「中国の統治」解読(最終回) 共通価値つくる「人類運命共同体」

2020-08-17 14:46:45

潘岳=文

 

 

潘岳 19604月、江蘇省南京生まれ。歴史学博士。中央社会主義学院党グループ書記、第1副院長(大臣クラス)。中国共産党第1719回全国代表大会代表、中国共産党第19期中央委員会候補委員。

 

現在、人類は過去100年になかった世界的な変動に直面している。グローバル化がさまざまな矛盾や対立要因を緊密に結び付け、米国が自国中心主義に基づいて絶えずイデオロギーや経済、文明など多方面の脱グローバル化の争いを引き起こし、ポピュリズムが西洋の国家で氾濫し、はけ口を外部に求めている。中国は中華の伝統的な文明と現代的な統治理念に立脚し、中国の特色ある現代化統治の道から進み出て、「人類運命共同体」の構築を打ち出しており、国際社会共通の論争を解決するため、世界の発展という共通の福祉を促進し、中国の知恵と中国のプランをささげている。

 

各国の人々の利益をつなぐ

資本のグローバル化と金融のグローバル化は国家、境域、民族をまたいだ世界金融における権貴(権力と地位を持つ人)利益同盟を生み出した。しかし、彼らにはより合理的な世界秩序を形成する意思はなく、またそうする力もなく、さらに担うべき世界的な責任と義務を引き受ける意思もない。これは権力と責任の極めて大きな不均衡を招き、身勝手で利己的な保護主義と脱グローバル化の高まりを引き起こした。米国のパリ協定離脱、国連教育科学文化機関(ユネスコ)脱退、国連人権理事会脱退がその実例だ。

習近平総書記は「世界的な観点を確立し、より良く国内の発展と対外開放を統一させ、中国の発展と世界の発展を関連付け、中国の人々の利益と各国の人々の共通利益を結び付ける」ことを打ち出した。この「統一させ」「関連付け」「結び付ける」ことは、まさに「人類運命共同体」の提案する神髄であり、中国の人々と世界の人々が共に発展を推進し、発展を最適化し、発展を持続させる共同体意識を十分に体現している。

世界的な範囲で現れた経済発展の断層、グローバルガバナンスの赤字、文化的な植民と覇権、脱グローバル化の反動は、西洋市民社会の分裂の論理と対抗的な性格に根源がある。これらの苦境から抜け出そうと思うなら、必ず対抗から協力へ、分裂から連合へ、市民社会から共同体へ、資本主義のグローバル化から「人類運命共同体」への転換を唱えなければならない。この共同体は原始的な血縁共同体とは異なり、搾取階級が被搾取階級を統治する見せ掛けの共同体とも異なる。それは共通の生存状況に基づき、生存・発展過程の中で人類の存続に関わり、かつ禍福が互いに寄り添い合っている「運命」を絆とし、共通の切実な利益、価値を巡る立場、思想のコンセンサスを通じ、最も安定した共同体を構築する。「人類運命共同体」は国際社会の領域に向けたマルクスの共同体理論の拡大であるだけでなく、マルクスの「真の共同体」の創造的な発展でもある。

 

「国強必覇」を超越し平和推進

現在、世界的・地域的な安全保障問題が持続的に増加し、過激主義やテロリズムが絶えずまん延し、サイバーセキュリティーやバイオセキュリティーなどの非伝統的安全保障の脅威が日増しに際立ってきている。しかし、西洋の一部の国家はなおも争いを引き起こし、競争を激化させている。中国は「己を推して人に及ぼす(相手の身になって推し量る)」「万邦を協和せしむ」という理念を一貫して尊重し、「国は強くなれば必ず覇を唱える」という西洋の論理を超越し、トゥキディデスのわな(従来の覇権国と新興国の衝突)から抜け出し、平和、発展、協力、ウインウインの時代の潮流を推進することを堅持している。

文明の難局の根本的な原因は単一文明の唯我独尊にある。現代の西洋文明は根強い「文明的優越感」を持っており、弱肉強食のジャングルの法則、「力こそ正義」の実力主義、「敵でなければ味方」の二元的観念をあがめる。こうしたゼロサムゲームの古い思想が現在の世界文明の断絶を引き起こし、現実の中で異なる人種、異なる国家、異なる宗教、異なる階層の間の対立と衝突に変化している。中華文明は永遠に開放的、包摂的であり、これまでいかなる外来文化も拒絶したことがなく、歴史の終点まで進化したと公言したこともない。自国の強弱にかかわらず封鎖せず、学習を放棄しない。いかなる宗教や文化も中国に入ってくると、二つに一つを迫る排他性を弱める。なぜなら、多元と包摂が中華文明の核心的な価値の一つだからだ。

「人類運命共同体」の構築とは、多元的な文明の交流と相互参考を人文的な基礎とし、個人と集団、責任と自由、義務と権利、徳治と法治、道義と利益、自国と世界の関係のバランスをいっそう適切に保ち、それによって真の人類共通の価値を形成することなのだ。

 

2015年9月28日、ニューヨークの国連本部で第70回国連総会に出席し、演説で「人類運命共同体」の構築を世界に提案する習近平国家主席(新華社)

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