活況「ライブコマース」の明暗

2020-03-26 16:46:08

鮑栄振=文

ライブコマース(1)時代到来

 

 筆者の友人の女性は、毎日のようにモバイル向けの短編ビデオサービスのTikTok(抖音)で、芸能人や網紅と呼ばれるインフルエンサー(2)(ネット有名人)のライブコマース番組を見ている。ライブコマースとは、ライブ動画を見ながらネット上で買い物ができる、新たな配信型eコマース(電子商取引)だ。

 

 昨年9月に発表された『2019インフルエンサー電子商取引実態発展白書(3)』(《2019网红电商生态发展白皮》)でも、「インターネット上で影響力のあるコンテンツの作成者が、コンテンツを通し、または電子商取引プラットフォームで、ユーザーに商品を勧め販売すること」と定義されている。

 

 網紅が番組内で洋服や口紅、スイーツなどの商品を紹介すると、前出の彼女は購買欲を抑えきれず、その場で商品を注文する。本人は、「番組の雰囲気に流されて、つい衝動的に買ってしまう。急がないとすぐに品切れになる気がして」と話す。網紅はビデオカメラとマイク、パソコンだけで、かくも魅力的?な買い物体験を視聴者に提供している。

 

 これまでの網紅は、フォロワー数や「いいね!」の多いことが影響力の強さの証だった。しかし最近では、どれだけ商品をさばけるかという点が、網紅の影響力を測る新たな基準になっている。その主戦場となるのがライブコマースだ。

 

 昨年は、大手EC(電子商取引)運営会社が次々にライブコマースサービスを打ち出したため、「ライブコマース元年」と呼ばれた。アリババ・グループが運営するECモール「天猫」(T_mall)の昨年の双十一(ダブル11)セールは、売上総額が2600億元を超え、このニュースには多くの人が驚いた。これとともに注目を集めたのが、同じアリババの淘宝直播(タオバオ・ライブ)というライブコマースが、売り上げを大きく伸ばしたことである。   天猫が公表したデータによると、淘宝直播は①昨年の双十一期間中の出店数は10万以上②開始から1時間3分で18年の双十一の総売上額を更新③開始から8時間55分で売上額は100億元を突破――ということで、確かに驚異的である。

 

 

ライブコマースの女王と王子

 

 ライブコマースに出ている網紅たちから、「ライブコマースの達人」と呼ばれる人々も現れてきた。そのうち特に人気があるのは、「ライブコマースの女王」こと薇婭さんと、「口紅王子」の異名を持つ李佳琦さん(男性)だ。18年の双十一、薇婭さんは最終的に3億3000万元を売り上げ、李さんはたった5分間で1万5000本もの口紅を売りさばいたという。   冒頭で紹介した筆者の友人によれば、李さんはとにかくすごいと言う。李さんのライブコマース番組では、たった5分間でフェイスパック9万箱が売れるという。毎日多くの会社が李さんの元を訪れ、山のように商品サンプルを提供する。李さんはその中から販売する種類と量を決め、会社は言われた通りに商品を準備する。果たして、李さんは準備された商品を数分で売り切り、会社は巨額の利益を得る。李さんが「これを買おう」という魔法の言葉を口にすれば、画面の向こう側では驚くほど多くの女性視聴者がためらわず購入ボタンを押す。  
  薇婭さんも負けてはいない。薇婭さんと某有名企業とのタイアップ配信では、4000点余りの商品が一瞬にして売り切れ、売上高は1秒で100万元を超えたという。

 

 

ライブならではの失敗も

 

 こうした達人たちも時には失敗することがある。

 

 昨年10月、李さんがライブコマース番組内で、ある鉄製フライパンを販売した時のことだ。李さんが「このフライパンは安くて実用的、さらに焦げ付かないんです」と紹介すると、アシスタントが卵を割って過熱したフライパンに落とした。この後、本来であれば卵をひっくり返し、両面がきれいに焼けた目玉焼きが出来上がり、続く李さんの「これは良い」の一言で注文が殺到するはずだった。ところが予想外のことが起こった。

 

 アシスタントがフライパンの目玉焼きを返そうとしたところ、くっ付いて離れないのだ。まずいと思った李さんが自分でもひっくり返そうとするが、何度やってもうまくいかない。李さんは、「このフライパンはくっ付きも焦げ付きも起こりません。いい品物なんですよ」とその場を取り繕おう(4)とする。しかし視聴者からは、「どこがくっ付かないの?」「やっちゃったな」といったコメントが殺到。このライブコマースは大失敗に終わった。

 

 もしかしたら、こうした結果になったのは、フライパンの品質に問題があったのではなく、李さんやメーカーが後で釈明したように、使い方が悪かったからかもしれない。新しい鉄製フライパンは普通、水を入れて数分間温めたり、から焼きして表面に油を塗るといったならしをする。これで初めて焦げ付きにくくなるのだが、番組ではこの油ならしをせずに卵を入れたため失敗したらしい。

 

 これとは別に、ライブコマース業界全体を見渡してみると、その隆盛の背後には偽情報(5)や粗悪品がはびこり、消費者の権利が絶えず脅かされている現状がある。

 

 

インフルエンサーの法的責任

 

 ライブコマースというビジネスモデルは誕生からまだ間もないため、現行の法規にはライブコマースに直接言及した規定はない。ライブコマースを行うインフルエンサー自身も、どのような法規制を受けるのか、どのような法的責任を負わなければならないのか、よく理解していないようである。

 

 法律専門家の間では、ライブコマースは広告活動に該当するため、「広告法」の規制を受けるとする見方が主流である。またインフルエンサーは、「電子商取引法」にいう「プラットフォーム内事業者」や、「消費者権益保護法」にいう「事業者」に該当する可能性もある。後者の場合には、さらに「不正競争防止法」など関連法規の規制を受け、市場を監督・管理する機関などによるチェックの対象となる。

 

 インフルエンサーがやりがちなのは、前述の李さんのように実際の商品(状況)と異なる説明をすることだろう。これは虚偽宣伝というれっきとした違法行為だ。違法行為があった場合、インフルエンサーは法的責任を負わなければならない。具体的にどの程度の責任を負うかは、インフルエンサーの法律上の位置付けや負う責任の種類(民事責任か行政責任か、それとも刑事責任か)によって異なる。しかし、いずれにせよ責任が追及される恐れがあることを心に留め、出演すべきだろう。

 

 

1商直播 ライブコマース

 

2公众人物 インフルエンサー

 

3白皮 白書

 

4 その場を取り繕う

 

5虚假信息 偽情報
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