共創を新たな提携モデルに 両国関係と国民感情を改善する鍵

2022-10-14 16:19:31

陳言=文 

今年下半期は中日国交正常化50周年を祝う各種イベントが予定され、筆者もメディア関係者の一人として、多くの会議やシンポジウムなどの記念行事に参加する。国交正常化以降、40年にわたって両国交流の第一線にいる筆者だが、中日外交関係が論語に言う「天命を知る」年齢に当たる今年は、特に感慨深いものがある。 

過日、日本の外交関係者と中日関係の変化について語り合ったとき、焦点は経済規模の逆転、国民感情の落差と大きな政治リスクについてだった。これらに言及するのは必然だったが、同時に大きな無力感と諦観を覚えた。よく考えてみると、外交関係者が語る中日関係は決して完全ではないことに気付いた。経済だけを見れば、50年前の中日の貿易額は年間10億㌦程度だったが、現在では3700億㌦に達している。もし中日の外交や国民感情の行き違いが何事にも勝っていれば、到達できない規模だ。 

中日関係は50年を経て、日本側が一方的に中国へ技術移転や資本輸出を行い、中国側が市場を提供するだけの状況ではなくなり、「あなたの中に私がいて、私の中にあなたがいる」という密接な関係になっている。話が将来的な共創(コー・クリエーション)モデルに及ぶと、外交官や記者はこうした面にあまり関心を示さず、分析も正確ではなくなるようだ。 

  

開放と共創は徐々に在中日系企業の新たなモデルになっている。写真は中国国際輸入博覧会に出展した富士フイルムのブース(新華社) 

  

中国のR&Dが新たな基礎 

中日の国交が正常化した1972年、中国の大学はすでに全面的に閉鎖状態で、その後長い間、大学数・学生数は日本ほど多くはなかった。ところが90年代になると中国の大学数・学生数は日本を上回り、その後は数倍の規模に達した。 

文科省が発表した統計によると、昨年の日本の大学数は926校、学生数は262万人。中国の統計方式は日本と異なるが、教育部(日本の文科省に相当)が発表した関連データによると、2020年の中国の大学数は2738校、卒業生数は874万人。卒業生数を単純に4倍すると3496万人となる。中国の人口は日本の約10倍であり、大学生数が日本の10倍であるのは正常な現象だ。 

中国と日本の最大の相違点は、中国は大学生数のうち理工科系が占める割合が日本よりもはるかに大きく、大学生が卒業後、修士・博士課程に進む割合が日本を大幅に上回っていることだ。 

科学的研究(R&D)の成果から見ると、50年前、中国の研究論文は世界でほとんど無視される状態だったが、今では大きな変化が起きている。文科省が8月に発表した「科学技術指標2022」の関連データを見ると、トップ10%補正論文数で中国は10年前に2位で、2019年には1位(日本は12位)に上がり、トップ1%補正論文数では10年前の3位から1位(日本は10位)に上がった。 

巨大な大学群が擁する在校生の質と量、そして大量の論文は中国の経済成長の強力な保障だと言える。この実力と中国の工業経済が連携して、すでに世界最大の工業市場をつくり出しており、この巨大な工業生産能力は今後長期的に維持されるだろう。 

  

両国企業が新モデルを模索 

中国の教育、R&D能力が向上すると、中国市場の日本企業に対する需要に変化が現れた。筆者は長年、中日経済交流に関わっているが、40年前なら中国に持ち込まれた日本の技術はほぼ全て中国にとって最先端技術だった。日本の資金が数百万円あれば大きなプロジェクトができ、数千万円あれば多くの地方でビッグプロジェクトが打ち立てられたが、今の中国では想像もできない。 

大量の日本の技術と資金が中国に流れ込み、中国の工業化プロセスを推進し、中国経済の発展を促した。しかし、中国の国内総生産(GDP)が日本を上回ってから、特にここ数年、日本経済が足踏みしている間に、中国のGDPは日本の3~4倍に増え、中日双方が新たな発展計画を模索する段階にきている。 

日本は今年から、経済安全保障法制の整備を進めている。日本のメディアによれば、その主な目的はハイテク分野における中国との提携を規制し、日本独自のサプライチェーンを構築、あるいは中国をデカップリングする日米共同のサプライチェーンを構築することだ。これがハイテク分野における中日交流の国際環境に重要な変化を起こし始めている。 

中国経済はいまだに体質強化やニッチ化などの面で日本企業との提携を必要としている。中国の変化に応じて中日経済交流を推進するには、両国の企業が共同で中国における新たな提携モデルを探さなければならない。 

今年8月末、リコーソフトウェア研究所、旭化成、村田製作所は中国の技術革新が最も活発なで行われたイベントに参加。リバースピッチ方式によって、自らのカーボンニュートラル、新エネルギー、スマートデバイス、スマートモビリティー、スマートコックピット、医療・健康、モノのインターネット(IoT)、ファインプリント、光学画像処理などの関連技術を公表、中国側の提携パートナーを広範に募集し、将来的な提携の機会を模索した。 

筆者はリコーソフトウェア研究所(北京)有限公司を取材したことがある。同社のマネージングディレクター藤本豪氏は、リバースピッチ方式でリコーグループが人工知能(AI)、コンピュータービジョン、データマイニングなどの先駆的な分野で獲得したイノベーションや特許を紹介し、リコーのバイオシードテクノロジーが中国で価値を創造する機会を得たいと述べていた。リコーはそれを目指して、イノベーション・アクセラレーターを通じて資金や資源を投入し、スタートアップ企業のために、資金による奨励、海外交流、資源マッチング、対面指導、宣伝・報道などの重層的なサポートを提供している。 

旭化成は深圳のイベントで、トータルモニタリングソリューション、新型バイオベースの応用、スマートコックピット類の応用など、同社の提携事例を紹介した。 

このように、日本企業は深圳のイベントで展示した新技術をオープンイノベーションにすることで、中国市場に参入する新たなチャンスを捉えようとしている。 

  

上海でも13社一斉デビュー 

深圳だけではなく、8月下旬には上海でも、富士フイルムビジネスイノベーションセンター、GE医療上海センター、上海ノキアベルOpenX lab、BASFオープンイノベーションセンターなどが、13社ある2022年第1期「大企業オープンイノベーションセンター」として一斉にデビューした。今日では主要な多国籍企業がオープンイノベーション、中国企業との共創という新モデルに照準を合わせている。 

新モデルがどの程度メディアや外交エリート層から理解され、関連情報がどの程度日本を含む各国民に伝わるか、それは中日関係と国民感情を変える重要な力になるだろう。 

 

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