生まれて来る子供へ〜新たな日中関係を目指して〜

2018-09-17 17:03:54

山本佳代

 お腹の中に宿った新しい命。主人と結婚して2年目で授かった子であり、生命の神秘を感じる毎日だ。『生まれて来る子の名前は何にしようか?』__主人に尋ねると決まって帰って来る答えがある。『男だったら、「孔明」か「孟徳」がいい』諸葛亮孔明、曹操孟徳。三国志の英雄から名前をつけたいという。

 理由を尋ねると日本と中国の民間交流はますます活発になって行くし、中国語はますます重要で、中国語スピーチコンテストで日本チャンピオンを獲得させたという。その上で両国にとって親しみを持ってもらいたい。名前負けする事ない、強い子に育って欲しいとの願いがあるようだ。

 お互い中国語を学んでおり、日中のバイリンガルを育てる教育方針には完全に賛成だ。しかし、名前については些か慎重にならざるを得ないと思っている。訪日観光客増加に伴う、日中の交流は増えたにも関わらず、日本人の対中国感情は悪化しているからだ。中国にゆかりのある名前が理由でイジメを受けるのではないか。この不安を拭いさる事ができないでいる。

 こう思う背景には私の過去が関係している。学生時代バイト先で「中国語を学んでいます」と自己紹介をすると、多くの人々に「何で中国語」と言われたからだ。英語と答えた友人は手放しで賞賛され、何故といった思い出があるからだ。言語=国家であり、その国のイメージフィルターと連動して見られたからだ。

 今でこそ中国語人材は重宝されているが、昔は現在ほど重要視されていなかった。むしろ一昔前は中国に工場を持つ日本企業が現地で活動をする為の人材がほとんどで、製造業で職種は営業職しかなかった。今は日本に進出する中国企業や日本に来た中国人観光客を対応するサービス業と裾野が広がっている。中国の経済発展は新しいチャンスを与えてくれている。

 今は日本語教師として仕事をしており、中国人留学生に接する機会がある。ここ数年で彼等のイメージはかなり変わった。それまでは都市部の学生が多かったが、所得水準の中間層が増えた影響か内陸部の学生達が増えた。また、昔は良くも悪くも日本に来て、成功したいといった野心的な学生が多かったが、今は日本文化(主にアニメ)に惹かれて来たという学生がほとんどで、学習目的や意識に大きな変化がみられる。

 彼等の多くは日本文化に理解を示しており、大きな文化摩擦は現場で起きていない。一方で日本人の意識はどうであろうか。未だに少し古い中国人像がまかり通ってないだろうか。ニーハオトイレや自転車で大爆走といった、昔の中国のイメージから脱却できず、スマホ決済する中国人は全体の一部分といった印象を持っているように思う。

多くの人が『中国』と聞くと思考停止のスイッチが入るのか、理由はわからない。ただ難しい事を考える必要も、身構える必要もないと思う。機微に触れ、相手を読み取る日本文化が隣人の表情を読み間違えてはいけない。私達は離れる事のできない永遠の隣人なのだから。

 変に日本とか中国を意識しない方が寧ろいいのかもしれない。主人はいつも中国人の友人達と楽しそうに食事をしており、白酒を飲んでベロベロになって帰って来る。毎回勘弁してほしいが、心の底から楽しんでいるのだろう。「自分の友達に悪い人はひとりもいない」が口癖で、何も考えていないようで、行動して身を持って体験してきた言葉だけに否定もできないでいる。

 結論を言うと、生まれてくる子の名前はまだ決まっていない。日中関係に引けを取らない重要な夫婦関係の課題であり、ここで揉めたらその先の日中友好は程遠いと思う。ただ、

  中国が大好きな私達にとって、生まれて来る子には輝かしい日本と中国の未来を見せてあげたい。そう願うばかりだ。

人民中国インターネット版

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