おひとりさま(一个人)

2020-03-04 14:34:13

                                                                                                                                                             /福井ゆり子 翻訳/編集=銭海澎

中国で暮らしていた時期、30を過ぎて独身だった私に、周囲の中国人は「どうして結婚しないの?」と不思議そうに聞いたり、しきりに「いい人を紹介する」と言ったりして、私を困らせたものだ。日本ではプライベートなことを聞くのはあまり良くないとされるため、こうした質問はあまりされることはなかったが、中国の人は好奇心のままに、ズバッと聞いてくる。どうしてと聞かれても答えにくいこの問いかけに、私は「日本では結婚しない人増えているんですよ」とちょっと逸らして答えることにしていた2015年の統計によると、日本では男性で23.4%、女性で14.1%の人が生涯結婚しないという。男性では4人に1人の割合となり、今後もこの数字は増える一方だろう。もはや結婚しない人もそう珍しい部類には属さない。

我在中国生活的时候,身边的中国人得知我30多岁了还是单身,就会很诧异地询问:“为什么还不结婚?”或者隔三差五就要给我“介绍个合适的人”,这让我感到很为难。因为在日本很忌讳询问隐私,所以我很少被人这样问过,而中国人出于好奇,就会忽然脱口而出。可毕竟这是个很难回答的问题,于是我就有意岔开话题说:“在日本不结婚的人数正在增加。”据2015年的统计数据显示,日本有23.4%的男性和14.1%的女性一生都没有走入婚姻。这就意味着每4个男性中就有1人终生未婚,今后这一数字可能还会攀升。不结婚的人已经不算是稀有动物了。

 

ひと昔前は結婚するのがあたり前で、結婚しない女性は「いかず後家ごけ)注1」と揶揄され、女性の社会進出が進んでからは、仕事に熱中し婚期を逃した女性が「負け犬注2」と自嘲していたものだが、晩婚や非婚化のために30代・40代の女性の一人暮らしが増え、さらには高齢者の一人暮らしが増加するといった昨今の社会の変化が背景となり、最近では一人でいることを前向きにとらえる動きが出て来ている。

在过去,结婚是理所当然的事,不结婚的女性会被嘲笑是“没出嫁的寡妇”,随着越来越多的女性走入社会,尽管沉迷工作适龄未婚的女性会自嘲是“败犬”,但随着晚婚和不婚倾向的出现,三四十岁的独居女性越来越多,再加上如今独居老人不断增加这一社会背景,最近人们已经开始积极看待独居生活了。

 

それを象徴するのが「おひとりさま」という言葉だ。この言葉は、社会者の上野千鶴子が『おひとりさまの老後』『おひとりさまの最期』などの著作で使ったのがきっかけとなって流行したもので、一人暮らし、単独で行動する人などを意味する。本来は、ちょっと嫌味ともとれるような言葉だったが注3、最近の流行語では、「一人で行動でき、一人を楽しむことのできる人」という、極めて前向きな意味合いが込められているところに特徴がある。人間はしょせん一人で生まれて、一人で死ぬもの。好きで「おひとりさま」でいるわけではなくても、「おひとりさま」になったなら、その状況を楽しもうというポジティブなメッセージとなっているのだ。

其象征就是“一个人”这个词的再度流行。该词曾因在社会学家上野千鹤子的《一个人的晚年生活》《一个人的临终生活》等著作中被使用而流行,其含义是指一个人生活,或单独行动的人。原本该词还带有一丝挖苦语气,但最近再度流行时,被赋予了“可以一个人行动,享受独居生活的人”这样一种非常积极的含义。人终究是要独自出生,独自离世的。所以,该词也正在成为一种乐观宣言:即便不喜欢“一个人”,真到了“一个人”的那一天,顺其自然便好。

 

この「おひとりさま」ばやりで、最近では、女性一人で気軽に入れるカフェやレストランも増え、以前は旅館などで宿泊を断られることのあったという女性の一人旅も、積極的に受け入れるところが増えてきた。何かと気を使うことの多い人間関係の中で、人間関係に疲れ、一人でいることが気晴らしになることもある。そんな世の中の疲れをも反映した流行語だとも言えるだろう。

借着这股“一个人”热潮,最近,女性一个人光顾也毫无压力的咖啡厅和西餐厅多起来,越来越多的旅馆也开始积极接纳独自旅游的女性,而在从前,旅馆是拒绝女性一个人留宿的。在时常需要劳心费神的人际交往中,人们有时会对处理人际关系感到厌倦,一个人独处可以散散心。所以,流行语“一个人”也反映了人们在社会中的疲惫。

 

注释

注1:嫁入りせずに年を重ねた女性のこと。夫に死なれた女性を「後家」といい、結婚しない(=嫁にいかない)まま、後家のような生活を送る人のことを指す。ほとんどが揶揄するようなニュアンスで使われる。

指没有出嫁的大龄女性。死了丈夫的女性被称作是“後家(寡妇)”,所以该词指不结婚(=没出嫁),过着宛若寡妇一样生活的人。多带有嘲讽语气。

 

注2:2003年に発表され、ベストセラーとなった酒井順子のエッセイ『負け犬の遠吠え』から生まれた言葉で、結婚しそこなった女性を負け犬に喩えたもの

该词源自酒井顺子2003年出版的散文集《败犬的远吠》,该书是当年的畅销书,书中将大龄未婚女性比作是“败犬”。

 

注3:本来はレストランに一人で入ると「お一人様ですか?」と聞かれるなどの場面で使われた。日本語では、「お」や「さま」などの丁寧語を必要以上に多くつけた場合、往々にして揶揄や、歓迎しないという意味となり、「おひとりさま」という言葉も、場合によっては、一人でいる(=相手がいない)ことを揶揄するようにも聞こえる。

原本用于一个人进餐厅时服务员询问“您是一个人吗?”的场面。在日语中,当刻意添加「お」「さま」等敬称时,往往带有嘲讽,反感的意思,“一个人”根据使用场合的不同,有时也会带有对“孤身一人(=无人陪伴)”的奚落意味。

 

 

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