文=ジャーナリスト 陳言
1930年代に、名古屋の織機工場が自動車の生産に転換し始め、トヨタは次第に自動車メーカーとして有名になり、また世界最高レベルの自動車企業の一つになった。90年代初期、深圳特区をどのように発展させるかについて、中国国内は各種の思潮が百家争鳴の状況だったが、「南巡講話」が発表された後になって、深圳は基本的に工業生産を進める方針が定型化され、「念願成就―比亜迪(BYD)=build your dreams」を理念に掲げた企業が、携帯電話の組み立て工場のために電池の生産を始めた。BYDは2003年に、自動車生産の分野に進出した。当然、その前から中国ではすでに一部の企業が自動車製造を開始し、特に、名もない民営企業がこの業界に参入していた。トヨタとBYDを比較すれば、自動車生産の開始の時期に70年近い違いがある。
しかし、電気自動車を論じる場合、トヨタは経験豊富で、資本も潤沢で、特にガソリン車と電気自動車の間にあるハイブリッド車がそうだが、BYDは一足先に電気自動車を商品化した。
電気自動車の分野では、電池技術、商品化能力を問わず、中日企業の差は半端ではないが、これは中国企業がいつまでも遅れていることを意味していない。日本企業に技術力があり、製品力があり、ブランド力があるならば、電気自動車を輸送分野の重要な手段として使い、多数の企業を参入させようとしている中国のような国と協力すべきではないだろうか?中日企業はそれぞれ自らの特長を生かすべき時だろう。これは特に考慮に値する課題になっていると思う。
中国自動車メーカーの宿願
日本の自動車企業の大きな特長とは、次のようなものである。ほとんど全ての技術が自己開発したものであり、部品は基本的に系列企業から調達し、日本国内で十分な企業間の技術競争、市場競争が行われ、日本市場で鍛えられた競争力をもって世界で闘い、国際市場で相対的に大きなシェアを獲得している、というものである。
一方、中国の自動車メーカーはこの70年の間に国産化を通して、無から有へ、0から1へ、質的な変化を遂げたが、国有企業は最終的に中国市場の巨大な需要を解決できないでいる。改革開放後に「広く天下の豪傑と交わる」路線を選択し、1社の国有企業が同時にドイツ、米国、日本など複数の国、複数の企業と提携してきた。例えば、湖北省・武漢の東風自動車は、前後して、プジョーシトロエン(仏)、ルノー(仏)、カミンズ(米国)、起亜(韓国)、ホンダ(日本)、日産(日本)などと縁組した。メーカー側は「私たちは絶え間なく国外メーカーと縁組している」と自慢している。東風の独自ブランドの自動車は、中国ではわずかしか見られない。
中国の自動車メーカーは数社に過ぎず、最終的に強大になったのは奇瑞汽車(チェリー)、吉利汽車(ジーリー)、BYDなどに限られている。
国有、民営を問わず、中国の自動車メーカーの生産台数は結局、日独米企業を上回っていないし、技術水準や新技術開発は言うに及ばない。ガソリン車での時代遅れは中国企業の宿命だろう。家電で中国企業は軽々と業績を挙げたので、少なくとも自動車も生産台数では日本のトヨタやドイツのフォルクスワーゲンを上回ると思わせたが、実際上、この宿願はいまだに実現していない。
遅くはないBYDの商品化
自動車産業内に「カーブで追い越す」という言い方がある。今日の「カーブ」は恐らく電気自動車だろう。この点、BYDの商品化は遅くはなく、特に日本企業が燃料電池、ハイブリッドエンジンなどで手間取っている間、BYDのような自動車企業は研究開発や生産時間のゆとりが得られた。8月に明らかになった、トヨタとマツダが提携して、米国に新工場を作るという計画から見て、日本企業は簡単に燃料自動車方面での理想を放棄していないようだ。方々に手を出し、燃料節約型の車を作りたいと考え、だからと言って、燃料電池の開発を放棄せず、同時にハイブリッドエンジンも推進しているが、純電気自動車も断念していない。日本企業の手法が最終的に電池技術や電気自動車の発展に有益か否かは知る由もない。
実は、三菱自動車、日産は成熟した純電気自動車を生産しているが、米国のテスラのように、中国で生産する計画は聞いていない。電気自動車の分野で、日本と中国がどのように提携するのか、現在、何の兆候も見当たらない。
中国の投資会社がM&A
しかし、車載電池を見れば、もしかしたら中日提携の前兆を見いだせるかもしれない。
8月8日、次のようなニュースが流れた。日産とNECの合弁企業「オートモーティブエナジーサプライ(AESC)」が中国投資会社の金沙江創投(GSRCapital)に売却された。関連報道から見ると、買収・合併(M &A)金額は1000億円だ。
日産リーフが使用している電池は、M&A成立後に、従来通りAESCから購入される見込み。新世代のリーフの航続距離は現在の280㌔から400㌔に伸び、18年にはさらに500㌔に達する。中国は産業政策で航続距離350㌔以上の電気自動車に最高の優待条件を提供する。AESCの電池があれば、中国の電気自動車メーカーの生産はさらに加速されるだろう。
中国には比較的豊かなニッケル、コバルトなどの非鉄金属資源があり、電池生産用の基礎材料は多いが、これらの材料をどのように電池開発に使うかが大問題だ。国外企業、特に日本企業からM&Aを通して関連技術を導入するのは良い方法だと思う。
電池で提携経験を積めば、中日間の電気自動車分野での提携には巨大な可能性があるに違いない。電気自動車は電力使用のプロジェクトというだけでなく、電池の分野においても提携する新しいビジネスチャンスが生まれるだろう。
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