「巴金故居」のねこ

2018-04-28 15:14:48

 

文=萩原晶子 写真=長舟真人

 

 作家・巴金が2005年まで暮らしていた武康路の民家が記念館として公開されている。この庭に、3匹の三毛猫が飼われている。名前は二咪、飯団、三宝。どれも7歳のメスだ。

気候のいい時期は庭で日向ぼっこをしている 

 

 巴金がねこを飼っていたという資料はない。代表的なエッセイ作品『随想録』に出てくるのは犬だけである。だが、記念館のスタッフによると巴金は確かにねこを飼っていたという。近所の人や家族からも「三毛を飼っていた」という証言があったため、2011年の記念館オープン時に3匹の三毛の保護猫を引き取ったのだという。しかし、門のところにいる警備員や庭掃除の人に話を聞くと、「巴金が飼っていたねこの子孫だと思う。毛皮の柄を見ても明らかだろう」などという人もいる。「巴金の死去時にもねこはいましたか?」「そのときのねこはどこかに引き取られたんですか?」「飼っていたとしたら、日記やメモ程度でも名前が残っていたりはしないのですか?」などの質問を学芸員にしてみても、「わからない」「ないと思う」とのことだった。

故居の警備員が食事などの世話をしている

「名前はどれがどれだかわからない」と警備員。色の濃い2匹(写真)と、薄い1匹がいる 

 

 とにかく、上海のねことしてはいちばんいろいろな由来があって、謎めいた存在のねこたちなのである。

 3匹のねこたちの住処は、「巴金故居」の玄関に設置されたねこ用ベッドだ。昼間は庭を自由に散策している。見学客とは付かず離れずの距離を保っているが、撮影には応じてくれるため、観光客たちの人気者になっている。敷地内の案内板には、巴金よりもねこの写真が大きく掲載されていたりする。飼っていたという資料もなく、作品にもねこは登場しないのに、だ。

子供たちにも人気。入場無料なので、近所の人の散歩スポットにもなっている 

中国各地から観光客がくる。ねことしては有名なほう 

 

 「巴金故居」は入場無料。これからの散歩シーズンにはぴったりの、上海を代表するねこスポットである。

 

巴金故居

上海市武康路113

2005年まで巴金が暮らした家。家電やキッチンもそのまま残っている

 

 

関連文章