冬季五輪選手の養成学校 生徒の夢に一丸で応える

2021-12-29 16:11:04

崇礼区のスキー場でコーチの指導を受け、練習前のウオーミングアップをする 宣化二中の生徒たち

 

冬の河北省張家口市の崇礼区は、周囲の山々が雪化粧され、いくつもの真っ白なゲレンデが山あいを彩り、太陽の光に照らされてひときわ輝く。来年2月、北京冬季オリンピックパラリンピックのスノーボード、フリースタイルスキー、クロスカントリースキー、スキージャンプなどの競技がここで行われる。そして現在、張家口市宣化区にある宣化第二中学校(日本の中高一貫校に相当。以下、宣化二中)の冬季トレーニングチームに所属する生徒たちが、このスキー場で雪上競技の練習をしていた。午前9時、装備一式をそろえた生徒たちが一人ずつスタート地点に来ては飛ぶように滑っていき、ターン、スピン、ジャンプをするたびに雪が舞い散った。

 

シミュレーターを使った技術トレーニング

 

地元生徒に身近な冬季五輪

孫永青さんが宣化二中の校長になったのは2014年初めだ。その翌年7月に北京と張家口が共同で2022年冬季オリンピックの開催地の招致に成功したことで、スポーツに特化している宣化二中にとってこれはまたとない成長のチャンスだと敏感に察知した。

ほどなくして、中国初のスポーツと教育が一体化した冬季オリンピッククラスが宣化二中に発足した。「スポーツと教育の一体化」とは、生徒たちが中等教育を受けるとともに、本格的なウインタースポーツのトレーニングを受けられるというものだ。生徒は卒業後、各体育大学への推薦入試や受験ができ、優秀な生徒は河北省チームに所属するプロのウインタースポーツ選手になれる。

宣化二中は第1期冬季オリンピッククラスの生徒を15年に全国的に募集し、50人の生徒を選出した。わずか1年余りのトレーニング期間で、生徒たちは全国青少年アルペンスキー招待試合のスキー競技で河北省初の金メダルを獲得し、全国アルペンスキー青少年選手権で金メダル1枚、銀メダル6枚、銅メダル4枚という成績を収めた。現在まで、同校から国家スキー集中訓練チームに入った生徒は32人おり、昨年から今年にかけてのシーズンで7人が国家集中訓練チームでトレーニングした。同校の生徒田雅暁さん(19)は国家チームに所属し、来年の北京冬季オリンピックに備えて訓練している。

田さんは16年に冬季オリンピッククラスに入った生徒で、来年卒業する。彼女は張家口市赤城県出身で、両親は赤城や北京などで働いている。もともと15年に第1期冬季オリンピッククラスに合格していたが、始業式前に行われた20日間の集中トレーニングでついていけないと感じ、十数人の生徒と一緒に入学を辞退した。だが教師たちにとって思い掛けないことに、彼女はその翌年再びやって来た。その年、彼女は申し込んだ十数人の女子生徒のうち、運動能力テストで1位の成績で合格した。田さんは、赤城に戻ってからもスキーが好きだという思いは変わっておらず、入学を辞退したことを悔やんでいたのでまた冬季オリンピッククラスに申し込んだ、と語った。

冬季オリンピッククラスには田さんのように「家を出て直接オリンピックに出場し、表彰台に登る」という夢を持ってやって来た生徒がたくさんいて、全員ウインタースポーツを愛してやまない。

張家口出身の生徒曹旭麗さんはこう話す。「この学校に来るまでスキーはテレビで見ただけでしたが、とても興味があって、好きになって、憧れました」。趙書陽さんはこう話す。「自分がこんなにスキーに熱中するとは思いませんでした。毎日の練習は疲れますが、コースにいる時は一分たりとも無駄にしたくありません。ずっと練習し、滑っていたいです。転べば痛いですが、やめたいと思ったことはありません」

 

スノーボードの練習風景

 

崇礼区のスキー場を滑る生徒

 

一流のコーチ陣をそろえる

昨年冬、宣化二中の冬季オリンピックトレーニングチーム72人は崇礼区の富龍、万龍、長城嶺などのスキー場で合宿し、実地訓練を行った。トレーニング期間中、生徒たちは1日1時間半の昼食と休憩以外、日中はほとんどコースで練習した。

コースのそばで、コーチの張馨月さんが声を張り上げて生徒を指導している。「さっきの空中回転をもう1回。スピードをちょっと落として、体全体を回転させて!」

 張さんは14歳からスノーボードを始め、中国で第1期のスノーボード国家集中訓練メンバーとなり、全国スノーボードハーフパイプ女子団体選で優勝、アジア冬季競技大会個人の部で第5位の好成績を残している。交通事故による引退後、2016年に彼女は宣化二中にコーチとして招かれた。「世界1位にはなれませんでしたが、世界1位のコーチになるのも悪くありません。コーチという職業を選んだことは、責任を負うことを選んだという意味です。毎日、子どもたちが少しずつ上達していく様子を見るのが、一番楽しいです」

宣化二中のコーチ陣は張馨月さんの他、中国アルペンスキー優勝者でソチ冬季オリンピックに出場した張宇欣さん、ユニバーシアード冬季競技大会スノーボードハーフパイプ準優勝者の潘蕾さんらがいる。

目指すは人生の金メダル

もちろん、世界チャンピオンを育成することだけが宣化二中冬季オリンピッククラスの目標ではない。孫校長はメディアに出演した際、生徒たちは今後どのように成長してもウインタースポーツの「種」だと繰り返し語ってきた。冬季オリンピッククラスの卒業生の中には、プロ選手になった生徒もいれば、ウインタースポーツ競技の審判やクラブのコーチになった生徒、一般的な生徒同様大学に受験して新たな人生を歩んだ生徒もいる。しかし宣化二中でのスポーツ経験は、生徒たちに特別な青春の思い出を残した。

孫校長は次のような話をした。かつて草原地域から双子の姉妹が宣化二中に入学した。2人はみるみる上達したが、その年の春節(旧正月)を前にして、もうトレーニングしたくないと言った。2人の学費は学校に免除されており、良い成績を出せなければ学校に顔向けできないと思っていたからだ。この時、孫校長は、余計なことを考えず勇気を出して夢を追い掛けるよう2人を励ました。2人はようやく懸念を払拭し、クラスに残ることを決めた。今年の夏、姉妹のうち1人は河北省ウインタースポーツチームに選ばれ、冬季オリンピック出場の夢に近付いた。もう一人は医大に合格し、スキー競技の負傷者を治療する医者になることを目指している。

大会で金メダルを獲ることが子どもたちがウインタースポーツをする唯一の目標ではない。これは孫校長の変わらない考えだ。冬季トレーニング開始前、孫校長はグラウンドで生徒たちをこう奮起させた。「金メダルを獲れなくても、一人一人懸命に努力して、人生の金メダルを勝ち取るという夢を持ってほしい」 (高原=文   新華社=写真)

 

真夏はタイヤのついたスキー板で校内を滑る

 

学校のトレーニング館ではクロスカントリースキーシミュレーターでのトレーニングが可能

 

人民中国インターネット版 202112

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