襲名(继承名号)

2021-11-03 14:35:30

/福井ゆり子  翻訳/編集=銭海澎

 

襲名しゅうめいとは、先人の名前を受け継いで自分の名とすることで、能楽・歌舞伎・落語などの伝統芸能の世界で盛んに行われている伝統的な習慣である。一番有名な例は、歌舞伎の市川團十郎(だんじゅうろう)で、市川團十郎家は市川流の家元(いえもと、その流派の本家)であり、歌舞伎界の中でも一番権威のある名跡(みょうせき、代々継承される個人名のこと)とされている。得意芸のことをよく「十八番(おはこ)」というが、これは七代目市川團十郎の得意な演目を18選び出した「歌舞伎十八番」に由来する言葉で、ここからも市川團十郎の影響力の強さが分かるだろう。12代目市川團十郎の長男である市川海老蔵(えびぞう)は、2020年に市川團十郎を襲名する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大のために延期となっている。

“袭名”,即继承先人的名号,作为自己的艺名或新本名,这是盛行于能乐、歌舞伎和落语等传统艺术领域的传统习俗。其中最著名的,当数歌舞伎中的市川团十郎。市川团十郎家是市川派的宗家,所以市川团十郎这个名字,在歌舞伎界被视为最具权威的家名(世代相传的个人名号)。在日语中,拿手好戏之所以被称作“十八番”,就是起源于第七代市川团十郎精选出18部拿手剧目的“歌舞伎十八番”。由此也可一窥市川团十郎的强大影响力。第十二代市川团十郎的长子市川海老藏,原计划2020年继承市川团十郎名号,但因新冠肺炎疫情的蔓延而延期。

 

伝統芸能だけでなく、伝統工芸などでもこうした習慣があり、例えば陶芸では有田焼の代表的な作家である酒井田柿右衛門(さかいだかきえもん)は現在15代目である。襲名と縁の深いものとして、「一子相伝(いっしそうでん)」という習慣があって、これは、学問・技芸などの奥義おうぎや秘伝を子ども一人だけに伝え、他には決してもらさないことを指す。日本の職人技は襲名や一子相伝により、代々大切に受け継がれてきたのだ。

除了传统艺术之外,传统工艺等领域也有此习俗。比如陶艺界有田烧的代表匠人酒井田柿右卫门现在是第十五代。和袭名密切相关的习俗有“一子相传(单传)”,即学问、技艺等诀窍、秘传只传给自己的一个孩子(通常为长子——译者注),决不泄露给其他人。日本的工匠技艺就是通过袭名和单传,在一代代人的守护下延续至今的。

 

さらには有力な商人や農民の間でも盛んに襲名が行われていた。商店の名前を「屋号(やごう)」というが、これが代々引き継がれるのは当然として、主人の名前も代々引き継がれることが多い。歌舞伎などはほとんどが芸名であるため、本名を変える必要はないが、老舗(しにせ)の主人たちは現在、わざわざ面倒な法律的手続きを踏んでまで戸籍の名前を変え、襲名を行っている。たとえば日本橋で1699年に創業し、今も伝統の味を守っている鰹節店「にんべん」は、代々伊兵衛の名前を引き継いでいて、現在は第13代当主の伊兵衛が社長を務めている。

此外,在一些有实力的商人和农民中间也盛行袭名。商店的名字叫做“商号”,理所当然代代相传,还有很多连主人名字也一同继承的实例。歌舞伎等领域大多继承艺名,所以无需变更自己的本名。而老字号的主人如今为了袭名,会特意通过繁琐的法律程序,更改户籍名称。比如1699年在日本桥创业,至今仍保留传统风味的鲣鱼干专卖店“にんべん”,世代承袭伊兵卫之名,在由第13主伊兵担任社

 

こうして見てみると、名門の家系に生まれることだけが条件のように思えるが、ただ血筋をもつだけではだめで、それだけの資格があると認められて初めて襲名が可能となる。血筋とは関係なく、力のある弟子が襲名する場合もある。「名は体を表す」という言葉があるが、襲名という習慣は、偉大な先人の名前をもらうことで、先人の持っていた技術、信用、客筋などすべてを引き継ぎ、さらにそれを発展させて次の世代に引き渡すという思いが込められたものだ。日本は世界的にも老舗企業の数が多い国であるが、こうした伝統を守るための制度と、代々受け継いできた人々の努力があってこその老舗の多さなのだろう。

如此看来,出身名门似乎是唯一条件,然而仅仅有血缘关系还不够,还要被认可相应资格后才能袭名。也有并无血缘关系,由得力弟子袭名的情况。有一个词叫“名体相符(名副其实)”,即袭名这一风俗,是继承伟大先人的名号,所以要继承先人所拥有的所有技艺、信誉和人脉等,还要将其发展、传承给下一代。日本是世界上拥有老字号数量较多的国家,这得益于日本拥有保护传统的制度,以及一代又一代传承人的努力。

 

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