海南自由貿易港建設で対外開放拡大
中国の海南島は昨年12月18日、全島を挙げて自由貿易港となりました。より正確に言えば、海南島全島を関税ゼロとする「封関運営」が開始されました。
「封関運営」という言葉は、パンデミック期における都市のロックダウンを連想させやすいためか、この措置は必ずしも正しく評価されていないように思われます。封関運営とは海南島を閉鎖することではなく、中国の中に「海外に近い制度運用空間」を意図的に組み込むものであり、企業に対して、生産工程、調達先、在庫配置を海南島へ移転するかどうかを判断するための合理的な制度的選択肢を与えるものです。
さらに、海南島が全島を挙げて自由貿易港となったことは、中国経済にとってのみならず、日本を含むアジア経済にとっても大きな意義を有しています。ドバイ、シンガポール、中国香港といった自由貿易港の成功事例から考えると、圧倒的な地理的優位性と高水準の対外開放とを組み合わせることが不可欠であると言えます。

習近平主席が「海南島が中国の特色ある自由貿易港の建設を段階的に模索し、着実に推進することを支持する」と宣言してから7年目に当たる昨年4月の時点で、海南島に投資する国・地域は158に達し、新設外資系企業数の年平均成長率は57%、実行ベースの外資導入額の年平均成長率は36%に達しました。海南島が全島を挙げて自由貿易港となったことで、海南島への外国投資は今後さらに加速すると考えられます。
海南島は広東省の南に位置し、中国で2番目に大きな島であり、世界経済の物流の動脈に面しています。陸地面積は3万5400平方㌔とされており、中国最大の島である台湾島の約97%に相当します。また、その面積は日本の東京を含む関東地域とほぼ同規模であり、日本の福岡を含む九州の約84%に当たります。
また、海南島は台湾と比べて高低差が少なく、有効に利用可能な面積は日本の関東地域や九州よりも多いと考えられます。2024年末時点の常住人口は、前年より5万1000人(約0・49%)増加した1048万3100人であり、日本の九州の約84%に相当します。人口が今後さらに増加する余地も依然として大きいと言えるでしょう。
海南自由貿易港において特に注目される開放措置は、輸入品に対する輸入関税のみならず、輸入段階で課される付加価値税および消費税を免除する「ゼロ関税」政策です。
この措置により、海南島に進出した企業は、島内で生産活動を行う際に必要となる部品や素材の輸入コストを削減することができます。海南島はアジアの生産ハブとなる可能性を有しています。
一方で、いわゆる「タックス・ヘイヴン」となることを回避するため、海南自由貿易港に登録し、かつ実質的に運営を行っている奨励類産業企業に対しては、15%の軽減税率で企業所得税を課すとされています。
このようにして、ペーパーカンパニーが法規に違反して税制優遇政策を享受することを防ぎ、業界的・システム的な租税リスクの発生を回避する仕組みが設けられています。
その一方で、高度な技術やノウハウを有する企業を誘致するため、海南自由貿易港で勤務するハイエンド人材および不足人材を対象に、個人所得税の実際の税負担額が15%を超える部分については、個人所得税を免除するとされています。
具体的には、事業面では、主要な生産経営拠点が自由貿易港内に所在していることが求められ、管理面では、生産経営について実質的かつ全面的な管理および支配を行う機構が自由貿易港内に置かれていることが必要とされています。すなわち、生産経営上の意思決定(計画、統制、査定、評価など)、財務上の意思決定(借入、貸付、資金調達、財務リスク管理など)、人事上の意思決定(任命、解任、報酬など)が、自由貿易港に設立された機構によって行われ、または実行されることが求められています。
給与・賃金の支給は自由貿易港内で開設された銀行口座を通じて行うこととされており、自由貿易港に183日以上駐在する人数については、従業員数が10人の場合は3人、10人超100人未満の場合は総人員の30%、100人以上の場合は30人と定められています。これは、代表者1人が183日以上駐在することのみを求めるドバイと比べてはるかに厳格であり、海南自由貿易港を単なる資産の逃避先としないための措置であると考えられます。実際、生産経営機能を備えず、中国本土の業務に対する財務決済、納税申告、発票(税務証明書)発行などの機能のみを担う純粋な決済センターは、海南自由貿易港に登録することができません。
海南自由貿易港が日本およびアジアにもたらし得るチャンスは非常に大きいと言えます。日本やアジアの企業が海南島に進出し工場を建設すれば、「ゼロ関税」措置によって、部品や素材を輸入するコストを世界で最も低い水準の一つにまで抑えることが可能となります。
すでに海口市に所在する航空機メンテナンス産業基地は、多くの検査や申告手続きが省略されていることにより、多数の受注を獲得しています。メンテナンス用航空機材料の輸入が「ゼロ関税」措置の対象となれば、メンテナンス費用はさらに低下し、同基地の競争力はいっそう高まるでしょう。
海南自由貿易港における「封関運営」など、中国が現在推進している高水準の対外開放は、対象地域が限定されているとはいえ、その地域が相対的に広大であるため、大きな経済効果が期待されます。また、「『一線』開放、『二線』管理、島内自由」という原則に基づき、海南自由貿易港で生産された商品を本土へ移出する際には、輸入規定に従って関連手続きを行い、法令に基づき課税されます。これにより、本土の既存産業を適切に保護しつつ、産業転換のための時間を確保することが可能となります。
米国をはじめとする保護主義および一国主義が強まる中で、中国が高水準の対外開放を推進する意義は非常に大きいと言えます。
中国は、購買力平価で換算した国内総生産において米国を上回る世界最大の経済大国であり、世界経済成長の約3分の1を担っています。その中国が高水準の対外開放を推進することは、中国自身にとって利益となるだけでなく、中国を主要な貿易相手国とする各国にとっても利益となります。
また、中国が高水準の対外開放を推進することは、世界各国に対し、米国への経済的依存を軽減する機会を提供します。
さらに、高水準の対外開放を推進する中国との貿易および対外直接投資が拡大することは、人民元の国際化と相まって、各国が米ドルへの依存を低減する、いわゆる「脱ドル化」を進めることを可能にします。
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