北京市延慶にある冬季五輪会場を取材——山に囲まれた競技場と環境に優しい選手村

2021-10-09 15:02:56

王浩=文・写真

 2022年北京冬季オリンピックの開催日が近付き、北京の町中にはオリンピックムードが漂っている。開催されれば、北京は夏冬両方のオリンピックを開催した世界初の都市として歴史に名を残すことになる。北京冬季オリンピックは北京市中心部、北京市延慶区、河北省張家口市の3カ所で開催される。そのうち延慶区では、アルペンスキー、ボブスレー、スノーモービルの3種目が開催され、21枚の金メダルが授与される予定。2008年北京オリンピックの「鳥の巣」と「ウォーターキューブ」のように、オリンピックの開催は現地に貴重な遺産を残すが、2022年冬季オリンピックは延慶区に何を残すだろうか。9月29日、北京市文化・観光局がインバウンド旅行会社やメディア、および外国の友好人士からなる見学団を組織し、筆者も共に公開前の延慶会場を訪れた。


展示センターの外にある北京冬季オリンピックのロゴ


展示センターにあるマスコットの「氷墩墩(ビン・ドゥンドゥン)」と「雪容融(シュエ・ロンロン)」のポスター 

 北京延慶競技エリアは、北京市中心部から80キロ以上離れた延慶区の海坨山にある。会場に入ると、冬季オリンピック展示センターの隣に、2022年北京冬季オリンピックの大きなロゴが見える。北京で2番目に高く、標高2200メートルを超える海坨山は、垂直方向の落差が大きく、アルペンスキーに非常に適している。この地理的優位性が、北京冬季オリンピックの開催地の一つに選ばれた理由だ。延慶は北京と張家口の間に位置し、北京―ラサ高速道路と北京―ウルムチ高速道路が通る。2019年12月30日に北京―張家口高速鉄道が開通したことで、北京から張家口までわずか47分で着き、三つの競技エリアを緊密につなげている。


延慶冬季オリンピック会場の高台からの眺め


延慶冬季オリンピック会場の建物の配置を説明するスタッフ

 会場内を歩くと、山の尾根に点在する新築の競技場などのほか、林、ダム、稼働中のケーブルカーなどの風景が広がってる。北京ナショナルアルペンスキー社の取締役会長で、延慶冬季オリンピック選手村の後方勤務副主任の付連生氏によると、延慶冬季オリンピック会場は大きく三つに分かれている。一つ目は国家アルペンスキーセンターで、中国初の冬季オリンピック基準を満たしたアルペンスキー競技場には、競技用トラック3本、トレーニング用トラック4本の計7本、全長9.2キロのコースが整備されている。二つ目は国家ボブスレー・スノーモービルセンターで、アジアでは3番目、中国では初めてのボブスレーとスノーモービルのコースとなり、総面積は18.69ヘクタール、合計16のカーブがある。特に注目すべきは、世界でも数少ない360度のらせん状のカーブが設けられている点だ。三つ目は選手村で、大会期間中、選手や役員、スポーツ団体の代表者らの宿泊施設になる。この選手村は、山間部の村のように分散し、半開放中庭型に設計され、建築面積は11万8000平方メートルで、六つの宿泊エリア、公共エリアと駐車場が一つずつあり、1600床以上のベッドがある。現在、ここの各種工事はほぼ完了し、作業員たちが仕上げの作業を行っている。


冬季オリンピック選手村の屋外プラザ


冬季オリンピック選手村の部屋

 ケーブルカーで登ると、山の美しい景色や巧みに配置された建築デザインに魅了される。とりわけデザインがユニークなのは選手村だ。広い客室の他、飲食店、ジム、診療所など、選手たちに一流のサービスを提供する施設も充実している。また、オリンピック村はアルペンスキー会場ともつながっており、選手たちは競技終了後、バスだけでなく、スキーで直接オリンピック村に戻ることもできる。


冬季オリンピック会場の外観。冬になると橋の下に雪のトラックが作られる予定

 付氏はこう話す。「延慶の冬季オリンピック選手村と他の選手村との最大の違いは、美しい海坨山という調和の取れた自然環境に競技場があることだ。競技場は周りの環境に溶け込み、まさに『山に囲まれた競技場と環境に優しい冬季オリンピック選手村』というコンセプトを体現している」

 見学団が関心を寄せていた競技場や施設の後利用について、付氏はこう説明した。延慶冬季オリンピック都市の主要部分として、また、北京―張家口のスポーツ・文化観光ベルトの主要な構成要素として、延慶冬季オリンピック競技エリアは競技終了後に正式に一般公開され、2022年11月下旬に冬季の運営を開始する予定。その際、冬季オリンピック選手村はエコツーリズムのリゾートホテルにアップグレードする。また、残された多くの競技場を利用し、一流の国際スキー場、国際的な冬季オリンピック遺産観光地、一年中楽しめるレジャー公園、アウトドアスポーツとウインタースポーツが可能な場所を造る。


ケーブルカーからの眺め

 開幕まで4カ月余りとなり、準備作業が整然と行われていることを筆者はここで実感した。これからオリンピックに向けた一連のテストイベントが実施されるという。

 北京冬季オリンピック組織委員会は、「ウインタースポーツ人口3億人」という目標を掲げている。北京冬季オリンピックの開催に伴い、より多くのスポーツ愛好家がウインタースポーツに参加することになるだろう。また、延慶に一流のスポーツ施設や宿泊施設が残されることになり、北京の新しい観光地として徐々に有名になっていくだろう。


国家ボブスレー・スノーモービルセンターの外にある旗竿

 北京市文化・観光局の関係者は次のように説明した。中国のインバウンド・アウトバウンド観光は、2020年以降、新型コロナウイルス感染症の流行により中止を余儀なくされている。しかし、いずれ新型コロナが収束し、世界的な観光地である北京は国内外の多くの観光客を迎え入れることになる。従って、北京市文化・観光局は、北京という魅力あふれる国際都市を人々に体験してもらうために、一連の目新しい文化観光商品や観光地をつくり出している。その最初の試みはこの延慶冬季オリンピック会場で、今後はさらに興味を持たれる観光地や観光ルートを企画するという。

 

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