地方レベルで提携推進を コロナワクチン開発に新たな道

2021-03-17 14:22:03

陳言=文

今年に入っても、新型コロナウイルスは依然として世界各地で猛威を振るっている。各国の対策はさまざまだが、最終的に新型コロナウイルスに打ち勝つには、有効なワクチンの供給を保証し社会全体に免疫力を持たせる前に、医療保障、行政措置、施政能力と民衆の一致協力が重要な方法だ。

中日両国はコロナ対策において、欧米などに比べて際立った成果を上げている。中日がもっと協力できれば、世界に範を示すことができると思う。

 

中日は防疫の「優等生」

2月19日時点で、中国の感染者数は10万1625人で、死亡者数は4842人。一方、日本は感染者数は約42万人、死亡者数は7299人。米国の状況を見ると、感染者数は約2852万人、死亡者数は約50万人に達している。

中日米は世界で最も重要な経済大国だが、米国の感染者数、死亡者数とも想像以上に多い。これらの数字と、米国が持つ先進的な医療技術や米国の社会体制が発揮すべき役割との間には、大きなギャップが生じている。

昨年の新型コロナウイルスの発生前、2013年には鳥インフルエンザが発生し、それ以前の09年には豚インフルエンザが発生した。当時、ウイルスに対する人々の知識はかなり不足していた。しかし、今回の新型コロナウイルスの感染症では、中国が最初に被害を受け、世界各国には対策を講じる時間は十分にあったはずだ。しかし当初、日米を含む多くの国々が十分に重視していなかったことは明らかだ。

新型コロナの感染症が発生した後、中国政府は果断に隔離やPCR検査などの措置を講じ、民衆はマスク着用や手洗いなどを励行した。これらが最も簡単で、最も効果的なコロナ対策だからだ。中国は昨年、感染症が最初に発見された武漢市を迅速にロックダウン(都市封鎖)し、感染症が湖北省の外に拡大するのを食い止めた。また中国全ての医療資源を集中し、湖北省(主に武漢市)の感染症対策を徹底した。その結果が今日の状況だ。

日本のコロナ感染症例数は多いが、死亡率はおおむね1・4%前後で米国の1・7%より低い。日本の感染者総数は相対的にコントロールされており、最終的に新型コロナウイルスによる死亡者数は米国に比べて大幅に少なくなっている。

しかし、一つ説明が必要なのは以下の点だ。米国と日本の死亡率はそれほど高くないが、新型コロナの感染症対策が十分でないため、最終的には日米共に感染者が増え、医療体制がひっ迫し、経済に深刻な下落現象を招いた。昨年の米国の国内総生産(GDP)の実質成長率は、前年比でマイナス3・5%、中国はプラス2・3%で、その違いは明らかだ。

 

都市封鎖し全市PCR検査

中国の各地方では今回、独自の防疫対策が行われている。

 武漢市は昨年1月、ロックダウン方式を取った。76日間、外部との人の往来を遮断し、ウイルスの周辺への拡大を阻止した。

昨年10月、山東省青島市で新型コロナウイルスの感染者が確認された当初、感染者数は多くはなかったが、直ちに同市の常住人口945万人全員にPCR検査と追跡調査を行った。この時はロックダウン方式を採用せず、スクリーニングを行い地方社会の安全を守った。

その後、昨年末に河北省石家荘市で感染者が見つかった時も、青島の方式を踏襲した。青島と異なったのは、個別の地域に感染者が集中していたことと、農村部の医療・衛生条件がぜい弱であること、村内の一部の組織では定期的にイベントを行っていたため、村民を集中的に隔離しなければならなかったことだ。

同市は10日余りで速やかに隔離施設を建設し、村民全員を隔離施設に移動させ、感染症の拡大を阻止した。最終的に同市の感染者数は1月29日現在、891人、死亡者1人に抑え込んでいる。

北京などの場合、感染者が確認された建物だけを封鎖し、団地などは全員のPCR検査を行い、その費用は国が負担している。

ロックダウンであろうと全員PCR検査であろうと、経済的な支出はかなり大きい。19年の武漢市の市内総生産は1兆6223億元(約26兆4000億円)だったが、昨年は1兆5616億元(約25兆4000億円)に減少した。600億元(約1兆円)を上回る減少はコロナによるものだ。中国のPCR検査は10人1組の「プール方式」で行われており、一都市1000万人の同検査の費用は数億元に上る。

中国のGDPは、米国のようにマイナス3・5%ではないが、1%減少すると1兆元(約16兆円)を失うことになる。ロックダウンと全員PCR検査は、中国の正常な経済運営を保証したというべきだ。

 

北京市内の病院で接種を受ける市民。中国では新型コロナワクチンの接種が今年1月1日から始まり、医療従事者や物流業界などの優先対象の人々が最初に接種を受けた(東方IC)

 

奨励策で春節移動半減へ

中日の感染症対策は異なるが、情報交換や医療、ワクチンなどの協力を妨げるものではない。

中国では毎年、春節(旧正月)前後の約40日間に、延べ約30億人が国内を移動する。今年は2月12日が春節で、各地方政府はデジタル「お年玉」を発給したり、携帯電話などの通信量を無料にしたりするなど、さまざまな帰省抑制策を打ち出し、古里に戻らずに春節休みを過ごすよう奨励した。こうした政策の徹底によって、今年の総移動量を昨年の半分程度に減らそうと努力した。

北京の地下鉄駅ではマスクの自動販売機が目につく。また高速鉄道駅の多くでは、マスクが足りなければ無料で受け取ることができる。

中国の地方政府と日本の地方自治体が感染症対策の情報面でもっと多くのコミュニケーションができれば、地方での効果的な行政方式は、中日の防疫対策の面でさらに良い効果を上げられるだろう。こうした感染症との闘いにおける中日協力は、今後長い間、両国が共に努力する上で重要な内容になるに違いない。

日本には世界有数の医療機器、製薬メーカーがあり、中国では新型コロナワクチンの研究・製造が行われており、中日は防疫の面でそれぞれが異なる役割を発揮し、その優位性で相互補完できる。こうした面での問題提起は、本欄でも繰り返し主張してきたが、今一度強調しておきたい。

新型コロナにより、中日両国は地方行政レベルでの情報交換や医療ワクチンなどの面で、新たな提携の道を歩むことができると信じている。 

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