはありふれた主食から、新疆の文化的シンボルの一つへと変わっている。
新疆南西部、タクラマカン砂漠の端に位置するカシュガル(喀什)地区ファイザバード(伽師)県は極度の貧困地域だったが、19年11月に面積1万8000平方㍍のナン産業パークの建設が完了した。この産業パークには計1200人の従業員が働いていて、新規雇用者のうち貧困人口が6割近くを占めている。「私はもう1年余り働いていて、月給は4200元です」と、ナン作りの技によってすでに貧困から脱却した同県のウファールジャン・カシムさんはうれしそうに話した。
ナン産業パークは民間の手工業と新技術を結合させたもので、ムラサキイモやクルミ、バラジャム入りのナンなどの新製品を開発し、オンライン販売の推進にも努めていて、販売数は月10万個を超える。同パークの馬軍社長によると、産業パークはすでに生産・加工から倉庫保管・物流まで、技能訓練から貧困者への就労支援までの全過程の産業チェーンを形成している。
カシュガル地区ファイザバード県にあるナン産業パークで作られた小さなナン
カシュガルの中心部にある旧市街の古い茶館の中では、数組の客が互いに邪魔にならないよう静かに談笑している。午後になると、高齢者たちは100㍍ある通りを抜けて、ナンを買ってから茶館にやって来て、お茶を飲みながらおしゃべりを楽しむ。スローライフや独特の情緒を味わいたい若い観光客もよくここを訪れる。
ファイザバード県から北西100㌔ほどの場所にあるクズルス・キルギス(克孜勒蘇柯爾克孜)自治州のアルトゥシュ(阿図什)市に住む主婦のシャジダンダウティさん(35)は地元政府の指導の下でじゅうたん工場で働き、じゅうたん織りの技術を学んだ。もう2年も仕事を続けていて、少なくとも月1800元の収入がある。シャジダンダウティさんのいる工場は深圳の企業が投資したもので、日常で使用する各種のじゅうたんや模様入りじゅうたんを製造しており、年間の生産加工量は200万平方㍍に及ぶ。同社の文卓夫社長によると、現在この会社は300人の地元住民を雇用しており、そのうち70%以上が貧困家庭出身だったという。「初めての給料日に、多くの人が感動して泣いていたことを覚えています。仕事があり、収入があり、生活が良くなったため、彼女たちは自信を持つようになりました」と文社長は語る。
カシュガル旧市街の古い茶館に集まる常連客たち
旧市街地に観光客呼び込む
2000年以上前の歴史的建造物が残るカシュガル古城風景区は、15年7月20日に国家観光局により5Aクラス(中国の観光地等級で最高)の観光地に指定された。カシュガルの旧市街は、庶民の生活を描いた絵巻物のような光景が広がっている。高さがまちまちの黄土色の建築物が並び、掃除が行き届いた通りの両側には店舗や家屋が連なっている。旧市街は今ではウイグル族住民の居住区であるだけでなく、開放的な観光地にもなっている。観光客はここで身近に民族的情緒を味わうことができ、伝統的手工芸品の製作過程を見学し、各種グルメを堪能できる。
カシュガル旧市街の街角
上海生まれの安晶さんは、初めて旅行でカシュガルに来てこの地にほれ込んだ。18年7月にカシュガルに住み始め、翌年5月に旧市街にカフェを開いてからは、観光客との付き合いがますます増えていった。時々観光客が自宅から衣服、靴や帽子を送ってくれるので、安さんはそれを整理してから、地元の福祉施設や助けを必要としている人たちに寄付している。昨年は新型コロナウイルス感染症の影響でカシュガルの果物の売れ行きがはかばかしくなかったため、安さんはオンラインショップを開いて果物販売を助けた。
自身のカフェで写真を撮る安晶さん(左)とスタッフ
20代のマイウラン・トゥラクさんはカシュガルで育った。江西省南昌市の大学に進学した時、同級生たちが新疆についてあまり知らないことに気付き、自分の故郷をもっと多くの人に知ってもらいたいと思い、日常からアイデアを得ようとした。ある日、母が手作りした伝統的な民族衣装が彼にインスピレーションを与えた。自分がよく知るこうした衣装と服飾品から始めたらいいのではないかと。マイウランさんは18年10月に旧市街で民芸雑貨店を始めた。自分がデザインに加わったレトロ風衣装や数十点の古いアクセサリーを写真撮影用に観光客に貸し出すとともに、オンラインや店頭で手作りの帽子や民族的な特色を持つ財布、手帳などのオリジナル雑貨や土産品を販売している。このようにして彼は、新疆をPRしながら安定した収入を得られるようになった。
客に撮影用衣装を選ぶマイウラン・トゥラクさん(左)