開放の深化で商機拡大

2018-12-29 13:29:34

「ボアオ」から「輸入博」 一貫する主旋律

陳言=

 12月に入り、今年も過ぎ去ろうとしている。

 今年、一部の国は、利己主義的な自国優先政策を打ち出し、拡大する態勢だが、自由貿易体制、多国間貿易のルールは依然として世界的な主流である。この1年を振り返ると、中国は4月に博鰲(ボアオ)アジアフォーラムを開催し、「開放、革新のアジア、繁栄、発展の世界」を提起し、11月には上海で初の中国国際輸入博覧会を開催し、今後、15年以内に外国から40(約4500兆円)の物品、サービスの輸入を決定した。中国は世界に向けて胸襟を開き、世界も中国によって変われば、保守的な閉鎖主義は最終的には改革開放によって打破され、世界経済はこれまで通り前進するだろう。

 

関心が薄かった日本の商社

 輸入博の開催は昨年発表されたが、北京に住む筆者は日本企業がこの博覧会に強い関心を持っているとは感じられなかった。今年前半になって、中日経済交流が増え始めて以降、参加申請をする企業が少しずつ増えた。しかし、日本の貿易関係の主要商社の中では、依然として、そうした動きが見られず、上海展覧センターの輸入博会場では伊藤忠商事の展示ブースを除いて、大手商社の姿はほとんど見られなかった。

 中米貿易戦争の火花が散っているので、米国企業は輸入博に参加しないだろうし、少なくとも中国で業務を展開していないグーグル、フェイスブックなどが参加する緊急性はないと思う。しかし、最も出展すべき日本の大部分の商社が顔を見せないのとは違って、米国の情報技術(IT)企業は会場で豪華なコンテンツを展示。これを参観し、商談に及んだ中国企業はかなり多数に上った。

 政治面の要素を除外して、中国市場を見る時、本来、最も戦略眼を持つべき日本の大企業は、本質的に、長年にわたってかまびすしかった中国経済崩壊論、中国経済停滞論の側に立ち、米国の中国貿易抑え込みを信じている間に、中国でのチャンスをすでに失いつつある。中国が再三繰り返している、対外的にはさらなる開放の推進、対内的には税率低減によって企業に対する圧力を軽減する方式を通じて、経済発展を維持するという手法に対して、かなり懐疑的な態度を取っている。

 中国経済の先行きに対する予測が異なるので、輸入博に参加すべきか否かの結論も企業によって異なる。中国は今後15年の間に40の物品、サービスの輸入を宣言したが、少なからぬ日本企業にとっては想定外だったに違いない。

 

日本企業が中国を再評価へ

 10月末、筆者はパナソニック創立100周年記念行事に参加し、津賀一宏社長の基調講演を聞く機会を得た。筆者が注目したのは、津賀社長が今後100年について語る前に、中国の飲食業者、海底撈火鍋(カイテイロウヒナベ)との提携に言及し、百度(バイドゥ)と共同で行なっている自動運転研究について語ったことだった。パナソニックが過去100年間、主に自社の実力に依拠して、研究、開発、生産、輸出に従事してきたとすれば、今後100年、同社は開発、研究、生産範囲拡大に加えて、国外では他国企業とさらに多数提携し、中でも、中国企業が必要とするソリューションを提供し、中国企業と提携するのは少なくないだろう。

 11月の輸入博の会場で、日立製作所が新たに研究開発した多くの製品を見ることができた。その中には、「自動車解体機」や空港などの公共施設で使用する「通過式爆発物探知装置」などがあった。中国は自動車の大量廃棄時代に入っていて、自動車解体に対する需要が非常に高まっているので、日立グループはタイムリーに関連製品を出展した。また、中国では毎年、海外旅行に出掛ける人数は1億人以上で、さらに数千万人の外国人旅行者が訪中し、毎年、数億人が空港を利用しているので、迅速な移動と旅行の安全を実現するために、日立は中国の市場需要にかなった答案を提出した。

 中国は世界最大の液晶テレビ生産国であり、液晶製品は韓国企業あるいは日本企業が生産しているが、中国市場の関連ガラス製品の需要は極めて大きい。輸入博で、特に注目を集めたのが旭硝子(AGC)の展示ブースで、液晶関連の各種の新型ガラスのみならず、5G通信の需要に適応する新しいガラス製品も展示し、中国の観衆の耳目を集め、展示ブースに多くの関係者が訪れていた。

 多くの日本の出展企業は自社製品を展示しただけで、会場にやって来た人々が多額の資金を持参し、輸入博の期間中に大量の製品を買い付けることは思いも寄らなかった。また、中国側バイヤーが強い購買意欲を持っていたことも少なからぬ企業には想定外だった。

 

開放が拡大する来年は商機

 間もなくやって来る2019年を展望すると、普遍的に、経済発展は今年に比べてゆとりができるだろうという確信が強まっている。

 今年の世界経済は保護貿易主義の影響で、多数の人々が弱気になっている。しかし、08年の米国リーマンショックが09年の世界経済に与えた打撃、1997年のアジア通貨危機が当時の世界経済に与えた影響に比べると、今年の保護貿易主義が世界経済に与えた負の影響は相対的に小さいと考えられる。

 1997年と2008年の危機でさえ中国の改革開放を混乱させることはできず、しかも、今年4月のボアオ、11月の上海で、開放の深化、一層の開放が一貫して中国政治経済の主旋律であり、中国は少しも動揺していない。今後も中国はこれまで同様、改革開放の道を歩み続けることは間違いない。

 上海での輸入博期間中に、筆者が資生堂(中国)投資有限公司を取材した際に、シニア管理職は開口一番、今年は参加しなかったが、来年の参加については、すでに中国側と協定を結んだ、と告げた。メーカーとして、市場の熱気の中から中国の魅力を感じることができるからだそうだ。

 将来的に、ヘルスケア、介護、教育、金融サービスなどのさらに広い領域で、中国のチャンスは多く、大きいだけでなく、世界各国は中国の一層の開放に参与することができる。また中国の一層の開放によってのみ、世界経済は保護貿易主義の妨害を突破して、前進し続けることができる。

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