増加するGRP1兆元都市圏 AI産業が地方の発展をけん引
北京から車で一路南へ600㌔の道のりを走り、山東省菏沢市成武県にやって来た。この一帯は江蘇省、安徽省、河南省に近く、山はないものの、これまでは比較的貧しい地域だった。
成武に着いたのは夕方だったが、車を下りると、立ち並ぶ高層ビル群が目に飛び込む。人造湖のほとりにはテレビ塔がそびえ、色とりどりのネオンライトが塔を一層美しく彩り、水面に映る高層ビルの灯りと互いに輝き合っている。事前に何も調べずに突然ここを訪れた人間は、十中八九ここをもとから繁栄して豊かな都市だと考えるだろう。
ここ数年の中国の各地方経済の発展には目を見張るものがある。
29の1兆元都市
昨年、中国経済は複雑な国内外環境の中で着実に前進し、地方経済は中国経済の重要な構成要素として、段階的な構造、イノベーション駆動、地域間連携、多角的発展という明確な特徴を示している。上海に続き北京も「5兆元クラブ」の仲間入りを果たし、29の都市が「域内総生産(GRP)1兆元都市」に加わった。沿海地域ではAIを代表とする新産業が急速に台頭し、西部地域では国家重点プロジェクトを基盤に飛躍的な成長を遂げた。地方経済の発展の道は、中国経済の独自の優位性と安定した秘訣を示している。
昨年の上海のGRPは5兆6708億7100万元(約130兆8000億円)、北京は5兆2073億4000万元(約121兆5000億円)で、東京都(2023年度は125兆円)を上回るか匹敵する規模だ。上海と北京がそろって5兆元を突破し、中国経済の「二極けん引」という核心的構造が形成された。

それと同時にGRPが1兆元を突破した都市が29に拡大し、24年と比べて大連と温州が新たに加わり、「5兆元+3兆元+2兆元+1兆元」というピラミッド型の経済構造が形成されている。そのうち、深圳、重慶、広州は3兆元圏を堅調に維持し、蘇州、成都、杭州、武漢は2兆元規模にある。残り20の1兆元都市は長江デルタ、粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア)、京津冀(北京・天津・河北)などの重要地域に多く分布し、中国の経済成長を支える「中核的な力」となっている。
この段階的な構造の背後には、差別化発展と地域間連携の必然的な結果がある。長江デルタ地域には全体の3分の1以上を占める10の1兆元都市が集まっている。上海を筆頭に、蘇州、杭州、南京などの都市が産業の相互補完や機能の連携を図る都市群構造を形成している。粤港澳大湾区は深圳や広州などを中核とし、イノベーション資源と製造業の優位性を基盤に、世界で重要な先端製造・科学技術イノベーションセンターとなっている。京津冀地域は北京を技術の発信地とし、天津や石家荘などの都市が産業移転を受け入れ、「研究開発–実用化–製造」という完全なチェーンを構築している。
このような「中核都市によるけん引+都市群による連携」というモデルは、単一都市への過度な依存を避けると同時に、地域発展の総合力を生み出し、中国経済の安定成長に確かな基盤を提供している。
成武県は、1兆元クラブのメンバーである済南、青島、南京などの都市に近接している。これらの都市の発展は、成武県が順調に貧困から脱却するだけでなく、近年急速な発展を遂げることを可能にした。
AIがけん引する西部開発
今年、中国経済は質の高い発展の新たな段階に入り、沿海地域は新産業を核心的な駆動力とし、AIが産業のグレードアップにおける中核的な要素となっている。
北京はトップクラスの大学リソース、科学研究機関、主力企業を生かしてAIの基礎研究と産業エコシステムの「発信地」となった。昨年の北京のAIコア産業規模は全国の約半数を占める4500億元に達した。百度や智譜AIなどのリーディング企業を育成し、エンボディドAIや大規模言語モデル応用などの先端分野に重点的に取り組んでいる。
上海は「チップ+コンピューティングパワー」のダブルエンジンを核心とし、AIや集積回路、バイオ医薬などの先導産業の融合発展に焦点を当てている。昨年、この三大先導産業の総生産額が前年同期比9・6%増え、規模が初めて2兆元を突破し、経済成長の新たな柱となった。
粤港澳大湾区は深圳を筆頭に「産業の実装+シーン革新」という発展の道筋を切り開いている。杭州はインターネットの優位性を生かして「EコマースAI+スマートガバナンス」という独自のエコシステムをつくり出し、AIコア企業約700社が集結し、AI企業の利益総額は省全体の7割以上を占め、中国デジタル経済とAI産業の融合発展の模範となっている。
差別化された分業モデルは同質化した競争を避けるとともに、AI産業全体の優位性を形成し、中国経済のモデルチェンジとグレードアップに核心的な道筋を提供している。
沿海地域のイノベーション駆動とは異なり、新疆ウイグル自治区や西蔵(チベット)自治区などの西部地域は国家重要プロジェクトを基盤に経済の飛躍的成長を実現し、中国経済の安定成長における「新たな成長極」となった。
インフラ分野では、昨年着工したヤルンツァンポ川下流の水力発電プロジェクトは、中国では近年最大の投資額で、総額約1兆2000億元だ。完成すれば中国のエネルギー構造の最適化に効果的に寄与し、西蔵のクリーンエネルギー産業をけん引する。新疆の和田と西蔵のラサを結ぶ新蔵鉄道は総投資額が4000億元と見込まれ、完成すれば世界最高地点を走る鉄道となり、鉄鋼、セメント、建設機械などの産業チェーンの需要を喚起し、西部地域の投資成長をけん引する中核的なエンジンとなる。
日系企業の投資の変化
中国で1兆元クラブの都市が増え続け、経済発展の在り方が徐々に変化する中、日系企業は中国での経営戦略を再調整する必要に迫られている。
現在、中国の29の「GRP1兆元都市」は、日本企業と高度に結び付き、発展を支え合う安定した関係を築いている。日系企業は1兆元都市に高度に集中しており、1兆元クラブの形成における重要な外資の力となっている。日系企業がもたらす投資、技術、産業チェーンの関連産業と輸出のけん引は、これらの都市が1兆元を突破することを直接支え、製造業と対外貿易の基盤を継続的に強化している。
中国の経済環境の変化により、中国に進出している日系企業は新たな対応をしなければならなくなった。昨年第3四半期までの対中投資は前年同期比で55%以上増加し、新規投資の多くは上海、蘇州、広州、深圳などの1兆元都市における新エネルギー、AI関連産業、新素材プロジェクトに向けられた。日系企業は「加工・製造」から「研究開発+製造+サプライチェーンの中枢」へとシフトし、1兆元都市が「投資誘致」から「知識・技術の誘致」へと進むことを後押しし、世界の産業分業におけるこれらの都市の地位をさらに強固なものにしている。
中国が西部大開発戦略を引き続き推進する中、西部市場に新たな需要が生まれており、これが日系企業の中国事業に新たな発展の機会をもたらしている。ただし、この機会をつかむためには安定した中日関係が支えとなる必要があり、両国の企業界もそのために積極的に努力することが求められる。
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