茶(二)

2022-03-22 11:14:02

姚任祥=文 

銘茶、高山より出でる 

茶聖・陸羽(733~804年)は、その著書『茶経』で茶を「源」「具」「造」「器」「煮」「飲」「事」「出」「略」「図」の10項目に分類し、解釈している。茶を飲むことのほかに、茶の種類や栽培の技術も、茶を愛する人にとっては最も関心を寄せるところだ。 

茶の種類は大まかに言うと、その色による緑茶、黄茶、紅茶、白茶、黒茶、花茶、青茶と、それに長い年月を経た古木の茶と野生の茶に分けられる。また、製造方法にも違いがあり、発酵度の違いで見ると、発酵させない緑茶、一定期間発酵させた半発酵の青茶、完全に発酵させた紅茶の3種類にまとめることができる。 

茶を好む人は、よくその知識を自慢したがる。名称から産地、特別な茶の名称、茶木の品種、さらには茶畑の緯度まで……。だが、これら基本的な知識を理解し、どの茶か飲み当てることができてやっと入門レベルだ。 

この一段上のレベルでは、茶摘みの季節から始まり、以下のような各製造工程を詳しく理解する必要がある。 

▽萎凋 摘んだ茶葉を広げ、水分を飛ばして葉をしおれさせる 

▽殺青 茶葉を加熱し発酵(酸化酵素の働き)を止める(この間、発酵や温度のコントロール、太陽熱の利用、水分量、化学変化も理解しなければならない) 

▽揉捻 上から圧力をかけて茶葉の水分をもみ出し、茶の成分を出やすくする 

▽渥堆 茶葉にカビなどの微生物をつけて後発酵させる(茶種によっては再度の揉捻や焙煎が行われる) 

▽悶黄 渥堆よりも軽く発酵させる 

▽転色 茶葉を充分に発酵させて色を落ち着かせる 

――そして最後に乾燥などの工程となる。だが、これらを理解しても、まだやっと半人前といったところだ。 

さらに高いレベルでは、茶葉の形、色合い、香り、味、産地などを評価・判定できてこそ、本当に茶を知る人と言える。 

  

著者が集めたさまざまな茶葉。奥の碁盤の上に置かれているのは各種の緊圧茶。中国人は昔から、茶葉の運送と保存、湿気防止のため、渥堆、蒸す、圧力を加えるなどの方法で茶葉を円盤状や球状に圧縮加工してきた 

  

私には、茶道を熱愛する友人が多くおり、こうした人たちとお茶の見学や勉強をする機会にも恵まれている。中でも、最も印象的で意義深かったのは、300人余りもの茶の愛好家たちと一緒に台湾の阿里山に上り、茶農家で茶会をしたときの体験だ。これは、世界で一流の茶を栽培している農家の人たちに、感謝の気持ちを表すために催された活動だった。また、農家の人たちに、私たちがいかに心を込めて阿里山の銘茶を味わっているか――ということを知ってもらいたかったこともある。 

現地の村人と、都会から来た人を合わせて、総勢450人ほどが三々五々、茶農家に宿泊した。主催者はあらかじめ各農家に行き、茶会に必要な準備と雰囲気を整えるのを手伝った。それから参加者は順番に農家を訪れ、お茶を味わった。 

素朴な茶農家の人たちは、自分たちがどのように茶を栽培するのか話すのを遠来の客たちが静かに聞き、お茶の香りを楽しみ、味わい、論じ合うのを見て、都会の人たちの落ち着いた生活に対する追求を理解した。また、茶の栽培・製造にかけた苦労が、愛好者たちから茶農家への慈しみと尊敬に変わったことも、今回の活動を通して初めて知った。実に楽しい交流会だった。 

翌朝、都会から来た人たちが目を覚ますと、茶農家の人々はすでに茶畑へ仕事に出掛けた後で、家には誰もいなかった。外に出ると、霧が山を取り巻いていて、今にも仙人が出て来そうだった。仙人が住む所には霊気が宿る。この幸運な霊気に恵まれた土地と人々が作り出したお茶は、もちろん最高の味だ。 

  

茶席を楽しむ 

私は、友人の宝玲さんの家でお茶を飲むのが好きだ。宝玲さんは多くの催しで裏方を務めているが、とても謙虚な人で、私たちが彼女の入れたお茶を褒めても、「誰々さんの入れるお茶はもっと上手よ」と言う。同じお茶でも、入れる人が違うと全く異なる境地を醸し出す。お茶を味わうその時、実はお茶を入れる主人その人も「味わう」対象になる。お茶をじっくり味わえるお宅に招かれるのは実に幸せなことだ。そこでお茶を楽しむと、雑念が一掃されて心が落ち着く。 

茶に関する学問はたいへん奥深い。だが、近年、台湾で流行している「茶道」はわりと気軽なもので、多くの人々を魅了している。 

私たちが友人と食事をするとき、誰もがおしゃべりに夢中になる。愚痴や自慢、批判に議論……にぎやかな食事から帰って来ると、たくさんの新しい情報を得ているが、同時に雑念も増えてしまう。 

しかし、友人と茶会でお茶を楽しむ時、座禅のように落ち着いた幽遠な雰囲気の茶席であれば、静かに沈思する気持ちになり、気分が静まるのを感じるとともに、おのずと声のトーンも下がっていく。これは現代人の心を癒やし、くつろいだ雰囲気を楽しむのにふさわしい活動と言えるだろう。 

日本の茶道のルーツは中国にあり、天台宗の開祖・最澄(767~822年)らが中国で仏教を学んだ際に茶の種子を日本に持ち帰ったとされる。日本の茶道は、礼儀作法に厳格で雰囲気が重く、時としてお茶を味わうという気軽な雰囲気が失われてしまう。お茶を気楽にたしなむことができないのは少し残念な気もする。 

台湾の茶席は、お茶をたしなむだけではなく、あるテーマでイベントも行う。例えば書道作品の鑑賞、読書サロン、中国の伝統的な弦楽器・月琴や伝統音楽・南管の演奏会などで、そうした場に招かれる人も名家ばかりだ。茶会に参加する人たちは、お茶を楽しむ以外に心に得るものが多い。 

  

宋の徽宗皇帝(1082~1135年)が描いた『文会図』には、当時の茶席文化が詳細に表されている。絵に描かれた茶を準備する場面から、日本人が現在使う茶の湯を沸かす道具が、宋代と同じこんろであることが見て取れる。日本の伝統的な民家の中には、今でも天井からつり下げられた自在かぎの先にやかんをかける「いろり」が使われている。この絵でも、忙しく茶会を準備する様子が描かれている。茶をたしなみ交流することは、古くから伝わる文化的な行事だ(台北故宮博物院所蔵) 

 

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