ずっとお幸せに!

2022-02-23 14:32:25


劉国芳=文

鄒源=イラスト

当初、誰も男に注意を払っていなかったが、男が電話をかけ始めたため、近くの人が彼に注意を向け、彼の電話に耳を傾けた。

「社長、今列車の中で、父親に会いに行くところなんです」「何度も休みをくださいって頼みましたが、許可してくれなかったじゃないですか」「父が病気で、面倒を見に行かなきゃならないんです」

「あなたの会社で仕事をしてもう半年ですけど、給料もくれずに、ずっと未払いのままじゃないですか。同意なしに休んだから、お金を一文たりともやらないと言うのは筋が通りませんよね?」

「未払いの給料を払ってください。父が病気で、金が必要なんです」「どうしてもくれないなら、仕方がない。出る所に出ますよ!」。こう言って男は電話を切り、途方に暮れたような顔をした。

ここは列車の中で、男は窓にもたれかかって座り、彼の向かいには若い男の子が座っていた。男の子の隣が私で、私の向かい、つまり男の隣には女の子がいた。男が電話を終えると、男の子は「あなたの社長は理不尽だね」と言った。

私と女の子は声をそろえて「本当に理不尽すぎる」と言った。

男の子はさらに「こういう場合、訴えるべきです」と言った。私と女の子はまた声をそろえて「そう、訴えるといい」と言った。

続いて男の子が取った行動は意表を突くものだった。彼はお金を取り出すと男に渡し、「ここに5000元あるから、お父さんが病気なら、持っていって使ってください」と言ったのだ。

男は男の子が渡してきたお金を押し返し、「あなたのお金をむざむざ受け取ることはできません」と言った。「いいから、受け取ってください」「本当に大丈夫ですから」

男の子はしばらく考えて、男に言った。「じゃあ、こうしましょう。まずは持っていってください。あなたが給料を手に入れたら返してくれればいい。私の携帯番号をお知らせしておきますよ」

男は少しちゅうちょした。

「もらっておくといい。給料を受け取ったら返せばいいんだから」と私は言った。

「あなたは給料を受け取れるわ。私は法律専攻だったから、あなたを助けることができる」と女の子は言った。

男は迷いを断ち切り、男の子のお金を受け取って、言った。「携帯番号を控えさせてください。お金ができたら連絡します」。男の子は数字を読み上げた。男はきちんと書き留めた。私も書き留めた。

間もなく駅に着いて、われわれは列車を降りた。降りてすぐ、私はこの男の子の番号を自分のWeChat(中国のチャットアプリ)に追加した。とてもいい人で、付き合うに値すると思ったのだ。追加した後、われわれはしばしばチャットをし、間もなく友達となった。

思いも寄らないことに、1年ほど後、われわれ4人はまた再会した。もちろん今回は列車の中ではなく、男の子の結婚式でだった。新婦は列車の中で私の向かいに座っていた女の子で、女の子を見て私は、「もともと知り合いだったの?」と聞いた。

「知らなかったわ」「じゃあ、どうして付き合うようになったの?」と、私はいささか間抜けな質問をした。

「あの日、彼の言った番号を私はこっそり記憶して、WeChatに追加して、口説いてみたの」「最初は彼女からなんだ。でも、後に僕のほうが積極的になったけどね」と男の子は笑って言った。

「ずっとお幸せに!」

あの男についても説明する必要があるだろう。彼は新婦に助けられ、訴訟を起こして、もらうべき給料を手にした。後に彼の父親の病気も治った。この時、男がやって来て、同じく新郎新婦を見て言った。「ずっとお幸せに!」

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