江戸浮世絵展 北京で開催 絵画に見る中日のつながり

2021-07-02 10:05:30

李家祺 袁舒=文

「遇見浮世・博覧江戸――江戸時代浮世絵原画展覧会」がこのほど北京で開催された。江戸時代と明治時代に描かれた浮世絵の原画100点が展示され、多くの美術愛好家や日本文化に関心のある人々が訪れた。来場者は浮世絵を通して、100~200年前の日本文化や歴史、風習を垣間見て、中国と日本の昔からの密接な交流の痕跡を発見していた。

 

『相馬の古内裏』を鑑賞する胡さんと娘の栄ちゃん(写真・袁舒/人民中国)

 

展覧会成功への道のり

同展では、「入城(城に入る)」「入室(部屋に入る)」「入魂(魂が入る)」の三つのセクションに分けて、江戸時代や明治時代の社会のありさまや人々の生活、民間伝承などを描いた作品を選び出して展示し、江戸の町の様子と当時の人々の精神世界を立体的に再現している。

同展のキュレーターを務めた中国文物交流センターの徐赫さん(33)は、今回の展覧会の視点は従来の浮世絵展よりもマイナーで、ストーリー性の強い作品を選び、参観者と作品の距離を縮めることを重視していると紹介する。「これらの作品を通して、浮世絵の背景にある歴史や人間模様を知り、昔から続く中国と日本の密接な関係を知っていただきたいです」

新型コロナウイルス感染症の影響により、今回の展覧会は、開催に至るまでさまざまな紆余曲折があった。準備期間の短縮と資金の削減、渡航の不便によって、展示品の引き渡しや展覧会の設営に困難が重なった。

「今回の展覧会は、両国の豊かで深遠な人的交流の基盤があったからこそ、新型コロナの影響を克服して、わずか半年の時間で開催の準備が整いました。こうした交流の基盤によって、双方の機関は、初めての共同作業にもかかわらず、すぐに信頼関係を築き、協力して困難を乗り越えることができたのだと思います」と徐赫さんは振り返った。

 

作品の背景にある文化の交わり

中国と日本は海を挟んで向かい合っており、何千年も前から文化面での交流を絶えず行ってきた。今回展示されている浮世絵からは、両国の交流の歴史や、社会生活、文化習慣の共通性を垣間見ることができる。

浮世絵に描かれた江戸のにぎわいを見て、古代中国の町の繁栄ぶりを描いた名画『清明上河図』や『姑蘇繁華図』などを思い浮かべる中国の参観者は少なくない。通りに並ぶ商店、橋を渡る人々、川を行き交う船、さまざまな社会階層の、さまざまな容姿の人々が行き交う光景に親近感を覚えているようだ。

また、『佳人雪見之清楽』という作品では宮中の女性たちが琴や琵琶、二胡など日本と中国の楽器を演奏している様子が描かれ、「江戸砂子年中行事」シリーズに描かれた上巳、端午、七夕などの節句は中国から伝わったものであり、『日本玉藻前 屋かんと化して飛去図』や『木曽街道六十九次之内 京都鵺 大尾』などに登場する九尾の狐や鵺も最初は中国古代の地理書『山海経』に出てくる妖怪だった。また、歌川国芳や月岡芳年といった著名画家が源義経の生い立ちをもとに描いた浮世絵は、『趙氏孤児』(父の代に一度滅亡した趙氏を再興させる中国春秋時代の晋の政治家・趙武の物語)を連想させる。

浮世絵は木版画から派生した芸術であり、中国の木版年画と深い歴史的つながりと同様の制作技術を持つ。明・清時代、商品経済が発展し、木版画の多色刷り技術が成熟し、さらに通俗文学とそのモノクロ挿絵が日本へ伝わったことにより、浮世絵の隆盛が後押しされた。どちらも市民階級の美意識を反映したものだった。

また、浮世絵は西洋画の遠近法を取り入れることで独自のスタイルを確立し、現代では、浮世絵によく見られるコントラストの強い技法や、誇張された表現、自然界の美的特徴を明るく鮮やかな色で表現するという創作のコンセプトが、逆に中国の版画の革新に影響を与えている。

「中国と日本の文化は、強い結び付きがあると同時に、それぞれ独立しています」 と徐赫さん。「両国の文化財の展覧会を相手の国で開催することで、それぞれの文化の素晴らしさを伝え、お互いの独立性とつながりを提示したいです」

 

北宋・張択端による『清明上河図』の一部

 

中国市場で「熱い」浮世絵展

近年、北京や上海などの都市では浮世絵展が盛んに行われており、より多くの中国人が浮世絵を身近に感じることができるようになっている。特に、葛飾北斎の『神奈川沖浪裏』(富嶽三十六景)などの名作は、中国でも広く知られている。

青少年の美術教育に携わる30代の胡さんと娘の栄ちゃん(6)は、葛飾北斎に魅せられて展覧会に足を運んだという。栄ちゃんは、『凱風快晴』に描かれた富士山が一番印象的で、「色が鮮やかで、他で見る富士山とは全然違う」と言う。

70代の美術愛好家の李さんは、この展覧会を通して浮世絵には独特の価値があることが分かったと言う。「浮世絵には、写実性と写意性が混在しているという特徴があります。人物のしぐさや表情が豊かで、とても生き生きとした絵になっています」

北京の旅行中に同展に立ち寄った20代の劉さんは、『東京名所之内 両国橋大花火之真図』に感銘を受け、「『清明上河図』が北宋の都・汴京の繁栄の様子を雄大に描いているのに対し、両国橋の浮世絵は陽気な祭りの雰囲気がより強調されていて、それぞれに異なった趣があると思います」と話した。

作品の鑑賞を通して江戸時代の風習や人々の生活の様子を知ることができた40代の李さんは、「『東京名所 浅草観音之風景』に描かれている浅草寺前の繁華街のにぎやかな様子は、今の浅草寺でも見ることができます」と、東京観光時の風景を思い出していた。

日本のアニメやゲームが好きな中国の若者は、『相馬の古内裏』のような日本の民話を題材にした浮世絵に特に興味を示した。20代の叢さんは、「『ぬらりひょんの孫』などのアニメ作品がとても好きなので、天狗や酒呑童子などの妖怪が描かれた浮世絵を見て、親近感が湧いて面白かったです」と語った。

「中国では2年間の巡回展を予定しています。北京での展覧会は第1弾で、次は上海と瀋陽での展覧会を計画しています」と徐赫さんは今後の展示予定を紹介してくれた。

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