取材で得られる気付きと感動

2026-04-24 13:30:00

本誌の中国人ベテラン記者の于文と日本人専門家の植野友和が最近の話題から社会現象まで、肩の力を抜いて語り合うコラム。駐在経験の長い二人が、毎回人民中国雑誌社のある百万荘のカフェで、コーヒー片手に中日のクロスカルチャーの視点からさまざまな話題についてトークを繰り広げます! 

現地を訪れて分かること 

植野友和 私はアジア太平洋広報センターで働き始めてからいろいろ驚きはあったのですが、中でも毎回新たな発見を感じるのは、中国の地方取材ですね。于文さんも、記者としてさまざまなところを訪れたことがあるのではないですか。 

于文 私の場合、日本駐在の期間が長かったので、当時はよく日本の地方へ取材に行っていました。北京に戻ってきたのは3年前なのですが、実はちょうど先月、出張でラオスを訪れる機会があったんですよ。 

植野 なるほど。取材のテーマは何ですか? 

 現地で行われる「人類運命共同体」と「貧困撲滅」に関するフォーラムに参加したり、中国とラオスを結ぶ「中老鉄道」を視察したりしました。 

植野 実際に行ってみて、どういうことを感じましたか? 

 まだ発展途上で、私が幼かった頃の中国に似ているなという印象を受けました。 

植野 私は昔の中国のことをニュースや記録でしか知らないのですが、今の中国は地方や農村でもインフラが整っていて、経済的にも以前に比べて格段に良いですし、就業や起業のチャンスもありますよね。ラオスはまだそういう段階ではなかったですか? 

 そうですね。街を歩いていると、本当に1990年代の北京郊外の風景によく似ていたと思います。通りはそれほどきれいではないし、高い建物もありません。ただ面白いのは、ラオスの街中では日本車がたくさん走っている一方、お店や看板などあちこちで中国語を目にしたんですよ。中国と日本の影響が同時にラオスの都市に見られることに、強い関心を抱きました。 

植野 日本は先に発展した分、ODA(政府開発援助)を東南アジアに長年行ってきました。しかし現在では、中国が「一帯一路」をはじめとして、海外支援を非常に活発に行っています。そのため、かつての日本の支援と、現在の中国からの支援の影響や成果が同時に感じられるのではないかなと思いますね。 

 中国と日本による連携の中でたびたび議題に挙がるテーマとして、「第三国での協力」があるのですが、今回ついにその実例を目の当たりにできたように思います。今後、中日両国が手を携えて発展途上国への援助にますます力を入れていくことを強く願っています。 

簡単ではない貧困撲滅 

植野 中国は国内で絶対的な貧困の撲滅を成功させましたが、これは本当に困難なことですよね。 

 確かに、容易なことではありません。 

植野 私は広西チワン(壮)族自治区河池市の農村を取材で訪れたことがあるのですが、そこに行って気付いたのは、現地の人々の努力だけではどうにもならない貧しさの問題です。第一書記の人に話を聞くと、その村ではかつて農業で現金収入を得るにしても、作物を売りにいくための道路さえなかったそうです。やはり、本当に困っている人々には政府などからの支援が絶対必要で、それにプラスして現地の人の頑張りだと思うんですよね。 

 貧困撲滅については、私も日本にいたときに、のちに厚生労働副大臣を務めた伊佐進一さんを取材したことがあります。伊佐さんは中国政府の招きに応じ、重慶市の貧困撲滅の事案を視察したのですが、中国は一つの地域に一つの対策、すなわち「一県一策」「一村一策」、さらには「一戸一策」という施策によって貧困撲滅を進めてきたんですね。 

植野 それはどういう取り組みですか? 

 例えば、先ほど植野さんが言ったような、「この村は交通が不便だから現金収入が得られない」となったら、それを真っ先に解決します。また、現地の条件が悪くて農産物が育たないなら、専門家を派遣して対策を講じます。つまり、貧困をなくすためには、まずそれぞれの地域の原因を突き止め、的確な対策を行うということです。伊佐さんはそのやり方にとても感心していました。 

また、伊佐さんは、日本にも似た事例があることを教えてくれました。日本海側にかつて限界集落のようになっていた小さな離島があり、そこに若者たちが行って、村おこしのためのさまざまな案を出したそうです。具体的には、特産の海産物の加工食品をネットで売るなど、現地に合った案を出してやってみたら、どんどん財政が良くなったとのことでした。 

