中米貿易戦争は科学技術戦争でもある

2018-08-29 16:21:25

胡鞍鋼 程文銀=文

 米国が中国に対し、貿易戦争を起こした。3月22日、米国のトランプ大統領は大統領覚書に署名し、1333品目総価値600億の中国製品に25%の関税を課すと宣言した。その後、中国と米国は折衝により「貿易戦争回避」の協定を結んだが、米国側の態度は一定せず、6月15日にトランプ大統領はやはり340億の商品に対し25%の関税をかけることを決定した。主に科学技術通信知的所有権関連のもので、航空現代鉄道新エネルギー自動車および半導体電信設備コンピューター部品を含み、その金額は中国の対米輸出商品総額の約8分の1に当たる。

 中国の世界貿易機関(WTO)加盟後、米中の貿易赤字は悪化し続けたが、そこまでひどくはない。われわれが国際通貨基金(IMF)のデータ、国連統計部と中国税関データバンクの計算結果を突き合わせてみた結果、中国のWTO加盟後、米中貿易の輸入赤字累計は加速上昇傾向にあることが分かった。従来の方法で推計すると、2015年の米中の商品貿易赤字は、米国の商品貿易赤字全体の29%を占めている。商品貿易の中で輸出付加価値が各貿易国の間で分配されることを考慮すると、実際の米中商品貿易赤字は従来の方法で計算した結果のわずか59%に過ぎず、これは実際の米中商品貿易赤字が米国の全商品貿易赤字のわずか17%を占めるに過ぎないということを意味している。さらに米中サービス貿易の巨大な貿易黒字を考えるなら、米中の貿易赤字全体が相殺されるだろう。米中貿易赤字は米国の統計ほどにひどいとはいえないのである。

 米国は米中貿易のアンバランスを口実に、中国のハイテク技術産業に全面的に攻撃を仕掛け、中国の科学技術イノベーションは脅威にさらされている。新中国成立当初、中国の科学技術発展レベルはとても立ち遅れていた。その後、中国ではいくつかの新興工業部門の発展政策が実施されたが、ハイテク産業を対象とした系統的な発展政策は行われず、航空原子力などの部門がある程度の産業化能力を備えていた以外、ほとんどのハイテク分野は基本的に空白状態にあった。1986年3月に「国家ハイテク研究発展計画(863計画)」がスタートし、正式にハイテク研究開発の序幕が開いた。新世紀に入った後、中国ハイテク産業の発展も加速した。米国国家科学基金会のデータ計算結果によると、中国ハイテク製造業の増加値超過係数は2001年の1344%から14年の9516%にまで上がり、15年には正式に米国を超えた。中国のハイテク製品の輸出超過係数は01年の5315%から08年には15894%と3倍強に増えた。中国のハイテク産業規模の迅速な拡張は米国の憂慮を引き起こした。米国は6月15日に発表した増徴課税リストにおいて、紡績アパレルなどの巨額な米中貿易赤字が存在する業界はリストに載せず、逆に航空機械宇宙、医療設備、測定機器など米中貿易黒字が存在するハイテク産業をリストに追加した。

 貿易戦争によって貿易赤字を解決することはできず、米国の赤字は、米国国内の備蓄率があまりに低い、「ハード資産」がひどく不足しているなどの米国国内の経済のアンバランスが原因となっている。実際には、米国の今回の措置は貿易赤字を解消するためではなく、中国の興起をけん制するためである。1960年代を振り返ってみれば、米国は日本に対し、30年にもわたる「貿易戦争」をスタートしている。日本が自ら米国への輸出や円高を抑えるように努めても、米日の貿易赤字は解決されず、日本は依然として米国の主な貿易赤字国の一つであった。日米貿易戦争で貿易赤字は解決されなかったが、かなりの程度直接的あるいは間接的に日本経済を「失われた20年」に陥れることとなり、これが米国の真の目的であったのかもしれない。

 中米貿易戦争に勝つためには、中国は自主イノベーションを強化し、質の高い発展を実現しなくてはならない。米国の挑発はハイテク発展の量から質への転換を促し、自主イノベーションの道を歩む必要性をより反映しているといえる。規模から見ても、中国の科学技術の発展は極めて速い(ハイテク産業規模、特許申請数などは全て世界1位)。しかし、例えば自主イノベーション能力が強くない、鍵となるコア技術の対外依存度が比較的高い、企業のイノベーション投入比率が高くない、世界著名ブランドに欠ける、産業グローバル化程度が高くない、グローバル企業が多くない、ハイテクとサービス業の融合度合が高くないなど、中国の科学技術の質は依然として向上の余地が大いにある。このため、習近平総書記は昨年の中国共産党第19回全国代表大会の報告の中で明確に、「わが国の経済は、すでに高速成長の段階から質の高い発展を目指す段階へと切り替わっており、発展パターンの転換、経済構造の最適化、成長の原動力の転換の難関攻略期にある」と指摘している。2015年の政府活動報告で正式に提起された「中国製造2025」の計画はまさに質の高い発展の実践を推進するもので、「中国製造」から「中国創造(クリエーション)」へと転換させ、製造業のモデルチェンジグレードアップを実現しようというものである。

 現在の国際競争の鍵は科学技術競争にある。米国がいかに中国のハイテク産業の発展を阻止しようとしても、中国が「中国製造2025」を実現しようとする大志を阻むことはできない。米国が各種の保護貿易主義の手法を取ったとしても、依然としてグローバル化の大勢を阻止することはできない。中国はこれを契機原動力とし、困難をチャンスに変え、全面的にハイテク産業のイノベーション力競争力を向上させるべきである。中国は日本の経験を戒めとし、国内経済を安定させ、着実に供給側改革を推し進め、「過剰生産能力の解消、過剰在庫の解消、過剰債務の解消、コストの低減、脆弱部分の補強」をしっかりと行い、バブル経済のリスクを低減させる必要がある。このほかに、中国は国内国際という二つの市場を十分に利用してさらに科学技術レベルを向上させ、巨大な国内市場を十分に利用しながら、一貫して対外開放を堅持し、国際市場を十分に利用する必要がある。

 要するに、貿易戦争であれ、科学技術戦争であれ、どちらも習近平総書記が言うように、「改革者だけが進み、革新者だけが強く、改革革新者だけが勝つ」のである。

  (本稿は胡鞍鋼教授と清華大学公共管理学院博士課程在籍中の程文銀氏の共同執筆による)

 

 

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