日本の画家を虜にした明清絵画の優品 静嘉堂文庫美術館で公開

2017-11-01 09:53:52

  画像・資料提供=静嘉堂文庫美術館

 日本の室町時代から明治時代に当たる中国の明代と清代に描かれた絵画作品は、伊藤若冲、円山応挙、谷文晁などの名だたる日本画家にも大きな影響を与えた。東京都世田谷区の静嘉堂文庫美術館に所蔵される明清絵画コレクションは、質量ともに国内有数のコレクションとして知られるが、今回は山水画を中心に、沈南蘋(しんなんびん・1682年〜1760年以降)の代表作「老圃秋容図」や、清朝の宮廷趣味をにおわせる華やかな草花の作品など、厳選された名品が展示される。

 沈南蘋は雍正9年(1731)に来日し、1年10か月を長崎で過ごした。その画風は日本国内で大流行し、日本の花鳥画に新風を巻き起こす。今回展示される「老圃秋容図」は、猫がカミキリムシにとびかかろうとする一瞬を捉えており、猫の中国語“mao”が70歳を意味する「耄」“mao”と同音であることから、長寿の意味を持つ吉祥画題として好まれた。  

沈南蘋「老圃秋容図」 清・雍正9年(1731)

  余崧(よすう・生没年不詳)は清朝の宮廷画家だった可能性も指摘されており、作品は日本にも伝存し、江戸後期の史料にもその名がたびたび登場している。  

余崧「百花図巻」(部分) 清・乾隆60年(1795)

 李士達(りしたつ・1540年頃〜1621年以降)は呉県(江蘇省)出身の明末蘇州派を代表する画家で、主に山水や人物を得意とした。濃淡・擦筆(さっぴつ・かすれた筆遣い)、暈(ぼか)しなどの多様な表現によって描かれた「秋景山水図」は、李士達の代表作として高く評価されている。  

重要文化財 李士達「秋景山水図」  

明・万暦46年(1618) 

 藍瑛(らんえい・1585~1664?)は杭州を中心に活躍した画家で、過去の偉大な画家たちの筆法を模した作品を多く残した。本作も画中の款記から、元代の著名な画家で元末四大家の一人である王蒙(おうもう)の筆法にならって描かれたものだということがわかっている。この作品には江戸時代後期を代表する画家・谷文晁(1763~1840)の模本が付属。藍瑛の画風が清代に受け継がれてゆく一方、日本でも多くの画家に受容され、引用されていったことを物語る重要な作例のひとつである。

重要文化財 藍瑛「秋景山水図」 

明・崇禎11年(1638) 

重要文化財 谷文晁「藍瑛筆 秋景山水図模本」 

江戸時代・18~19世紀 

  

 張瑞図(ちょうずいと・1570~1641)は晋江(福建省)の明末の書画家で、「奇想派(エキセントリック)」「変形主義」と評される代表的な画家の一人。「草書五言律詩」はデフォルメされた山々が、うねるように画面上部へと伸び上る構図で描かれている。近年の研究で、円山応挙の『写生雑録帖』(個人蔵)に本作の模写があることが指摘された。応挙の模写では、縮写した画よりも款記が大きく写され、応挙が張瑞図を画家としてよりも書家として評価していたことがうかがわれる。  

重要文化財 張瑞図「松山図」 

明・崇禎4年(1631)  

張瑞図「草書五言律詩」 

明・17世紀  

  

 今回の展示では、王鐸(おうたく)や米万鐘(べいばんしょう)など、明末清初の書跡も特別公開される。また、六本木にある泉屋博古館分館で開催の特別展「典雅と奇想―明末清初の中国名画展」(11月3日~12月10日)との連携企画のため、泉屋博古館分館の展覧会招待券または使用済みチケットを持参すれば200円引きで入場可。(他の割引との併用不可)講演や列品解説などの各種イベントも用意されている。

 あこがれの明清絵画 〜日本が愛した中国絵画の名品たち〜 概要 

 場所:静嘉堂文庫美術館 東京都世田谷区岡本2-23-1

   http://www.seikado.or.jp 

  〈展示期間〉2017年10月28日(土)〜12月17日(日)

  〈入館料〉一般1,000円 大高生700円(20名以上団体割引) 中学生以下無料

  〈休館日〉毎週月曜日

  〈会期〉10月28日(土)~12月17日(日)

 講演  

  1.「ネコ好き館長による猫の絵画史」 

  11月4日(土) 河野元昭氏(静嘉堂文庫美術館館長)

  2. 「豊かなる明末清初の絵画-倣古と奇想」 

  11月19日(日)板倉聖哲氏(東京大学東洋文化研究所・情報学環教授)

  3. 対談「明末清初の書-連綿趣味の魅力を語る」 

  11月25日(土)髙木聖雨氏(大東文化大学教授)・富田淳氏(東京国立博物館学芸企画部部長)対談

  *いずれも午前11時より地下講堂にて開催。定員120名(午前10時より整理券配布。1名につき1枚限定)

 列品解説 

  *展示室でゲストと館長が展示内容と作品を解説

  11月11日(土)午前11時から

  ゲスト:塚本麿充氏(東京大学東洋文化研究所 准教授)

  12月2日(土)午前11時から

  館長 河野元昭氏

  12月7日(木)と12月14日(木)午後2時から

  館長 河野元昭氏

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