占い

2021-08-27 16:21:45

姚任祥=文・写真提供

「命」と「相」

国には古くから「五術」と呼ばれるものがある。神仙道や養生法に関する「山術」、漢方医学の「医術」、人生の運勢を見る「命術」と人相を見る「相術」、そして吉凶を予測する「卜術」だ。

それぞれ理論は異なるが、普通の生活の中で「命術」と「相術」は同列に語られることが多い。「命術」の考え方には八字占い、紫微斗数(星を使う占い)、姓名占いなどが含まれ、「相術」は現象や様相を観察することで、例えば手相や人相などだ。

中国人は命術をとても重視する。子どもが生まれた時にその子の一生の運勢を占ったり、結婚の際に八字占いによって相性を見てもらったりするのは最も基本的なものである。それ以外にも、毎年の運勢や事業運を占うなどさまざまだ。古代には相術を研究した帝王もいて、命術と相術の占い結果によって家臣を選んでいたという。

「八字占い」とは、甲乙丙丁などの10の要素の「十干」と子丑寅などの「十二支」に基づき、人の出生年・月・日・時刻を正確に記録したもので、「年干・年支」「月干・月支」「日干・日支」「時干・時支」の八文字を使って占うので、俗に「八字」と呼ばれる。

八字占いは中国の伝統的な結婚に欠かせない。婚約前、両親は新郎新婦の「八字」を占い師に渡し、この結婚が円満かどうか占ってもらう。結婚は人生の一大事。今でもこのような八字占いはよく行われている。

中国人は「相は心より生まれる」と考えている。だからか、特に相術に詳しい『黄暦』(伝統的な暦法)を開くたびに、骨相占いのページが目に留まる。顔のほくろの分布図だったり、たくさんの線が描かれた手相だったり――人の頭や顔を上から下まで細かく分けて分析し、ほくろやしわ、後頭部の形までも区別してさまざまに理論付けしたご先祖様は、本当にすごいと感心する。

いわゆる「人相学」(相術)とは、人の額、眉、目、鼻、耳など顔のさまざまな部位を研究し、その人の個性や考え方、運勢や吉凶禍福を判断することだ。相術は広く伝わり、周代(紀元前11世紀頃~同256年)には政治的な人材を選ぶのに相術師の協力を求めた。春秋時代(紀元前770年~同476年)に晋国が大飢饉に見舞われ、盗賊・匪賊がはびこると、役人は相術師を雇い、人相学に従って悪者を見極めた。

 

顔のほくろの位置で男女別にその人の運命を占う

中国史上、相術によって優秀な志士を集めるのは珍しいことではなかった。秦・漢代(紀元前221年~220年)以降、開国の君主を補佐してきた人物のほとんどは相術に精通していた。特に有名なのが、三国時代(220~280年)の諸葛孔明と明代(1368~1644年)の劉伯温だ。清代(1616~1911年)中興の名臣・曾国藩も国を治め、兵を治め、家を治め、学問を治めるのに優れ、さらに相術にも長けていて、『氷鑑』という人相に関する本を著し、歴史家から「人の才能と人格をうまく見極め、適材適所で人材を生かした」という評価を得た。

「五官」、すなわち眉、目、耳、鼻、口を観察することによって、通常はその人の性格や考えを基本的に分析することができる。簡単に言うと、「眉毛」は健康と地位を、「目」は意志力と心根を、「鼻」は富と健康を、「唇」は幸福と俸給、対人運を、「耳」は寿命を表している。例えば「獅子鼻」(獅子頭のように平たくて小鼻が開いた鼻)は富に恵まれ、「三白眼」(黒目が上に偏り、左右と下に白目が多い)は冷静な性格で、「八の字眉」(八の字のようになった眉毛)は人情深いというように、人に対する初歩的な判断に役立つかもしれない。

 

さまざまな掌紋

 

善行を積み運命を変える

中国伝統の玄学とは、古くは『老子』『荘子』『周易』を解釈・研究することだった。この三つの著作は、生活、科学、実用、文学の角度から読み解き、人類の知恵は本当に優れて複雑であることを明らかにしている。だが、後世の人が深く研究し続けなければ、その深い意味や知恵を理解することはできない。

