研究開発と開放で対応 米国が「狙い打ち」のファーウェイ

2019-03-19 14:21:13

=陳言

 

 3月1日に中米通商協議の緩和期間が終了するまで、米国の華為技術(ファーウェイ)に対する攻勢は止まりそうにない。

 実際、年配の読者あるいは過去30年、40年の日米関係を理解している読者の多くは、次のように感じているのではないだろうか。1980年代、日米貿易摩擦が激化し始め、まず使ったのが「おとり捜査」方式で、産業スパイの罪名で日本の総合電機メーカーの社員を逮捕し、引き続いて対共産圏輸出統制委員会(ココム)規制違反で工作機械をソ連に輸出していた企業を厳しく取り締まった。日本政府に通商交渉を迫ると同時に、日本企業を攻撃したが、これが米国の貿易戦争における常とう手段であり、今日の中国企業に対する対応を見ると米国の戦術は少しも変わっていない。

 それではファーウェイはどのような方法で米国およびその同盟国の圧力に対応しようとしているのだろうか? ファーウェイの手法の特徴に本誌読者の関心が集まっていると思う。

 

自動車や家電が次第に没落

 ここで日米貿易摩擦を振り返ってみると、以下のようないくつかの結論にたどり着く。

 まず、米国政府が圧力を加えた企業は鉄鋼ではなく、自動車であり、半導体を含む日本の総合電機メーカーだったが、圧力をかけられても衰微せず、逆に米国政府が最大限の力を込めて保護した自動車、家電企業が日に日に没落していった。中でも自動車企業の倒産は最も明白な例だった。米国の自動車企業は今でも生き延びているが、米国政府の貿易交渉を通じた保護によるものであり、その尊厳はいささか損なわれている。

 次に、90年代中後期に入ると、日本の主要メディアの言い方を借りれば、日本経済は長期の「失われた時代」に入る。その原因は円レートの激動、日本企業の猛烈な対外投資、情報技術(IT)などの新技術に目を付けたのが生産・製造だけであり、サービスおよび市場販売におけるイノベーションが欠落していたことにある。ここ数年、少子高齢化によって日本市場には縮小現象が現れ始め、企業は日本国内の投資に対して、かなり慎重になっている。さまざまな理由によって、最終的に日本経済は衰微の道をたどり、日本のメディアは過去20年間言い続けてきた「失われた10年」を、今では「失われた20年」と言い換え始めている。「失われた時代」から抜け出すために、日本は政治的な改革(政権党の交代)を行い、「アベノミクス」などの政策を打ち出してきたが、今のところ、政治改革やアベノミクスが全面的に成功したと考えている日本の学者、評論家はほとんどいない。

 第3に、米国企業の成功は国家的な保護により、日本などの国々の企業との競争が減ったため、獲得したものではなく、米国が万やむを得ない状況下で、新規まき直しを図り、ITイノベーションの道を模索し、やっと手に入れたものだ。グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル(GAFA)のビジネスモデルは日本とは全く異なっている。言葉を換えて言えば、日本と競争する産業以外から出現したものであり、米国は鉄鋼、自動車や家電の分野で日本企業を最終的に敗北させられなかった。

 

新技術の世代交代に焦燥感

 米国のGAFAが今から5年後、10年後に今のような絶対的な優位性を維持できるかどうか? アップルに今年から現れた衰微の兆候を見れば、米国政府の焦燥感を十分理解できるだろう。

 過去数世代の移動通信システムで、1G、2Gでは中国企業が声を上げる余地はほとんどなかった。だが、短期間の3Gが過去のものになると、多くの4G技術に中国企業が関わっており、さらに将来の5G技術ではその最強企業がファーウェイであり、次が中興通訊(ZTE)であることに、世界中が突然、気付いた。サムスン(韓国)などが懸命に一定のシェアを維持しているものの、十分な研究開発費を維持し、資金で勝負する研究開発競争で持ちこたえていけるかどうかは、すでに予測不可能だ。米国、日本の企業もそれぞれ得意分野があるが、1Gから4Gまでの時期に比べ、技術的にどれほど中国に先んじていると言うのは難しい。

 米国はピンポイントで攻撃する方式で、昨年から中国企業に圧力をかけ始めた。昨年4月、まずZTEに照準を合わせ、10月には半導体企業の福建晋華集成電路(JHICC)をやり玉に挙げた。そして、12月にはファーウェイに手を付けた。

 通商交渉の面で言うと、米国は中国に対して全ての製品に25%の追加関税を課すと言ったかと思うと、緩和期間をさらに延長するという情報を流した。メディアのほとんどが政府の中国企業に対する圧力を支持し、その保護主義的な特徴は第2次世界大戦前の米国に似ている。しかし当時、米国製品は米国で完成していたが、現在では経済がグローバル化していて、ファーウェイ、ZTEを狙い打ちすれば、米国企業の損失もかなり大きくなる。いらだち、焦燥感が米国全土を覆い、ここが米国なのかそうでないのか、すでにはっきり分からなくなっている。かつて、自由、開放、平等を主張した米国では今、「アメリカ・ファースト」がスローガンになっている。第1位でないから、第1位を保持できないから、このようなスローガンを叫び、このように焦っているのではないだろうか。

 

124日、ファーウェイは、すでに305Gネットワーク構築に向けた商用契約を締結し、25000局の5G基地局を世界各地に出荷していることを発表した(東方IC

 

新技術のCPUチップ発表

 昨年12月、米国の圧力を受けて以降、ファーウェイが天を仰いで涙を拭ったりはせず、研究開発にさらに努力し、内外のメディアにさらに開放している姿をわれわれは目にした。

 今年1月7日、ファーウェイはARMベースのCPU「鯤鵬(Kunpeng)920」チップを発表した。関連報道によると、このチップは線幅7㌨㍍(10億分の1㍍)の製造技術を採用し、ARM構成授権に基づいて、ファーウェイが自主設計し、完成させた。ファーウェイはこのチップと同時に、これに基づく泰山サーバー、ファーウェイクラウドなども打ち出した。

 ファーウェイの2017年の売上額は10兆円で、営業利益は8200億円だったが、同年、研究開発に1兆3000億円を投入した。基地局整備の面の世界ランキングはファーウェイ、エリクソン(スウェーデン)、ノキア(フィンランド)およびZTEの順。第5位のサムスンはとても同列とは言えず、この後にも米国企業はない。

 米国の狙い打ちに直面して、ファーウェイは中国内外の記者に研究開発センターを開放し、幹部役員が頻繁に記者会見に臨み、創業者の任正非氏の関連講演は随時、ネット上に発表されている。同社はより開放的な姿勢で世界各国企業との往来を活発化させている。

 ファーウェイは毎年、日本からおよそ5000億円相当の部品類を購入しているが、日本が政府調達製品から中国企業を排除した後も、同社は従来通り、日本市場を重視し、一般民衆、企業、政府との交流を積極的に行っている。

 実際、開放的で果敢に困難に立ち向かう企業こそが、最終的に市場で生き延びて行くだろう。

 

陳言(Chen Yan)

日本企業(中国)研究院執行院長。1960年生まれ、1982年南京大学卒。中日経済関係についての記事、著書多数。現在は人民中国雑誌社副総編集長。

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