一緒に食事をしませんか

2022-08-30 12:19:13


周海亮=文 

鄒源=イラスト 

この週末、周小五は3人を食事に誘った。3人のうち2人が彼の上司で、もう1人は長年の友人だ。周小五はレストランの個室を予約し、早々に到着した。 

サービス係が、ここには火鍋のセットメニューがあり、180元、380元、680元という三つのランクがあると説明してくれた。周小五は迷わず680元のものを選んだ。この人たちをもてなすには、なんといってもメンツが大切だからだ。 

周小五は新市街で働いていて、両親はまだ旧市街に住んでおり、実家は遠くないものの、あれこれと忙しく、めったに実家に帰ることはなかった。 

しばらく待っても、誘った人は誰も到着しなかったので、周小五は誘った上司の1人に電話をかけ、どこにいるかを聞いた。上司は電話の向こうでまず驚き、突然気が付いたというような口調で、「あいにく今ちょうど大切なお客さんに呼ばれたところなんだ。重要な用事なので、そちらには行けないよ」と言った。周小五は「大丈夫です、お気になさらずに」と言った。電話を切ると、サービス係を呼び、「セットメニューを380元のやつに変えてくれ、1人来れなくなったから」と言った。 

このとき、もう1人の上司が電話をしてきて、突然トラブルが起きて、家にいて処理しなければならなくなったと言った。周小五は失望したが、仕方なくまたサービス係を呼び、気まずそうに「180元のやつに変えることはできないかな」と言った。サービス係はちょっと気を悪くしたようだったが、周小五はしきりに笑みを浮かべ、「また友達が来られなくなって、無駄にしたくないんだ」と言った。 

残るは長年の友人だ。気の置けない友人同士なので、近所の屋台なら2人で60元もあれば楽しく飲み食いできるのに、こんな食事はちょっともったいないなと周小五は考えた。でももう友人も到着する頃合いだったので、サービス係に鍋の用意をするように言った。しかし意外なことに、このとき、友人が電話をよこし、「体の具合が悪いので病院で点滴を打ってこなきゃならない。申し訳ないが、お詫びにまた後日改めて一杯やろう」と言った。 

周小五はがっかりして、その後、困り果てた。こんなにテーブルいっぱいの料理を一人でどうしよう?持ち帰るか?でも彼の宿舎には調理用のガスコンロすらなかった。 

このとき、また電話が鳴った。父親からで、周小五に「今日は週末だが、家に戻って来るのか」と聞いてきたのだった。 

周小五は「忙しいから帰れない」と言った。 

父は「暇ができたら戻って来なさい。1カ月以上家に戻っていないだろう、お母さんが会いたがっている」と言った。 

周小五はヘヘっと笑い、「本当に忙しいんだ」と言った。 

父は「今どこにいるんだい?」とまた聞いた。 

周小五は「レストランだけど……。ああ、そうだ、父さんと母さんはもう食事した?もし食べていないなら、こっちに来て一緒に食べない?」と言った。 

父は電話の向こうでちょっと驚いて、周小五に「今、一緒に食事をしないかと言ったかい?」と聞いた。 

「そうだよ、言ったよ。父さんと母さんにレストランでごちそうするよ」 

電話を置いてから、周小五は今まで無数の人を数えきれないほど食事に誘ってきたけど、両親にだけは一回もごちそうしたことはなかったことに気付いた。 

両親はすぐにやって来た。どうやらタクシーに乗ってきたらしい。彼らは満面に笑みを浮かべ、息子が突然食事をおごると言い出した理由を全く気にしていないようで、家族は初めて家以外の場所で一緒に食事をし、最低ランクの火鍋セットを食べた。 

周小五は父と母にそれぞれ祝杯を挙げ、酒を飲み干したとき、突然泣き出したいような衝動に駆られた。 

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