「烏魯木斉中路」のねこ

2018-03-01 14:20:36

文=萩原晶子 写真=長舟真人

 

 ここ3年、烏魯木斉中路のねこたちを観察している。人や店舗の入れ替わりが早い上海だが、烏魯木斉中路は安定して昔ながらの雰囲気を保っている通りだ。八百屋、惣菜屋、雑貨屋など創業2030年クラスの店が多く、見かけるねこたちも3年前から顔ぶれがほぼ変わっていない。

 復興西路との交差点から五原路の交差点までの、約150mの区間に店番ねこがいる店舗は5軒ある。店先にいない場合、店員にたずねると「まだ出勤時間じゃないから」「今日は友達のところに遊びに行っている」など、いろいろとねこたちの都合や予定を教えてくれる。

「六順雑貨店」の咪咪。お客さんと真剣な顔で遊ぶ

 この日に会えた一匹目は、野菜や調味料を売る「六順雑貨店」(276号)で店番をしている咪咪(推定4歳)。烏魯木斉中路を通りがかった人がよくSNSに写真をアップしているねこで、客が来るとさっと奥から接客に来てくれる気さくな性格と、曲がったしっぽ、低い声が特徴だ。

「光輝水果大買場」。烏魯木斉中路はフランス租界エリアの台所的ストリート

 二匹目は、くだもの店「光輝水果大買場」(318号)の灰灰(7歳)。高級感あふれるグレーの長毛種だが、性格は気高そうな雰囲気の見た目とは真逆。いつも店員のおじさんに寄り添って店番をしている。かまってくれる客がいれば、その人から離れなくなってしまうほどの人懐こさだ。普段の住処は陳列棚の下である。

「光輝水果大買場」の灰灰

庶民的なくだもの店にミスマッチな高級感

 リード付きねことして有名なのが、河南ラーメンや水餃子の店「紅焼牛肉麺」(265号)にいる灰灰(3歳)だ。この店は24時間営業だが、灰灰の出勤時間は昼前から夕方まで。人通りの多い路上で見張りなどの活動をしている。雨の日はリードなしの状態で店内におり、のんびりと接客をしている。

河南ラーメン店の灰灰。寒い日はキャリーバッグのなかから行き交う人や犬を見張る

 どのねこも、近所の常連客みんなに名前を知られかわいがられている。いてもいなくてもねこの話になるし、初めて訪れた客はねこをきっかけにその店や、近所の人と交流できる。昔ながらの商店街のねこは、店番だけでなく近隣住民の横のつながりを作る役目も果たしている。

 

烏魯木斉中路

復興西路〜五原路間

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