小林義和 中日で補完 コロナ克服へ

2020-08-10 16:01:49

王衆一=聞き手

 

小林義和(こばやし よしかず)

三菱化学控股管理(北京)有限公司董事長総経理

東京理科大学大学院薬学研究科修士課程を修了、1985年三菱化成工業株式会社(現三菱ケミカル株式会社)入社。同グループ企業の田辺三菱製薬株式会社開発本部を経て、2010年5月から田辺三菱製薬研発(北京)有限公司董事長総経理。19年4月から三菱化学控股管理(北京)有限公司董事長総経理。

 

 株式会社三菱ケミカルホールディングスは、日本最大の総合化学会社である。

 同社グループの経営理念などを語るショールーム「 KAITEKI SQUARE」(東京)や、東京郊外にある研究開発部門を何度か取材したことがある。また大阪にある同社グループ企業の田辺三菱製薬株式会社にも何回か足を運んだ。中国が改革開放政策を推進する中、新鋭重化学工業の生産体制を構築する過程で、同社グループ企業の三菱ケミカル株式会社は中国石化などの企業に技術を供与してきた。

 新型コロナウイルスが世界で猛威を振るい、世界各国が全力を挙げて対応している6月末に、同社の中国統括会社である三菱化学控股管理(北京)有限公司の小林義和董事長総経理に話を聞いた。

 

――6月以降、北京、東京ともまたコロナの猛威を感じるようになりました。しかし、中日の対応方法はやはりかなり異なります。

 

 小林義和 中国は、PCR検査による感染者の早期発見と隔離を重視するとともに、強力な行政措置(都市封鎖や水際対策など)を実施しています。一方、日本は医療資源の選択と集中の観点からPCR検査対象を絞り込むとともに、クラスターにおける感染経路の追跡を重視しました。

 新型コロナウイルスの実態が不明な中、各国の措置は試行錯誤が続いています。ウイルスの基本原則において、長期的な視点では致死率が低くなる方向に淘汰がかかるものの、その変異の過程において今後、第2波、第3波が来る可能性もあります。

 

――各国とも薬やワクチンの開発に力を入れています。

 

 小林 現在、レムデシビル、アビガンなどの既存薬の新型コロナウイルスへの転用が試みられています。ただし、もともと新型コロナウイルス治療のために開発された薬ではないため効果には限界があります。一方、ワクチンは早ければ来年にも供給可能と言われていますが、こちらも効果の持続性や供給量に課題があります。まだまだ人類が新型コロナウイルスから身を守る方法は感染しないことしかないようです。

 

――新型コロナウイルスに対しては企業運営も今までとはずいぶん違ってきましたが。

 

 小林 6月現在、日本の本社はテレワークが主体です。本社機能は大部分の業務がテレワーク可能であり、オンライン会議を活用した効率性を実体験してしまった以上、感染が落ち着いたとしても出勤主体のワークには戻れないでしょう。逆に本社からは、中国でもテレワーク化を検討するよう言われていますが、実現にはいくつかの課題があると思います。

 まずは十分なテレワーク環境の確保です。中国における住宅事情を考慮すると、テレワークを行う十分なスペースの確保が難しい社員も予想されます。社員個々の実情に合わせて、出勤とテレワークのバランスを考慮することになると思います。

 次にワークエンゲージメントの強化です。人事制度や評価体系をジョブ型にし、成果に対する評価プロセスを明確にする必要がありますが、労働時間や勤務態度を重視する日系企業が不得意とするものであり時間がかかると思います。

 テレワーク環境が整えば、海外からのマネジメントも可能となり、今回、浮き彫りになった駐在員リスクを軽減することもできます。「withコロナ」の労働環境で最適化した働き方をいかに速く獲得するかが、企業競争力のポイントになると思います。

 

昨年の「三菱友誼杯」争奪障がい者民間サッカー大会決勝戦の後、選手たちに表彰のメダルを渡す小林氏

 

――さらに企業を超えて協力して対応する必要性も出ていますね。

 

 小林 今回、パンデミックという津波に襲われた国際社会は、各国の状況や社会体制に応じて、「てんで(各国ごとに)」に避難している段階です。そして、このフェーズにおいて国際機関である世界保健機関(WHO)の役割は限定的でした。しかし、緊急避難した後は、生き残るために相互協力し助け合うフェーズに移り、国際協調を担うWHOの出番となります。

 中国と日本は感染症予防の経験、ワクチンや治療薬などの研究開発において、高いレベルで補完し合える関係にあります。人類が感染症から生き残るために、両国は国際連携のプラットフォームであるWHOにおいて、世界協調をリードしていく責任があると考えています。

 

――7月以降、帰任されると聞きました。今後中国とはどんな関わり方を考えていますか。

 

 小林 私は2010年に北京に着任し、トータルで10年間の北京駐在でした。着任後8年間は医薬品開発の業務をしていました。最初のあいさつとして社内HPに「田辺三菱製薬の新薬を一刻も早く中国の患者さんにお届けしたい」と書いたことが懐かしく思い出されます。

 帰任後は、三菱ケミカルホールディングスで中国グループ会社の内部統制に関する仕事を担当します。当社グループが提供するさまざまな製品を通して、日中両国におけるコロナ危機の克服など、KAITEKI社会の実現に貢献したいと考えています。

 

編集長のつぶやき

 今回のコロナショックを乗り越えるために、感染防止に役立つ素材やワクチン、治療薬などへのニーズが高まっている。三菱ケミカルホールディングスもこれら分野において、中国で新しい市場を開拓していくだろうと思われる。

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