「中国の統治」解読(2) 西洋と異なる文明の「遺伝子」

2020-08-17 14:48:01

 

潘岳=文

 中国共産党第19期中央委員会第4回全体会議(四中全会)が昨年102831日に北京で開催された。会議は「中国の特色ある社会主義制度の堅持と整備、国家統治システムと統治能力の現代化の推進における若干の重大問題に関する中国共産党中央の決定」を審議し、採択した。この会議と「決定」は将来の中国における制度と路線を確立した。中国の発展と変化は世界に深い影響を与えるだろう。中国の特色ある社会主義の道、ならびに現在進められている国家統治システムと統治能力の現代化を正しく理解すれば、中国の発展の本質を見極められるだけでなく、国際情勢の変化を判断するのにも役立つ。

 そのため本誌は、史学博士で、中央社会主義学院の党グループ書記の潘岳氏に寄稿を依頼した。5回にわたり、文明と歴史、国際的な教訓、実践と模索、長所の分析、世界への貢献など多くの角度から中国の特色ある社会主義の道と制度を解説してもらう。

 

近代以降、中国は国家の富強と民族の振興を求めるために、封建主義制度を自己改良したり、資本主義制度のさまざまな教訓をくみ取ったりして大きな代価を支払ったが、全て失敗に終わった。西洋諸国で成功した一部の社会制度が、なぜ中国では通用しなかったのか? その答えを中華文明の伝統と特質から分析する。

 

国家統一こそ最大のコンセンサス

 中国と西洋諸国の政治体制にあるのは発展段階の差異ではなく、文明の「遺伝子」の違いだ。「大一統(全国の統一)」という政治的伝統の下、中華文明はかねて「合」を強調してきたが、西洋文明は「分」をより重んじている。ローマ帝国解体後、欧州諸国は分裂を重ね、二度と統合しなかった。一方、中華文明の流れは絶えることなく、重大な挫折を経験しても四分五裂することはなかった。その根源は、「大一統」の政治共同体だった。「大一統」は、国土を分割してはならず、国家を乱してはならず、民族を分散させてはならず、文明を途絶えさせてはならないという政治的ボトムラインを形成し、必ず厳守しなければならない最大のコンセンサスが国家統一であると中国が常に見なすことを決定付けた。大中華の解体を代価としたことはこれまで一度もなかった。このため、中国は1840年(アヘン戦争)以降、最も弱かった頃であってもばらばらにならなかった。また、かつてあった300余りの政党や100余りの軍閥のうち、「独立」の旗印を公然と掲げたものは一つもなく、逆に全てが「統一」を追求していた。中国共産党と中国国民党が激しく戦った結果は、まさに中国共産党が全面的な先進性を示したことを表している。特に最も広範な人民大衆の根本的利益を代表することを基礎とし、中華文明共同体の再建に成功し、政治的統一と経済の集中、人材の結合、文化的コンセンサスを実現したからこそ、中国共産党は中華民族共同体の政治の中核になった。

 

民本の伝統が人民民主主義に転化

 中国で現に行われているのは人民民主主義で、これは中国の民本主義の伝統を創造的に転化したものだ。中国に数千年間続いていた民本主義の伝統と比べると、英国が平等な選挙権を実現したのは1928年になってからであり、西洋の現代民主主義の実年齢は92歳にすぎない。西洋の民主主義は「少数が多数を統制する」という代議制民主主義で、選挙を最高のアピールポイントとし、社会のコンセンサスを引き裂き、権力分立および抑制と均衡が拒否型民主主義に変わり、ポピュリズムがはびこり、党派間の争いが絶えない。中国は、「何事も相談でき、みんなのことはみんなで相談する」のであり、人民民主主義の真の意義を顕著に示している。中国共産党は人民を中心とし、人民のために無限の責任を引き受ける。一党が政権を握り、多党が政治に参与する多党協力・政治協商制度は、広範な直接的利益と深い根本的利益を代表する。また、各界の部分的利益と全国各民族・各界の全体的利益を代表し、そして流動的な民意と安定的な人心も代表する。

 中華文明の「均平(貧富の差の緩和)」思想は、西洋の資本主義の私的所有や資本蓄積の思想とも異なる。古代中国の社会は均平精神を尊重し、「大同(公平で平和)」という理想は現代における社会主義の最古の形態だといえる。中国の「寡きを患へずして均しからざるを患ふ」という社会心理は、資本拡大の論理とは完全に異なる。資本主義は私有制を基礎とする生産関係であって、その性質と論理は限りない利潤の搾取と資本の拡大であり、貧富の二極化、土地の買収、業界の独占を必然的に引き起こす。これこそ中華文明の数千年の伝統が反対し、排除してきたものだ。

 

民衆の豊かな生活を市場より優先

 資本主義市場の合理的経済人の思い込みとは異なり、中華文明は正義と利益の循環、「君子財を愛す、これを取るに道あり」という商業道徳精神を唱える。例えば、近代民間経済の開拓者で中国の工業化の先駆者の張謇は、生涯に20余りの企業と370余りの学校を設立し、近代中国における民族工業の台頭、教育事業の発展のために貴重な貢献を果たした。これこそが企業家精神と伝統的な士大夫精神の完全な結合であり、中華商業道徳の精神的核心を十分に説明している。これまで中華文明は、民を養い民に教え、物資を役立たせて生活を豊かにするという目標を上位とし、その下に市場や商業、財産を置いてきた。西洋の自由主義が宣伝する「市場万能主義」「市場社会主義」と全く同列に並ぶものではない。

 価値観から世界観まで、中華文明は終始一貫して「天下」の理念を信奉してきた。資本主義の拡張・排他の文化とは異なり、それは「兼容並包(さまざまな事柄を包容し包括する)」の文化共同体を形成し、「和して同ぜず」の中国の知恵に貢献し、「世界は一家」という人類運命共同体の主張を打ち出した。一方、西洋の覇権国家は依然として市場の独占、あるいは軍事干渉、カラー革命などの「帝国」の振る舞いを踏襲し、現代文明の装いをまとった「覇権世界」をつくり出している。

 このため、西洋の資本主義制度に存在する多くの価値理念と中華文明の間には、遺伝子上の矛盾が存在する。これもまた、西洋の資本主義の道が中国で通わない原因の一つでもある。

 

中国共産党中央と国務院の所在地である中南海の正門「新華門」には、毛沢東が揮毫した「為人民服務(人民に奉仕する)」の文字が掲げられている。これは中国共産党建党の信条であり、中国政府の執政理念でもある(CTRIP

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