「十五・五」が日本にもたらすチャンス

2026-03-04 10:09:00


025年は「第14次五カ年計画」(以下、「十四五」と略)の最終年だった。この5年間、中国は「新たな質の生産力」の育成や研究開発投資の強化、ハイレベルの対外開放などに力を入れてきた。 

しかし、「十四五」期間の前半は新型コロナウイルスによる衝撃があり、後半は米国の経済制裁による衝撃があった。 

それにもかかわらず、中国企業はイノベーションを着実に進め、各分野で大きな世界シェアを持つようになっている。とりわけ、太陽光発電パネル、ドローン、電気自動車(EV)、リチウム電池、造船、鉄鋼などの分野では圧倒的なシェアとなっている。また、ファーウェイ(華為)やシャオミ(小米)やDJIなどの中国のハイテク企業の製品は、世界のどこにも比肩する製品が見当たらないほどの高品質だ。 

極めて困難な環境の下でもイノベーションを進められたのは、中国の企業経営者が旺盛な「アニマルスピリッツ」を持続しただけでなく、イノベーションを支援する国家体制が「十四五」によって整えられていたからだ。 

「十四五」は、世界経済が最も困難であった時期と重なった計画期間に、中国経済が新興経済から先進経済へ移行するための重要なステップを進めるのに貢献したと言えるだろう。 

「十四五」に基づいて、近年、ハイレベルの対外開放を推進している。これは日本経済日本企業に大きなチャンスをもたらしている。 

日本は国内市場が飽和している上に、国民の実質所得が漸減傾向にあり、日本企業は国外市場に進出することに活路を開くしかない。 

しかしながら、米国は自由貿易体制から一方的に離脱し高関税によって輸入を抑制するようになっている。さらに、米国が一方的に課した「相互関税」を引き下げてもらう代償として日本は5500億(約85兆円)を米国内のトランプ大統領が指定するところに投資させられ、投資の利益は、みなし配当額に達するまでは50%、その後は90%を米国側が取るという屈辱的な協定を結ばされている。 

そのため、米国市場から静かに撤退し中国市場へシフトすることが、日本企業が生き残るために不可欠の選択肢となっている。 

従って、中国がハイレベルの対外開放を推進することは、日本企業が長年培ってきたノウハウを活用して中国市場を開拓する可能性を大いに高める。 

とりわけ高齢者が、介護が必要になっても住み慣れた地域や住まいで尊厳ある自立した生活を送ることができるように質の高い保健医療福祉サービスを提供する事業などは、高齢化先進国である日本で培われたノウハウを活用して日本企業が中国で事業展開することが期待される。 

昨年10月下旬に行われた中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(第20期四中全会)では、「国民経済社会発展第15次五カ年計画の策定に関する中共中央の建議」(以下、「十五五に関する建議」と略)が審議採択された。その中において私が最も注目しているのは、「各種の経営主体の活力を十分に引き出し、要素の市場化配分体制メカニズムの整備を加速し、マクロ経済ガバナンスの効果を高めなければならない」と言明していることだ。 

中国経済は、市場経済の未整備による資源配分の非効率性によって景気の回復が遅れていると考えられる。すなわち、労働、資本そして土地などの生産要素の市場化が未整備のままであり、多くの要素が無駄に使われ、あるいは、全く使われないでいることが、景気回復を遅らせていると考えられる。 

これらの生産要素を効果的に配分し、流通させる制度仕組みを整備することは、中国経済が長期停滞に陥り日本のように「失われた十年」を繰り返すことを避けるために不可欠であると考える。 

この点を「十五五に関する建議」は明瞭に意識しており、関連する改革が5年以内に成し遂げられることを期待する。 

また、「第20期四中全会公報」において「地方政府の債務リスクを積極的かつ慎重に解決しなければならない」と言明していることにも注目している。 

日本は1990年のバブル崩壊の後、民営銀行の債務リスクの解決に積極的に取り組まなかったことでリスクを拡大させてしまい、最終的には外国資本に買収させるという慎重さを欠いた解決に追い込まれた。 

「積極的かつ慎重に」は極めて困難な姿勢だ。しかし、中国の叡智を結集して日本の苦い経験を教訓とし、地方政府の債務リスクを解決することを期待している。 

「十五五に関する建議」はそのほか、中国が多国間貿易体制を守ることを言明している。自由な多国間貿易こそ日本経済が存立する基礎だ。今や米国は多国間貿易体制の秩序を破壊することを国是としており、日本は中国と協力することによってだけ自由な多国間貿易体制を維持することができる。中国にとっても、日本という相対的に大きな市場を含む多国間貿易を維持することは、長期の利益となる。自由な多国間貿易を維持するという点で日本と中国との協力に新たな可能性が開かれる。 

また、「十五五に関する建議」は、「清らかな水と緑豊かな山々はかけがえのない財産であるという理念をしっかりと確立し、実践しなければならない」とし、「炭素排出量の削減、汚染の削減、緑化、経済成長をバランスよく推進する」と言明している。この理念は日本が完全に共有できるものであり、炭素排出量や汚染の削減は日本が長らく取り組んできたことだ。 

米国は大統領が自ら国連総会で地球温暖化を「世界市場最大の詐欺」であると罵倒して脱脱炭素を唱え、化石燃料の採掘拡大を叫ぶありさまだ。日本と中国とが率先して脱炭素を推進することは、地球温暖化対策の要となる。脱炭素を推進するという点で日本と中国との協力に新たな可能性が開かれる。 

駐大阪中国総領事館の招待で昨年9月に中国西部を視察させてもらった際に訪れた青海省海南チベット(蔵)族自治州の太陽光発電産業パークでは、砂漠に太陽光発電パネルが見渡す限り設置された総容量が934万㌔㍗に達する設備を用いて、太陽光発電のイノベーションが進められていた。青海省海南チベット族自治州で発電された電力は、東京から那覇への直線距離に匹敵する1563離れた河南省の駐馬店へ、800の超高圧で直流送電されており、いずれ1900以上離れた広東省へも送電されると説明された。 

青海省の西寧市で開催された座談会では、最も先進的なタワー式集中型太陽光発電基地が紹介された。タワーの周囲に反射鏡を同心円状に何重にも配置し、常に太陽光をタワーの頂点に集中させて発電するシステムで、合計で年間3642万㌔㍗時の発電を計画しているとのことだった。このタイプの基地を甘粛省敦煌の郊外を走るバスの中から実際に目撃した。 

中国で進むクリーンエネルギー革命に日本企業が貢献する余地は充分にあると考える。 

人民中国インターネット版

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