植野 「一村一品」という地域振興の取り組みですね。 

 中国の「一県一策」と似ている部分がありますよね。おそらく日本との交流の中で、お互いに勉強し合ったり、経験を共有したりしたことがあるからではないかと思います。 

植野 確かに似ているところもありますが、貧困撲滅の取り組みについて言えば、やはり中国の方が圧倒的にスケールが大きく、熱意があると感じます。私の印象だと、日本の読者の中には、「なぜ中国はこれほど貧困撲滅に力を入れているのだろう?」と感じる方もいるのではないかと思うんです。私は若い頃にアジア各国を巡って、絶対的貧困というか、「ここで生まれたら、生涯貧困から抜け出せないだろう」という次元の貧しさを見ているので、理解できる部分があるんです。本当に貧しいと生きていくだけで精いっぱいですから、「自然を大切にして、調和のとれた発展を目指しましょう」といったことを言っていられないですよね。ですから、中国が貧困脱却を最優先課題とし、それを実現したことは正しいし、中国が成功の経験を各国と分かち合い、各国を支援するのは、とても良い取り組みだと思います。 

 そうですね。中国は自国だけでなく、「一県一策」の経験をラオスとも分かち合いました。例えば、ラオスはレタスやトウモロコシの栽培に適した条件を持っているので、その振興のために中国は専門家を派遣し、人的支援をしっかりと行っています。また、ラオスの農民を中国に招いて、研修も実施しています。 

植野 そういえば、私が上海の大学に留学していたときも、ラオス人の留学生が何人もいて、おそらく中国の教育援助だと思うのですが、これもすごく大事なことですよね。学生さんたちが帰国したら、中国で学んだことを自分たちの国で生かせるわけです。 

現地でこそ分かること 

 今回の取材の収穫としては、やはり「中老鉄道」に実際に乗って、現地にどのような影響をもたらしているのかを取材できたことが大きかったです。 

植野 昆明から行ったんですか? 

 いえ、ラオスのルアンプラバン(ルアンパバーン)から乗って、ビエンチャンまで行きました。まず興味深かったのは、駅が中国の高速鉄道の駅にそっくりなんです。外観も中も、中国の地方都市の高速鉄道の駅と全く同じ作りですね。椅子も、看板のデザインも同じです(笑)。 

植野 中国の高速鉄道は時間が正確だし、速いし、本当に便利ですよね。それが東南アジアや中央アジアにつながっていくことで、交通の便だけでなく、現地の人たちに「豊かになる方法」を届けているのではと思います。 

 今回、駅でどんな人が乗っているのかを観察したのですが、乗客の3分の1は欧米や韓国などの外国人観光客、3分の1は中国人の旅行客やビジネス客、そして残りの3分の1は現地の人々でした。 

植野 現地の人も利用しているんですね。 

 はい。ルアンプラバンは古都として有名ですが、元々は交通の便が悪いため訪れる人が少なかったそうです。今は「中老鉄道」ができて、昆明からもビエンチャンからも直接行けるようになり、観光業でにぎわっています。沿線に暮らす大勢のラオスの人々がルアンプラバンで旅行業に従事し、それらの人々の経済状況が大いに良くなりました。 

植野 先進的で近代的な鉄道システム以外にも、中国はあらゆる面でラオスをはじめとする発展途上国の貧困脱却や現代化を後押ししています。これらは全て「一帯一路」共同建設、そして人類運命共同体構築の一環なわけですね。 

 そうですね。これまでの「一帯一路」に関する海外メディアの報道には、一部でネガティブな内容のものもありました。それについて、鉄道に乗っている間に、通訳さんを通じて現地の人に聞いてみたんです。何人かに聞いたら、「この鉄道ができたことで自分の暮らしが確かに良くなった」という話をしてくれました。 

植野 それが一番大事ですよね。 

 現地の人々の口から「生活が良くなった」と聞けて、私自身もうれしく感じました。 

植野 それこそが取材の意義だと思います。今回の対談では、自分の目で見て、人々の話に耳を傾けるのが私たちの仕事なのだと改めて感じました。私も今年は例年以上に中国各地を訪れて、現地の生の情報を記事や動画を通じて日本の皆さんにお届けしたいですね。 

 私も日本の皆さんに、中国のことをより深く知ってもらいたいと願っています。自分自身も引き続き中国の現状を伝えていきますし、植野さんにもどしどし中国の地方に行って、さまざまな発見をレポートしてほしいですね。また、読者の皆さんもぜひ機会があれば、中国各地を旅して、新たな気付きや感動に巡り合っていただきたいです。 

人民中国インターネット版

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