中国企業は新たな投資模索 日本企業と非経済安保面で提携

2023-04-26 16:46:00

陳言=文

月5日の清明節(先祖の墓参り)の前日か2日前の日は、中原地域の寒食節(火を使わずに過ごす)に当たる。 

多くの読者の皆さんは宮城谷昌光が1993年に発表した小説『重耳』あるいは95年に発表した『介子推』をお読みかと思う。重耳の臣家だった介子推は寒食節と深い関連があり、焼死した彼を弔う日が後世に寒食節になったと言われている。 

筆者は今年の寒食節を前に、北京からマイカーを運転して、河北省石家荘市、山西省太原市を経て、寒食節発祥の地、介休市に到着し、綿山を参拝した。北京からの道中では、このコラムでも紹介した太陽光発電用のパネルが並び、風力発電用の風車が林立し、新エネルギーが各地に普及しているのを目の当たりにした。また都市のビジネス街は往時のにぎわいを取り戻し、有名レストランでは席が空くまで待たされ、数カ月前は駐車場探しに苦労しなかったが、今では昔と変わらず難しいのが当たり前になっており、今年4月以降はこうした状況が常態になるに違いない。 

山西省の他に、筆者は最近、上海、広州などを駆け足で回り、かなり多くの企業経営者らと懇談した。出張中もさまざまなメールが届いた。特に日本企業との連携を希望する中国企業や地方政府からのメールが多く、中国の経済環境に大きな変化が起きていることをはっきり実感した。 

 

中国経済の回復速度早まる 

3月初め、上海から北京に戻ったときに搭乗した便が北京大興国際空港に着陸したのが午後1145分、それから滑走路上を移動し、約20分後に停止した。そこでシャトルバスに乗り、手荷物を受け取るまで30分近くかかり、空港を出たのはすでに午前1時近かった。さらにタクシー乗り場には長蛇の列ができ、スタッフがタクシー、ネットハイヤーを整理して乗客を乗せていたが、それでも20分以上待たざるを得なかった。筆者は長い間こうした経験はなく、午前零時前は到着便が多いのに、タクシーは特に足りないように感じた。 

国家統計局が3月1日に発表したデータによると、2月の製造業PMI(購買担当者景気指数)は前月と比べると急増し、過去10年余りで最高水準に達した。サービス産業活動指数も上昇した。裏付けとして、「財新メディア」が発表した2月のPMIは昨年下半期以来の最高水準だった。 

一線の取材記者として、マイカーで地方取材に行く道中のトラックの状況を観察すれば、その地方の経済状況をおよそ想像できる。高速道路に入ってトラックの台数が増えていれば、あるいは地方ナンバーのトラックが多ければ、その地方の経済が好転しているのか停滞しているのか感覚的に分かる。北京から介休市に向かう道中では数え切れないほどのトラックが走行していることを実感でき、トラックを追い抜くたびに、河北、山西には早春のぬくもりがすでに到来していると感じられた。 

広州などの華南地域は東南アジア各国との経済往来が目に見えて増えている。筆者は昨年と一昨年も華南を訪れたが、その際耳にしたのは中国の工業製品が東南アジア各国に輸出され、同時に東南アジア各国から農産品を輸入しているという情報がほとんどだったが、現在では、東南アジアに対する投資および東南アジア各国の対中投資の話がさらに聞こえた。東南アジア各国は新型コロナの影響を受けて、一時期、経済活動が低迷していたが、今では中国より早く経済回復の段階に入っている。特にベトナムなどは貿易が活発化し、対米輸出で優位に立っている。中国経済がさらに加速度的に発展すれば、華南は一層早く東南アジア各国の市場の力を借りて、発展するに違いない。 


今年2月、鄭州日産の中牟工場生産ラインで作業員と協力して自動車の組立作業を行うロボット(vcg)

 

消費の潜在力向上が重要に 

筆者が訪れた省市を観察したところ、一般消費は基本的にすでにコロナ前の状態を取り戻しているが、貯蓄の現状を見ると、大量の現金が銀行に預けられており、自動車、住宅などの消費が大幅に拡大する余地が残されている。 

中国自動車工業協会が発表したデータによると、昨年の中国の自動車販売台数は2675万7000台で前年同期比わずか17%の伸びで、国民経済の発展速度を下回っている。また各地の土地取引の状況から見ると、今年3月まで、住宅建設による消費けん引能力に限界が見える。新たな住宅建設ブームが起きなければ、鉄鋼、セメント、エレベーター、家具、自動車などの消費増は見込めない。 

消費を真に活性化させるには、企業と起業にこれまで通りさまざまなチャンスを与えなければならない。企業が回り始めれば、雇用も保障される。人々に仕事があれば、自ずと消費能力が向上し、銀行に置いてある現金が消費に用いられる。 

今日の中国は輸出を拡大し、とりわけ東南アジア各国に対する輸出拡大がますます重要になっており、同時に国民の消費意欲が高まれば、経済が急速に回復し、それが「高速道路」に乗った後は経済政策の中身がますます重要になる。 

 

IT関連の技術提供に焦点 

中国経済は従来型産業に重複投資は行わず、コロナ後、新たな投資コンテンツと新たな投資方式を模索し始めている、と筆者は見ている。 

日立ソリューションズ(中国)有限公司は新たな投資における中国の製造企業の情報技術(IT)に対する需要に焦点を合わせ、本来、日立グループに貢献していた関連技術、特に製造に関連するIT技術を中国企業に提供するサービスを掲げ、中国市場の開拓に乗り出している。 

キヤノンはその売り上げの中でアジアと太平洋地域のシェアが全社の233%を占め、カメラ、プリンターに続いて、コロナ対策の医療設備関連製品が中国で急速に市場を広げた。今後、医療関係産業は中国で急速に発展するビッグチャンスが待っている。 

不動産市場が完全に回復していない段階で、日立エレベーターは交換、新装の市場開拓に着手した。中国では1000万台のエレベーターが使用中であり、その中には耐用年数を超過しているエレベーターもあり、交換が必要になっており、日立エレベーターはこの業務に着目し、エレベーター市場で輝かしい業績を伸ばしている。 

日本は昨年、経済安全保障政策を打ち出し、関連法も成立しており、ハイテク関連で日本企業と中国企業の提携範囲は縮小し始めているが、非経済安保の分野では依然として中日提携の余地が残されている。日本企業の製品、サービスおよび業務範囲の開拓能力は少しも減退していない。 

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