「中国の統治」解読(1) 紀元前から続く「大一統」とは?

2020-08-17 14:48:20

潘岳=文

 中国共産党第19期中央委員会第4回全体会議(四中全会)が昨年102831日に北京で開催された。会議は「中国の特色ある社会主義制度の堅持と整備、国家統治システムと統治能力の現代化の推進における若干の重大な問題に関する中国共産党中央の決定」を審議し、採択した。この会議と「決定」は将来の中国における制度と路線を確立した。中国の発展と変化は世界に深い影響を与えるだろう。中国の特色ある社会主義の道、ならびに現在進められている国家統治システムと統治能力の現代化を正しく理解すれば、中国の発展の本質を見極められるだけでなく、国際情勢の変化を判断するのにも役立つ。

 そのため本誌は、史学博士で、中央社会主義学院党グループ書記の潘岳氏に寄稿を依頼した。今月号から5回にわたり、文明と歴史、国際的な教訓、実践と模索、長所の分析、世界への貢献など多くの角度から中国の特色ある社会主義の道と制度を解説してもらう。

 

 中華文明の中核的要素は「大一統(全国の統一)」思想だ。この思想は早くも春秋戦国時代(紀元前770〜前221年)に形成されていた。当時の儒家や道家、墨家、法家など各派の思想の奥底には全て「天下はいずれ統一される」と考える傾向があった。「大一統」は数千年間にわたり、中国の歴代王朝が政治的矛盾を解決し、政治的課題に対応し、領土を確固たるものにし、統治制度を整える執政方法と価値理念であり続けた。それは為政者の建国の目標や国家統治の理論だっただけでなく、中国人の心中に根深い思想観念を形成した。

 

今日の社会主義制度にも体現

 なぜ「大一統」が中華民族の文明の本質なのか?

 最初に、「大一統」は集中的で統一的な国家の政治体制を鍛え上げた。中央による統一的指導、国家統一、郡県体制は「大一統」政治の三大要素だ。統一的な中央集権統治体制は広大な国土、広域に分散した多数の人口、多民族社会という中国の実情に合致しており、今日においては、党の指導など中国の特色ある社会主義の根本的な制度を堅持し整備することとして表れている。

 第二に、「大一統」は「多元一体」の中華民族共同体を構築した。中華民族が長期にわたって団結し、散らばらなかったのは、「大一統」思想と統治の実践が途絶えなかった結果であり、今日においては、民族区域自治制度や末端大衆自治制度など中国の特色ある社会主義の基本的な制度を堅持し整備することとして表れている。

 第三に、「大一統」は「包容・和合」という中華文明の特質を体現し、交流と共生の中で多元的な文化を一体化させ、気宇壮大な中華文明を形成した。今日においては、中国の特色ある社会主義文化など中国の特色ある社会主義制度の重要な内容を堅持し整備することとして表れている。

 「大一統」思想があったからこそ、中国は全国の統一および制度の滞りない運行を保証できたのだと歴史が証明している。「大一統」は現在、すでに国家統一と民族団結を維持する中華民族の神聖不可侵の理想と信念にまで発展している。

 

現代に続く八つの制度

 歴史の経験をくみ取り、現実に即して革新し発展させることは、人類社会の進歩の基本モデルだ。「大一統」思想は古代中国に主に以下の八つの制度を形成した。これらは現在の中国による国家統治システムの現代化の推進にとって、依然として貴重な知恵の源になっている。

 一つ目は郡県制だ。中国は秦代以降、郡県を全国の行政区画とし、地方が中央政府の支配を直接受ける中央集権の政治体制を確立した。これは国家統一の維持、ならびに中央と地方の関係や地方統治の改善にとって、参考にする価値がある。

 二つ目は礼法合一だ。中国はいわゆる「儒表法裏(表面上は儒家的で徳治主義だが、実際には法家的で法治主義であること)」を古代に長らく実施した。礼制による統治を原則に、法制を道具にし、礼と法を統一して、道徳を主とし刑罰を補助とした。これは全面的な法による国家統治の推進、ならびに法による国家統治と徳による国家統治の結合の堅持にとって、参考にする価値がある。

 三つ目は科挙制度だ。科挙制度は古代の政治が閉鎖から開放へ、世襲から有能な人材の登用へと転換したシンボルだ。これは現代の中国の行政姿勢改革や幹部の選抜・任用にとって、参考にする価値がある。

 四つ目は監察制度だ。古代中国の監察制度は比較的整っており、中央から地方までの各級の監察機関は一方的で垂直的なつながりを形成し、監察官吏間で互いに監督し制約した。これは国家監察体制の改革深化にとって、参考にする価値がある。

 五つ目は史官(歴史編さんの担当者)制度だ。皇帝に対する史官の独立した評価は、皇帝が歴史の責任を担うことを促し、一歩進んで皇帝が庶民に無限の道徳的責任を担うことを促した。これは公権力の監督強化にとって、参考にする価値がある。

 六つ目は郷賢(郷土の賢人)制度だ。郷賢集団は最も財産や土地、権勢を持つ者で組織されるのではなく、道徳や教養、公共心、名望を備えた者で組織された。これは末端統治や社会統治の整備にとって、参考にする価値がある。

 七つ目は天下が共に秩序があることだ。中国は多民族の統一国家で、辺境に対して中心部とは異なる多様な制度を実施してきた。これは民族区域自治制度と「一国二制度」の堅持と整備にとって、参考にする価値がある。

 八つ目は士大夫の気風の形成だ。中国は時代が変わっても士大夫の「天下を以て己が任と為す」という責任意識、「同に天下を治む」という政治主体意識の強化を等しく重んじてきた。これは共産党員の素養強化と党員幹部陣の構築にとって、参考にする価値がある。

 

中国は56の民族がザクロの実のように結束して中華民族という大家族をつくっている。中国文化もまた各民族の文化によって構成されている(新華社)

関連文章