五輪延期で芽を出す若手 国内から女子卓球の戦い
2020-10-10 11:04:56
7月中旬に東京オリンピックの新たな競技日程が発表されると、中国でもこのスポーツの祭典への期待が再び高まった。人々は注目競技の中国代表選抜を予想し始め、インターネットで新たな話題になった。
今年のITTFワールドツアー・カタールオープン女子シングルスの決勝で陳夢は伊藤美誠を4対1で破り、優勝した
中国卓球代表チームにとって、出場選手の確定はずっと幸せな悩みだったが、オリンピックの延期によってさらに多くの不確定要素がもたらされた。ベテラン選手が今の状態を保てるのか、若手選手が技術面と心理面でさらなる向上を見せられるのかなどの課題にチームのコーチたちは直面している。男子チームは実力の差が明らかであるため、何事もなければ馬龍、許昕、樊振東がオリンピック代表となるだろう。しかし女子チームは情勢がやや複雑で、コーチたちによる代表リストの発表が遅れており、8月に行われるオリンピック模擬大会が最終選考を決定付けると見られている。
伊藤美誠が試金石?
4月に発表された国際卓球連盟(ITTF)世界ランキングの女子シングルスでは、トップ10のうち中国選手が6席を占めている。しかし中国チームにとって、世界ランキングと三大競技大会(オリンピック、ワールドカップ、世界卓球選手権大会)の成績以上に重要なのがライバルとの戦績だ。女子卓球チームにとってここ2年間の最強のライバルとは、日本の伊藤美誠(19)に他ならない。
伊藤は成長が速い卓球選手で、現在世界ランキング第2位だ。彼女の「3球目攻撃」の技術は特に優れていて、スピードがある。近年の国際大会では丁寧、劉詩雯、朱雨玲ら中国の一流選手も打ち破っていて、新世代選手の孫穎莎(19)や王曼昱(21)とも互角だ。今年のITTFワールドツアー・カタールオープンでも伊藤は、三大競技大会を制覇している丁寧に4対0で完勝し、そのうちの1ゲームを11対0で奪い、中国の卓球ファンに「オオカミが来た」と騒がれた。
長年卓球競技の取材を続けている中国中央テレビの李武軍記者は、「伊藤美誠は物差しです。中国女子チームのメンバーで、伊藤を打ち破った選手が東京オリンピックに出場できるでしょう。伊藤を破ることができなかった選手は、コーチから評価点を大幅に下げられるはずです。なぜなら伊藤はここ2年間、猛烈な勢いで成長しているからです」と話す。
試合後、ITTFワールドツアー3連覇を喜ぶ陳夢
世界目指す俳優の「いとこ」
以上の観点から見ると、現在、女子卓球チームでオリンピックシングルスの出場権を得る可能性が最も高いのは陳夢(26)だ。山東省出身の陳は、いつもにこやかで笑うと目が三日月形になる。試合でうまくいかなかった時には落ち込んで口を利かないことがあるものの、普段はとても明るく朗らかで、特に子どもからの人気が高い。当初は俳優の黄暁明のいとことして認識されていた彼女は、いつか世界チャンピオンになって黄暁明を「陳夢のいとこ」と呼ばせたいと思っていたという。
陳は天才型の選手ではない。先輩の張怡寧や李暁霞に比べ、「はって歩いているような成長速度だ」と言われたほどだ。卓球中国代表チームの劉国梁コーチは彼女を、「とても努力家で几帳面」と評価する。一方で強みもあり、彼女のコーチは「向こう見ずな強さがある」と言い、負けを恐れず負けず嫌いの性格も持つ。これらの評価のように、彼女の卓球スタイルは安定していて堅実で、力に満ちている。
パワータイプの陳夢とスピードタイプの伊藤の試合はとてもスリリングなものになるだろう。今までの対戦成績では、陳は伊藤に対し絶対的な優勢を誇る。3月のカタールオープンで彼女は伊藤に再び勝利し、対戦記録を4連勝とした。これにより彼女は、オリンピック選考期間中に伊藤が勝ったことのない唯一の中国選手となった。陳は伊藤について、「彼女はとても優秀で、中国選手に何度負けても恐れず、ずっと全力で私たちと戦う準備をしています。彼女が私たちに与えた衝撃はとても大きく、それは卓球の発展にもつながり、私たちをより強くしてくれます」と語る。
陳は昨年6月から世界女子シングルス第1位にランキングしている。それに続くのが伊藤であり、人々は彼女たちが東京で対決することを期待している。陳にとってもオリンピックという舞台で自分の実力を証明することはとても大切だ。なぜなら現在の中国女子卓球チームの主力選手の中で、陳夢だけがシングルスで世界チャンピオンとアジアチャンピオンを取っていないからだ。昨年の世界卓球選手権中国予選で、「東京に行きます!」と勇ましく発言したのもこれが理由だろう。
卓球は中国で人気が高く、どこで試合が行われようともたくさんのファンが応援に駆け付ける。写真は世界卓球選手権大会で応援する丁寧のファン
延期がもたらす若手へのチャンス
中国では卓球界で圧倒的地位に立つ女性選手のことを「大魔王」と呼ぶ。最も有名なのは張怡寧で、その他にも鄧亜萍、王楠らがいる。これに対し、実力ある若手選手は「小魔王」と呼ばれ、孫穎莎と王曼昱は中国女子卓球界が希望を寄せる「小魔王」だ。
この2人は伊藤と年齢が近く、実力も拮抗しているといえるが、国際大会の成績は伊藤よりはるかに優秀だ。伊藤は世界チャンピオンにもアジアチャンピオンにもなったことはないが、孫と王はワールドカップの団体優勝を経験していて、昨年4月に行われた世界卓球選手権大会の女子ダブルスで優勝している。
もしオリンピックが延期されていなければ、選手層の厚い中国女子卓球チームで孫と王が東京行きの切符を手に入れられるチャンスはほとんどなかった。しかしベテラン選手と若手選手の入れ替わりが進んでいる現在、若手選手が過去1年間の成績次第でコーチの信頼を得られる可能性は高い。
中国女子チームの李隼メインコーチは、今後の集中訓練ではベテランも若手も新たに格付けされるだろうと語る。「チーム内の競争が新たに始まり、とても残酷な結果になるでしょう。プレッシャーの高い環境の中で最高の状態を保てる選手だけが東京に行けるのです」(高原=文 新華社=写真)
人民中国インターネット版 2020年9月17日
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