「中国の統治」解読(3) マルクス主義と中華文明の共通性

2020-08-17 14:47:40

潘岳=文

 西洋で誕生したマルクス主義は20世紀初めに中国に伝わり、共産主義実現を理想・信念とする中国共産党を生んだ。その後1世紀近い歳月の中で、中国共産党は創造的にマルクス主義と中国の国情を結び付け、人々の解放と国家の独立を勝ち取った。また、民族の復興に向けて絶えず前進し、マルクス主義の中国化に基づく中国の特色ある社会主義の道を切り開くことに成功した。

 

哲学思想や政治理念で結び付く

 マルクス主義は当初、主に民族解放の思想的武器として中国の進歩的な考えを持った人々に受け入れられた。中国共産党も愛国救亡運動と民族解放運動を通じて歴史の舞台に立った。「中華民族」を合い言葉とし、「社会主義」を目的としたからこそ、初めて中華文明の「大一統」(全国の統一)の枠組みを維持でき、社会の繁栄と安定、国家の長期的な太平を実現できた。

 もちろん、マルクス主義が中国に根を張れたのは、資本主義に対する本質的な批判、共産主義の理想社会の素晴らしい描写、革命と権力奪取に対する具体的な指針があっただけでなく、哲学思想や政治理念のレベルで中華文明と相似性があったからだ。例えば、儒家の「格物致知」(物事の道理を極める)とマルクス主義の実践観が互いに結び付くことで、「実事求是」(事実に基づいて真理を求める)の唯物論を生み出せた。儒家の「大同」(平等で互いに助け合う理想社会)「小康」(大同に次ぐ理想社会)理論とマルクス主義の社会発展段階説が互いに結び付くことで、最低綱領と最高綱領が互いに結び付いた政治の知恵を生み出せた。儒家の共同体精神とマルクスの共産主義の理想が互いに結び付くことで、新しい集団主義を生み出せた。従って、中国共産党員が創造的にマルクス主義の中国化を実現できたのは、理論と実践の二つの側面からマルクス主義を指針とし、中華の伝統を批判的に吸収し、両者の相互補完を弁証法的に実現したからだ。

 

北京の中国国家博物館では2018年5月5日から「真理の力―マルクス生誕200周年記念テーマ展覧会」が開かれた。会場ではマルクス主義が中国で広がり、運用され、発展されていった歴史が展示された(新華社)

 

特色ある社会主義の道の原動力

 マルクス主義の統一戦線原理と中華の民本主義の伝統には共通性がある。プロレタリア革命運動の主体は必ず人民大衆であり、人民大衆であるほかないとマルクス主義は考える。中華文明にはもともと「民は惟れ邦の本なり、本固ければ邦寧し」という民本主義の伝統があり、団結できる勢力を団結させ、敵対勢力を分裂させて弱める統一戦線の計略を主張してきた。両者の結合は、なぜどのように統一戦線を組むのかという基本的な問題に答えている。

 マルクス主義の民主観と中華文明の協商・共治の伝統には共通性がある。マルクス主義の民主理論は「民主制の中では、国家制度自体は一種の規定、すなわち人民の自己規定としてのみ現れる」と考える。中華文明には長きにわたる「協商・共治」の伝統があり、上層では君主と宰相が天下を「共治」し、末端では地方の名士が自治を「協商」する。両者の結合は中国独特の協商民主の形式をつくり、「皆のことは皆で話し合う」という人民民主主義の真髄を浮かび上がらせている。

 マルクス主義の政党理論と中華文明の伝統的な政治倫理には共通性がある。レーニンは国家政権において社会主義多党制を実行する構想を初めて打ち出した。中華文明は、さまざまな政治勢力が「協商・共治」し、「大一統」の政治的枠組みを維持する実践の伝統を持つだけでなく、「家国同構」(組織構造で家族と国が共通性を持つこと)の原理に基づいて強大な「権力と責任の一致」という政治責任倫理を形成した。両者の結合は、中国の新型政党制度の基本的特徴である、一党が執政し多党が政治に参加し、執政と政治参加という共治の特徴を際立たせ、指導と協力の有機的な統一を実現したことを説明している。

 マルクス主義の宗教理論と中華文明の政治と宗教の伝統には共通性がある。マルクス主義の宗教観は教会と国家の分離を主張し、宗教が国家行政や司法、教育に干渉することを許さない。中国はもともと「多様なものが友好的に行き来し、政治を主とし宗教を従とする」という政教関係を主張している。外来宗教がどれだけ優勢かにかかわらず、およそ中国に入るには中華文明に融合しなければならない。両者の結合により、中国の特色ある新型政教関係が生まれた。その本質は宗教と社会主義社会が互いに適応する広さと深さを絶えず向上させることだ。その方向性は社会主義核心価値観によって宗教の中国化を導くことだ。

 マルクス主義の新経済政策と中国の経済統治の伝統には共通性がある。マルクスは人が人を搾取する私有制をなくすことを打ち出したが、個人の財産をなくさなければならないとは主張しなかった。レーニンは新経済政策を打ち出し、資本主義の力を十分に引き出して利用し、社会主義の生産発展の環境を整えた。中国には長きにわたる「国家本位」の経済統治の伝統がある。両者の結合の結果、中国は社会主義の経済構造全体における非社会主義的な経済成分の地位を弁証法的かつ歴史的に把握し、公有性を主体とし多種所有制経済の共同発展を堅持する基本的な経済制度を確立した。

 マルクス主義の民族理論と中国の民族統治の伝統には共通性がある。民族の大小を分けず、発展レベルの高低を分けず、一律に平等で、平等の基礎の上でのみ団結を実現できるとマルクス主義の民族観は考える。中国の歴史上の統一王朝はその土地の状況に応じて適切な措置を取り、風俗習慣に基づいて統治する一連の民族統治システムをつくり出し、中華民族の多元一体構造を絶えず強固にし発展させた。両者の結合により、中国の特色ある新型民族関係が生まれ、「民族区域自治制度」が実施された。

 マルクス主義の共産主義構想と中国の天下の理念には共通性がある。共産主義社会は「自由な人々の連合体」で、「真の共同体」だ。中華文明には非常に早くから「修身斉家治国平天下」「万邦を協和せしむ」「世界大同」の理念があった。両者の結合により、「人類運命共同体」という全く新しい国際秩序の理念が生まれ、それによって文明の交流が文明の壁を超越し、文明の相互参考が文明の衝突を超越し、文明の共存が文明の覇権を超越した。

 つまり、マルクス主義は理論と実践の二重の品格を兼ね備えている。マルクス主義と中国の伝統、中国の国情の結合により、中国の特色ある社会主義の道はしっかりした発展の土壌、強力な発展の原動力を持ち、依然として「生きたマルクス主義」になっている。中国の革命、建設、改革、復興の歴史はまさにマルクス主義の中国化の歴史だ。中国の特色ある社会主義の道は理論的法則と実践的法則の高度な統一であり、事実によって証明され、広々とした前途を持つ唯一の正しい道なのだ。

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