むしろ逆に、風水や運勢占い、日柄選び、姓名学など日常生活と密接に関係する「術数」の面では頻繁に応用され、世代を重ねて研究と発展が続いている。そのため、現在に伝わる玄学と言えば、「中国術数」という印象しかないようだ。

「術数」に関してよく聞くのは、「一に縁、二に宿命、三に風水」で、一般的にこれらが個人の運命を決める決定的な要素とされている。

「縁」は抽象的な概念で、人と人の世との一種の目に見えないつながりだ。中国人は、説明がつかない事柄を「縁」という字に帰着させることが多い。しかも、まず先に天が定めた縁があり、その後に縁が定めた関係とその発展があり、そのどちらも善縁と悪縁に分かれると考えている。

風水に至っては、さらに神秘的なようだが、もっと具体的だ。「風水を見る」ことは、中国人にとって至極当然のことだ。家選びはまず風水を調べなければいけないし、墓地選びも同様だ。私たち建築設計に携わる者は、いろいろな用途の建物を設計するが、8~9割が風水を考慮している。また、設計コンペで風水師に落札者を決めてもらうこともある。

香港の中国銀行本店ビルは、剣が天に向かって突き立っているようで、隣に立つHSBC(香港上海銀行)は、屋上に大砲型の窓拭き機が装備されている。どれも風水を反映した有名なケースだ。

建築と風水に関する話は非常に多く、いろいろ見たり聞いたりしてきたが、本当に「風水」がないとは私には言えない。ただ子どもたちに教えたいのは、将来自分の家を買ったり建てたりする際、常識はずれの迷信は信じないように、ということだ。考慮すべきは、地勢が南向きで日差しがたっぷり入り、間取りが四角形で、さらに自分が見て気持ちよくて楽しいことが一番大切だ。

「生死有命、富貴在天」(人の生死や富貴は天命によって定まるもので、人間はどうすることもできない)――これは中国人がよく言う言葉だ。人の運命は天が定めるものであるから、それに応じてさまざまな運勢占いが生まれた。どの占いも、悪い事態を避けて縁起の良い方へ進むように導き、今後起こる事を予知し、運勢を良い方に変える策を講じることを掲げている。

私と夫が結婚直前に香港に行ったとき、母のお膳立てで、そろばんを使った占い術「鉄版神数」の継承者で有名な占い師・董慕節先生を訪れた。部屋に入ると、私の前の机には12冊の本が整然と並べられ、董先生は私の生年月日の「八字」情報を基に、漢方薬店でよく見かける大きな木の玉のそろばんをせわしくパチパチはじいた。そして、彼がはじき出した数字に基づいて私がその本のページをめくると、そこに書かれた内容は私の過去と未来を表すというのだった。あの時は若かったので、何か良くない運勢が示されたらどうしようかと、心配で大泣きしたものだ。

そのとき董先生にいただいた運勢表は私の手元に置かれ、もう20年以上になる。当時はドキドキだったが、60歳近くになった今見えてきた占いの本質とは、過去に対しては正確でも、未来に対してはあくまで参考程度でしかない、ということだ。なぜなら、人の世は常に移り変わり行くものだからだ。

運命のことわりの巧妙なところは、まさに「変」の字にある。私がいつも子どもたちに教えているのは、たとえ運命は決まっていると信じていても、悪い事態を避け良い方向に向かう道理を知らなければならないということだ。それに、「運」という字の部首(偏)には「しんにょう」があり、これは動くことを表している。だから運命は自分で変えることができると信じたい。運勢占いにとらわれて自縄自縛に陥ってはいけない。

風水にしろ人相にしろ、どんな占いの結果であっても、その人の日ごろの善行によって運命は必ずプラスに変えられる。だから、私の結論は「善有善報」(良い行いには必ず良い報いがある)で、これは「1+1=2」の算数の理論のようなものであり、不変の法則であり、そんなシンプルな秘密なのである。

 

「鉄版神数」の占いで使われるそろばんやみくじなどの道具

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