宮尾康士 デジタル化を中心に事業展開

2022-03-22 10:58:01

王衆一=聞き手 

 

宮尾康士(みやお こうじ) 

理光(中国)投資有限公司董事長兼総経理 

岡山大学卒業、2000年にリコー入社。日本と米国での勤務を経て18年に理光(中国)投資有限公司董事長兼総経理に就任。20年にリコーグループ理事に就任。 

  

上海で昨年開かれた中国国際輸入博覧会で、リコーのブースは多くの来場者を引き付けた。ドキュメント出力管理とITソリューションなどのサービスを提供できる複合機やプリンター、プロダクションプリンター、デジタルカメラ、サーマルメディア、半導体、生産工程可視化システムなどの製品だけでなく、製造技術とITを結び付けた製造業の最新技術を見ることができ、来場者は大いに楽しめただろう。 

新型コロナウイルス感染症が世界経済にもたらした影響は軽視できず、業務効率化のニーズが高まっている。国内経済と輸出の面で中国企業が全体的に成長を保っている現状で、新たなニーズをどう満たすのか。理光(中国)投資有限公司の宮尾康士董事長兼総経理に聞いた。 

  

――北京などの都市では大量に印刷するときには印刷事務所にデータを持って行きます。そこでは大抵リコーのプリンターが目に入ります。 

  

宮尾康士 複合機・プリンターの開発・製造メーカーとして、リコーは1977年にOAという概念を初めて提唱しました。87年には最初のデジタル複合機「IMAGIO320」を発売、業界に先駆けてデジタル化の歩みをスタートしました。 

時代は急速に変化し、ニューノーマルの時代に突入しています。リコーは2020年に「OAメーカーからデジタルサービスの会社へ」という方針を発表しました。私たちの願いは、デジタルの力で、働く人々に新しい価値をもたらすことです。そこから人間らしい創造力を発揮できる時間が生まれ、今までにない新たな価値が創られると信じています。それはオフィスにとどまらず、さまざまな現場へと広がります。 

  

――上海での輸入博覧会を見ると、複合機やプリンター以外にもいろいろ展開されています。 

  

宮尾 中国では、医療水準のばらつき解消を目指し、ヘルスケア産業の情報化が国家プロジェクトとして組み入れられています。CDSS(Clinical Decision Support System)は、人工知能(AI)技術を活用し医学ドキュメントと患者カルテの情報を組み合わせたシステムです。医師の診察・診断の意思決定をサポートすることで、医療水準のばらつき解消に貢献します。現在、中国の30以上の大規模病院や多くの小規模クリニックに導入されています。今後は高いノウハウを持つパートナーとの連携を増やし、応用範囲をさらに広げていきます。 

さらに、全天球カメラRICOH THETAで撮影した360度画像を使って誰でも簡単に高品質のバーチャルツアーを制作・公開できるクラウドサービスもあります。不動産業のバーチャル内見などのバーチャルツアー導入をサポートすることにより、ニューノーマル時代の新しいコミュニケーションを実現します。 

  

――本誌では御社が太陽光発電パネルの保守点検をAIでサポートしていると書いたことがあります。 

  

宮尾 中国の第14次五カ年計画で、省エネとグリーン開発の加速による「カーボンニュートラル」の目標が発表されました。これを受け、リコーは再生可能エネルギーベンチャー企業と提携し、当社の光学技術やAI技術を生かして、大規模太陽光発電プラント向けにドローンを用いたパネル保守点検事業をサポートしています。稼働中プラントの効率改善のみならず、複雑な地形に新たに開設されるプラントの保守点検にも活躍します。 

  

――今後、中国市場での展開はどうなりますか。 

  

宮尾 この2年間、世界経済や市場にはさまざまな変化がありました。その中で中国市場は、政府の強いリーダーシップの下で新たなチャレンジを続け、デジタル技術の発展には目を見張るものがあります。リコー中国は昨年度、過去最高の業績を達成、特に新規デジタル事業セグメントは2倍の成長を実現しました。 

リコーグループは、中国市場のニーズにより合致した製品・サービスを模索するため、昨年に「RICOH Hackathon China」を開催しました。脱炭素、ファインプリンティング、光学イメージング、インテリジェント機器など、リコーが所有する九つのコア技術を広く公開し、参加チームにイノベーションアクセラレーターの支援リソース、本社エンジニアからのアドバイス、賞金、海外交流機会、リソースマッチング、プロモーション協力などの特典を提供することで、多くの中国のパートナーとの協業を広げていくことを狙っています。 

今後もリコーは、デジタル化を中心とした新たな事業展開を強化し、中国パートナーとの協業を深めることにより、中国の持続可能な社会づくりに貢献していきます。 

  

2020年に開催された第3回中国国際輸入博覧会でリコーの展示ブースを見学する上海市政府関係者(写真提供・理光(中国)投資有限公司) 

  

編集著のつぶやき 

中国のOA化と産業のグレードアップにより、リコーのような企業は大きなチャンスを得た。リコーは研究開発では開かれた革新的な方式を採用し、販売では向上しようと懸命に努力しており、その経営と革新は注目を集めている。 

 

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