生け花で咲く大輪の友情――国際女性デーに中日友好迎春花会

2019-05-08 19:30:44

袁舒=文・写真

 

二十四節気の一つ啓蟄――冬に眠っていた草花が目を覚まし、一足先に咲き始めた梅の香りがほのかに漂い始めるその日、北京市の中国人民対外友好協会和平宮には、花のかぐわしい香りと女性たちの笑い声があふれていた。

 中国人民対外友好協会と中日友好協会の共催による「国際女性デー記念・中日友好迎春花会」が36日、開催された。中日両国のさまざまな分野の女性約80人が集まり、国際女性デーを祝った。会場の各テーブルには吸水スポンジや剪定ばさみ、色とりどりの色紙、そして摘んだばかりの花々が置かれ華やかさをいっそう引き立てていた。

 

詩歌の花に垣間見る文化の融合

 人民中国雑誌社の王衆一総編集長は会場で、「節気における俳句と漢俳(中国式俳句)」をテーマに講演を行い、イベントに花を添えた。王総編集長は、二十四節気は東アジア漢字文化圏の国々の共有の文化遺産であり、中日両国は四季がはっきりし、開花時期にも規則性があるため、四季の変化と花に思いを託した、さまざまな詩文が詠まれてきたと紹介した。また、日本の和歌と中国の漢詩では、人と花の関係を詠む際、重きを置く点が異なるにもかかわらず、雰囲気は非常に似通っており、日本の俳句と中国の漢詩の美的感覚が一致していることは特に明らかであると話す。日本の俳句を読むと、句の中に風物や草花への称賛が込められているのが感じられる。その一方、中国の漢俳を読むと、漢詩目線での美的感覚から句の中に込めた思いを知ることができる。俳句と漢俳はまるで寄り添い合う花のように、中日の文化交流を実現している。

 参加者の一人で、夫が北京の日本大使館に勤めるという藤岡由布子さんは、王総編集長の話に大きくうなずいた。藤岡さんは学生時代、中国古代の思想史を学び、中国の漢詩についても造詣が深い。藤岡さんは「私は今まで、日本の俳句と中国の詩歌は全く別物だと思っていました。しかし今日の講演を聞いて、形は違うものの、その中にある考え方は非常に似ており、この二つがゆっくりと互いに近寄り、融合しているのだなと思いました」と話した。また、中国に来てまだ1年ばかりの藤岡さんは、自身と中国人女性たちとの交流について、「私は中国の女性たちをとても尊敬しています。中国の女性たちは自分の意見をはっきり述べることができ、私も見習わなければなりません」と述べた。

 中日両国の女性たちは漢俳と俳句のように、性格や特徴は異なるが、どちらも柔をもって剛を制す美しさを兼ね備えている。民間交流による相互理解と相互学習は両国民の心を近付けるきっかけとなり、両国の文化交流の重要な一部となっている。

 

シンプルな花に秘められた共通の趣

 俳句の趣を味わった後は、目で花の美しさを楽しんだ。日本の華道家元池坊副総華督の堀江森花先生は和服を着て、参加者たちに生け花の起源や成り立ちについて紹介した後、実演を行った。華道が日本で確立したのは室町時代(1336~1573年)。その後、住居の環境や建築様式の変化によりだんだんと形を変えていき、中国からの絵画や陶磁器の影響も受け、次第に発展していった。日本の華道の面白さは、シンプルな中に時空の立体感を表現しているところだ。見た目は簡素でも、一枚の枯れ葉、一輪の生花、開花を待つ一つのつぼみが過去・現在・未来の三軸を表現する。これは中国画の「留白(あえて余白を残す技法)」の考え方に似ている。また、堀江先生は池坊のスタイルの一つ、「自由花」についても紹介した。「自由花」とは、定まった型や草木は無く、無限に広がる可能性の中で自身の創造力を発揮させ、自由に生ける様式のことだ。

 

生け方を教える池坊の先生(左)。草花の組み合わせに隠された意味に、参加者たちは聞き入っていた

 

先生が実演した後、女性たちは思い思いに「自由花」に挑戦した。女性たちは草花を吟味して選び、見比べ、自分のイメージを手の中の美しい花に託して表現していた。

 

女性たちは真剣に草花を選び、見比べ、自分の中にある思いとイメージを花に託していた

中国国際友好都市連合会の羅慧娟さんは初めて日本の生け花を体験した。彼女にとって一番印象的だったのは、日本の生け花が「花の多さではなく、情緒を重んじている」ことだ。これは彼女の美に対する意識をより深めた。羅さんは「花を生けたり、花を鑑賞したりすることは女性にとって、心を落ち着け、仕事のストレスを和らげるのに役立つ方法の一つです。私も家に花を飾っていますが、私たちが日常生活で触れるのは、西洋的な美しさの色鮮やかなフラワーアレンジメントです。今日は日本の生け花のシンプルな美しさが胸に響きました。これこそ、日本の生け花が中国人が追求する情緒に近いということであり、私たちが共通の美的感覚を持っている証しではないでしょうか」と話した。

 北京語言大学留学生の田原瑞恵さんは、中国に来てまだ2週間ばかりだ。今回このイベントがあることを知り、喜んで申し込んだ。田原さんは「私は日本人ですが、日本文化について知らないことがたくさんあります。このような機会に日本人の先生の話を聞いて、日本人の昔からの考え方などを知ることができてよかったです。今日はたくさんの収穫がありました」と話した。彼女は若く、まだまだ中国について知らないことも多い。しかし中国に来て一番最初に感じたのは、親近感だったという。「中国文化に身をもって触れて気付いたのは、私たちの文化には似ている部分がたくさんあるということです。日本の生活にはたくさんの中国的要素が溶け込んでいます」と話した。

 花は人々の目を楽しませ、俳句は心を落ち着かせる。参加した女性たちはこのイベントで充実した午後のひとときを楽しんだ。彼女たちの手には花が握られ、一人一人が花が咲いたような笑顔を浮かべていた。民間交流が中日関係の花壇ならば、女性たちは花壇に水を与える泉だ。その花壇のつぼみが、友情の大輪を咲かせることを願ってやまない。

 

参加者たちが丹精込めて生けた作品

 

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