古い家

2023-03-13 10:42:00


劉祥平=文

鄒源=イラスト

女には古い家があり、新しい家を買ったら売却するつもりだったが、市況が良くなく、見学する人は多いものの、買い手がつかなかった。彼は、家の窓を合成樹脂のものに替えよう、鉄製の窓があまりに古いので、きれいにすれば買い手が探しやすくなると提案した。彼女は同意した。窓を替えるなら大理石の窓台も換えなきゃと言われると、それにも同意した。 

「あなたは私も換えたいと思ったことがある?」と彼女は聞いた。 

彼はのんびりと、「君に捨てられなかっただけでももうけもんだ」と言った。 

彼はいつでもそんなふうにのんびりしていて、話も、服を洗うのも、床掃除もそうだった。でもそれでよかった。彼女はいつも凶暴だったが、彼は彼女に怒ったことすらなかったのだから。 

古い家のリフォームはすでに第2段階に移り、窓台の交換に入っていた。工務店の社長が窓台のサイズを測っていたとき、彼女もその場にいた。社長が友達追加して代金を払ってくれというので、彼女は微信(ウイーチャット、中国版LINE)を開いた。彼女は彼がゆっくりとスマホを取り出すのが待てなかったのだ。彼女が社長を友達に追加したので連絡係となり、彼はいつも彼女を通じて社長に連絡したが、彼女は窓台の取り付けについては不案内だったので、彼の話は時に全く理解不能だった。彼女はいらだって、「社長を連絡先に加えるんじゃなかった」と、社長の連絡先を彼に押し付けようとした。彼はゆっくりと、「取り付けが終わればもう用事はないので、追加する必要はない」と言った。 

取り付けるその日、彼は早々に起きたが、8時になっても社長は来る気配がなかった。彼は彼女に連絡を入れさせた。社長は「2件目の予定になり、10時頃になる」と言った。彼は不機嫌になり、「いの一番と言ったじゃないか、どうして2件目なんだ。11時には会社に行かなくちゃならないのに」と言った。 

彼女は腹を立て、「あなたが言わないのなら、当然急いでいるわけないと思うじゃない。私なら絶対11時に出掛けなきゃいけないから、真っ先にやってくれと大声で相手に言うわ」と言った。 

彼は目をかっと見開き、耐えかねたように「黙れ!」と怒鳴った。雷のような声だった。その後、慌ただしく服を着て出て行き、バンと音を立ててドアを閉めた。彼女の心臓はバクバクと音を立てた。彼が突然怒り出すことに耐えられなかった。1度目があれば、2度目も3度目もあるに違いない。彼女は自分のこれからの人生を見たような気がした。 

彼女は突然思い出した。そういえば先日、たんすを引っかき回して探したのに、彼のジャケットが見当たらなかった。もしかしたら、どっかの女の家に置いてきたのかも。彼女はキリキリと歯をかみしめ、別れを告げるかのように家の中を見渡すと、涙がとめどなく流れ落ちた。 

微信のメッセージの通知音がした。彼女が見てみると彼が送ってきた動画で、あのジャケットが映り、スポーツウェアの下に重なって、事務室の壁にかかっていた。彼女は見なかったふりをした。彼がゆっくりとした声で、「窓はきちんとついたよ。とても立派だ」と音声メッセージを送って来た。彼女は聞かなかったふりをした。 

「出勤が遅れたから、今月はボーナスなしだ。来月は君の誕生日だから、君にシルクのスカートを買ってあげようと思っていたのに」と彼は言った。彼女の心に温かいものが流れ込んだ。幼稚だと思いつつ、彼女は尋ねずにはいられなかった。 

「あなたはまだ私を愛している?」 

すると、彼は逆に聞いた。「人は何に対して一番愛着を持つと思う?」 

「何になの?」「長いこと住んだ家にだよ。君は僕の古い家だ」 

彼女の目から、また涙がどっと流れ出た。 

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