きれい好きな人
羅倩儀=文
鄒源=イラスト
曹峰はきれい好きで、優しく賢い女性と連れ添いたいとずっと思っていた。ある人が繍玫という女性を紹介してくれ、何度か会った後に互いに好感を持ったので、付き合ってみることにした。
この日、曹峰は繍玫の家にお呼ばれした。客間の壁にはバラの花のクロスステッチが掛かっていて、ベランダにはスイセンと菖蒲が植わっていた。見たところ、全てが清潔でおしゃれだった。曹峰は繍玫をますます気に入った。繍玫は曹峰にさらに2部屋見せたが、ある部屋だけは開けて見せることはなかった。曹峰は好奇心を覚えて聞いた。
「そこは客室?」
「ここは……物置部屋なので、お見せするものではないわ」
繍玫は白い顔を赤らめて言った。曹峰はますます好奇心を覚えた。
繍玫がキッチンへ食事の支度をしに行くときを待って、彼はその物置部屋の前にこっそりとやって来た。
この部屋はとても狭く、床にはいろんながらくたが置かれていて、その上にはうっすらと埃が積もっていた。曹峰は周囲を見渡し、右側の壁とその向かいの壁に大きな紙が貼ってあるのを見つけた。曹峰は無意識のうちに近くの壁に貼られている紙をめくり上げてみて、驚いた。壁には男の写真がいっぱいに貼られていたのだ。最後の1枚に写っているのがまさに繍玫の最後の元彼なのだろう。曹峰は彼を知っていた。彼はかつての同級生の友達だった。曹峰は驚いて冷笑した。
「彼女にこんなにいっぱい元彼がいるなんて。家も服も確かにこぎれいだけど、心がきれいではないな」
ちょうどこのとき、曹峰はキッチンで繍玫が呼ぶ声を聞き、慌てて戸を閉めた。
「あなたは鯉の甘酢あんかけが好きって言っていたわよね。でも私、うまく作ることができないの。教えてくれるかしら?」
繍玫は決まり悪そうに曹峰に笑い掛けた。曹峰は心にほろ苦さを感じながら、平静な態度を保って言った。
「いいよ、教えてあげよう」
曹峰は料理しながら、諦めきれずに繍玫に聞いた。
「繍玫、今まで何人と付き合ったの?」。繍玫はちょっと驚いた様子だったが、軽い調子で言った。
「前にも言ったでしょ? 2人よ」
曹峰は繍玫のきれいな白い顔を見つめ、思わず心の中であざ笑った。
間もなく、曹峰は口実をつくり、繍玫と別れた。
次に繍玫に会ったのは、2年後だった。曹峰の顧客が繍玫と結婚し、顧客が彼をお祝いのパーティーに誘ったのだ。そして彼は、曹峰が繍玫と短い間付き合ったことも知っていると笑って言った。そのとき、曹峰は思わず顧客に聞いた。
「あなたは繍玫の物置部屋に入りました?」
「もちろん!」
顧客は何かを思い出したかのように、幸せそうな笑みを浮かべた。
「繍玫はあの部屋の壁の両側に、ここ数年彼女を助けてくれた男性と女性の写真を貼っているんだ」
「え?」。曹峰はそれを聞いて思わず固まった。
「男性の写真が貼られた壁には、あなたのものもあるよ」
「彼女はどうして私の写真を?」
曹峰はわれに返り、黙って頭を下げて、砂糖の入っていないコーヒーをすすり、声を低くして言った。
「何も手助けなんかしちゃいないのに」
「そんなことはないよ」。顧客は笑い出した。
「繍玫は、あなたから鯉の甘酢あんかけの作り方を教えてもらったと言っていたよ。また、あなたはきれい好きなので、あのとき彼女は仕事が忙しくて、物置部屋の整理をする時間がなく、あなたの機嫌を損ねたくなかったって」
曹峰はコーヒーをがぶ飲みした。今の彼は機嫌がとても悪く、砂糖の入っていないコーヒーの味は、そのときの心のほろ苦さにとてもよく似ていた。
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