飛ぶ本

2023-04-14 16:16:00

呉爾芬=文

鄒源=イラスト

書店の本棚の中に静かに立ち、小さな読者が選んでくれるのを待っている絵本がありました。 

この日、小さな女の子がやって来て、地べたに座って絵本を初めから終わりまで読み、そのあと本棚に戻してから、ポケットをひっくり返して、本に向かって言いました。「私、あなたのことをとても好きだけど、買えないわ。パパは遠くに働きに行っていて、ママは病気なの。ほら見て、私のポケットは空で、お金がないの」 

翌日、その女の子はまたやって来て、再び絵本を読み、メモを本に挟んで、絵本に言いました。「もう一度読みたいんだけど、ママの付き添いで病院に行かなきゃいけないから、明日は来られないの。私の家まで飛んで来ることはできないかしら。表紙を開いて、鳥のように飛ぶの。できるかな?メモに私の家の住所が書いてあるから」 

絵本は小さな女の子の胸元に飛んでいきたいとどれだけ思ったことか。本が一番必要としているのは、自分を好いてくれる読者であり、小さい女の子がママを必要としているのと同じでした。でも本は鳥ではありませんから、飛べず、硬い表紙は羽のようにパタパタと動かせません。絵本は何もできず、ただ焦りながら本の間に挟まれていたのでした。 

この日、本が大好きな大きな男の子が来て、好きな本をひたすら買い物かごの中に放りこみましたが、彼のお母さんは何も言わずに買ってくれました。 

大きな男の子の家には立派な本棚があり、いろんな本がずらりと並んでいました。大きな男の子は一冊また一冊と、とても早く、たくさんの本を読んでいきます。彼が絵本を読んだとき、メモを見つけ、びっくりしてお母さんに渡しました。お母さんはメモを見てとても感動し、絵本が好きでも買えないでいる女の子のことを知りました。 

彼のお母さんが絵本をその住所に宅配便で送り届けると、翌日、受取人と連絡がつかないといって宅配便は戻されてきました。 

大きな男の子はお母さんのやり方は間違っていると思いました。絵本を小さな女の子のもとへ飛んでいかせるべきだと思ったのです。だから、彼はこのようなメモを書きました。「ごめんなさい。私は飛べないので、何日も練習して、ようやくあなたのおうちに着きました。お待たせしてすいません」 

大きな男の子はメモを本に挟み、小さな女の子の家へ送り届けましたが、家には誰もいません。隣の人によると、小さな女の子のお母さんが入院し、彼女はお母さんに付き添っていったとのことです。彼は絵本を玄関に置きましたが、これでは駄目だと思いました。万が一、清掃員に持っていかれたら大変です。彼は隣の人に渡そうとも思いましたが、これも駄目だと思いました。隣の人が彼女に渡したのでは、絵本が自分で飛んできたことになりません。仕方なく、彼は絵本をカバンに入れて、毎日学校の帰りに回り道をして小さな女の子の家へ行きました。 

ある日のこと、大きな男の子は家の中で女性と子どもが話をしているのを聞きました。そこで、彼は絵本を軽く広げて玄関に置き、鳥が飛び疲れたような形にしました。そしてドアをたたき、ドアが開く音を聞くと、すぐに階段に隠れました。 

大きな男の子がこっそり見ていると、小さい女の子が出てきて、きょろきょろ辺りを見回し、それから本を拾いあげて、そのメモを読み、興奮して叫びました。「ママ、私が大好きな絵本が本当に飛んできたよ!玄関にあるの」 

お母さんの声は疲れていましたが、喜びが感じられました。「私の夢は病気が良くなって家に帰ることで、あなたの夢は大好きな絵本が家に飛んでくることだったわね。今日、どっちもかなったじゃない!いい、ママの話を覚えておくのよ。いつまでも夢を持つこと。絶対に諦めないこと!」 

翻訳にあたって 

北京の老舗書店に行ったとき、私が一番驚いたのは、書店の地べたや階段に座りこんで本を読んでいる子どもたちがたくさんいたこと。書店側もそういう子どもたちを寛容に受け入れているようだ。通り道をふさいでいるので、ちょっと邪魔に感じることはあっても、いい光景だなと感じた。もっとも日本と同じように、ビニールをかけて、立ち読み(座り読み?)できないようにしている本も少なくはない。 (福井ゆり子) 

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